ぼくがアイルランドに到着して、最初に出かけたのは、アイルランド名物のパブだった。アイルランドについて語るとき、パブの話題は欠かせない。アイルランド人にとってのパブは、ご近所との交流を深める社交場で、女性ひとりでも気軽に入ることができる。酒場というより、感覚的にはコーヒーショップに近いだろうか。アイルランドには、実にこのパブが多い。1ブロックに1軒は必ずあり、昼間から営業し、老人や子ども連れの主婦の情報交換の場所になっている所もある。そして夜ともなれば、どこのパブも夕食を終えた人々で、たいへんな賑わいを見せる。多くのパブではアイリッシュ・ミュージックの生演奏が聞ける。近所の人々が楽器を持ち寄って演奏するケースも多いのだが、素人とは思えないほど、みなレベルが高い。
アイルランドを語る場合、もうひとつ忘れてならないのが、ギネスビールの存在である。実はぼくは大のビール好きで、留学先にアイルランドを選んだのも、ギネス発祥の地に行ってみたい、というのがあった。ギネスは炭酸が少なめの黒ビールで、アイルランドでは健康にいいとされ、パブではみなガンガンこれを飲む。そして見知らぬ者同士でもすぐに打ち解け、話がはずみ、ジョークがぽんぽん飛び交うのがアイルランドのパブ風景だ。
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