語学留学するならアイルランドと決めていた

ぼくがアイルランドに行こうと思ったのは、アイリッシュ・ミュージックの影響だった。世界の音楽界に一大アイルランドブームを巻き起こしたエンヤ。それからロックの大御所U2。いずれも大好きなアーティストたちで、彼等の音楽が、ぼくをアイルランドに引き付けた。 それから「ヨーロッパの人々は、英語を勉強するのに、イギリスではなくアイルランドに行く」と聞いたから。教育熱心な国民性であることと、教育にかかる費用がイギリスよりも安い。語学留学するなら、アイルランドにしようとぼくは思った。

1999年の秋。ぼくは会社を退職し、念願のアイルランドに3週間語学留学することになった。アイルランドへの直行便はない。ぼくの場合は、イギリスのリバプ−ルからアイルランドの首都ダブリンに飛んだ。イギリスとアイルランド間の飛行機は一日数十本あり、飛行時間は約1時間。値段はロンドン、ダブリン間片道4000円ぐらいだ。

(写真下)U2のビデオクリップでも使われていたダブリンの街。左側に入ったすぐの道は、夜になるとストリートミュージシャンであふれかえる。

 

アイルランドミニ知識/音楽なしには暮らせない国
アイルランドのパブには必ずといっていいほどアイルランド伝統音楽の演奏があり、繁華街に行くとあふれんばかりのストリート・ミュージシャン(バスカー)がいる。音楽と接することに生きがいと誇りを感じている彼等は、音楽をビジネスとはとらえず、呼吸するのと同じように生活の中に取り入れている。売れっ子ミュージッシャンでも、OLとの兼業、学校教師との兼業など二足わらじの人も多く、そんな生活に根ざした活動は、パワフルなアイリッシュ・ミュージックを、底辺から支えている。

 

アイルランド文化は「パブ」にあり

ぼくがアイルランドに到着して、最初に出かけたのは、アイルランド名物のパブだった。アイルランドについて語るとき、パブの話題は欠かせない。アイルランド人にとってのパブは、ご近所との交流を深める社交場で、女性ひとりでも気軽に入ることができる。酒場というより、感覚的にはコーヒーショップに近いだろうか。アイルランドには、実にこのパブが多い。1ブロックに1軒は必ずあり、昼間から営業し、老人や子ども連れの主婦の情報交換の場所になっている所もある。そして夜ともなれば、どこのパブも夕食を終えた人々で、たいへんな賑わいを見せる。多くのパブではアイリッシュ・ミュージックの生演奏が聞ける。近所の人々が楽器を持ち寄って演奏するケースも多いのだが、素人とは思えないほど、みなレベルが高い。

アイルランドを語る場合、もうひとつ忘れてならないのが、ギネスビールの存在である。実はぼくは大のビール好きで、留学先にアイルランドを選んだのも、ギネス発祥の地に行ってみたい、というのがあった。ギネスは炭酸が少なめの黒ビールで、アイルランドでは健康にいいとされ、パブではみなガンガンこれを飲む。そして見知らぬ者同士でもすぐに打ち解け、話がはずみ、ジョークがぽんぽん飛び交うのがアイルランドのパブ風景だ。

 

(写真下)留学仲間との集り。ぼく、ノブックは左から4人め。学校にはラテン系の人たちが多く、日本人はぼくを含めて2人だけだった。

アイルランドミニ知識/ギネス抜きには語れない国
黒ビール・ギネスは、1759年、34歳のアーサー・ギネスが造り出した世界的に有名なビール。アイルランドでは、「健康のために一日1パイントのビールを飲もう」といわれており、まさしく「国民的飲料」といった存在。適度の渋みとコクがあり、クリーミィな泡が特徴。ギネスの醸造所は、ダブリンの西にあり、19世紀に造られた倉庫が、博物館として一般公開されている。入場料2ポンド。