2月11日のホーム(横浜国際)でのオーストラリア戦は、スコアレスのドローに終わりました。 ぶっちゃけ、悪い結果ではありません。 日本にとってもオーストラリアにとっても。 この2チームがグループ1位・2位でフィニッシュ(本大会出場権獲得)しそうな流れなのだから。 もちろん、なお一層よい結果だったのはオーストラリのほう。 日本としてはホームの試合だから勝ちたかったし、勝てばオーストラリアと入れ替わってグループ首位に立てるのだったから…それだけに残念ではありましたが、まぁ悪くない結果です。しかも重要な点は日本にとってはシーズンオフでの大一番だったことで、できるだけの準備をしてきたとしてもコンディションや試合勘が鈍っているところだから、そんな状況の中で選手たちはよくやったほうだと言ってよいでしょう。 しかし同時に、大きな問題点をあらためて感じさせられた一戦でもありましたね。 それは後で書くことにしましょう。 同日行われたウズベキスタンVSバーレーンは、ロスタイムにバーレーンのフリーキックが決まってバーレーンの1-0勝ち。試合は終始ウズベキスタンが支配し激しく攻め立てたんだけどゴールを割ることができず、ロスタイムでのバーレーンのフリーキックをウズベキスタンのゴールキーパーが目測を誤ってしまい(?)痛恨の敗戦。 11月にはバーレーンVSオーストラリアで、やはりロスタイムにオーストラリアのゴールキーパーのロングフィードをバーレーン選手がヘッドで後ろにすらしてしまい、それが格好のスル−パスになってしまって1-0でオーストラリア勝ちになってしまったが、それと同じような展開。 アウェイのチームは守備を厚くしゴール前を固めてくるので、日本に限らずゴールをこじ開けるのは本当にしんどい作業… それをあらためて思い知らされるし、こうも連続してロスタイムの魔物を見せつけられると、やはりワールドカップ予選の怖さを感じる。 とにかくこれでバーレーンは勝点4ポイントに、日本は勝点8ポイント。 3月28日には日本ホーム(埼玉スタジアム)で日本VSバーレーンが行われるけれども、これが重要になってきた。 またバーレーンかよ〜! …これに勝てば、残り3試合を全敗でもしない限り、本大会出場権獲得は決まりですね。しかし、ホームでは硬くなるのか、よいパフォーマンスが発揮できない日本にとって、この1年間で実に既に4度も対戦(前回大会のワールドカップ予選でも同組で2度対戦)のバーレーンは手の内を知られている相手でもあり、昨年の3月(ワールドカップ・3次予選)と今年1月(アジアカップ・最終予選)の2度も(!)アウェイで負けてしまっちゃっている(!)相手だし、監督が策士のマチャラだし嫌な感じもするが、普通にやれば問題ない相手なので、そろそろホームで快勝して欲しいものだ。 なにしろこのワールドカップ最終予選、ホーム2戦がいずれもドローなんだからな。それじゃあ一般的には盛り上がらないよ。 そうそう、ウズベキスタンVSバーレーンをTVで観ていたら、バーレーンはこれまでの3バックから4バックに変えていたね。 さて、オーストラリア戦から感じた点を書き進めてみよう。 まず、オーストラリアはこの試合にどうしても勝たなくてはならない試合ではなかったため、守備ブロックを非常にガッチリ固めてきたことだ。 現場で見ていて、オーストラリアが押し上げた場面でも、センターバックの2人の前に中盤の選手+両サイドバックの4人がきれいに横一線のラインを形成していて、二重のライン(守備ブロック)を常に堅持していたことが見て取れた。 また、セットプレー(フリーキック)の場面でも、最終ラインをペナルティエリア辺りまで押し上げ高く保ってゴール近くに入り込ませず(オフサイドになるから入り込めない)、しかも日本選手がすり抜けることに細心の注意を払っていたように思われた。 オーストラリアからすれば、確かにいくつも崩されかかったが、注文どおりのドローに持ち込んだのは間違いない。 田中達也のスピードと献身的な運動量は目を引いたが、 やはりシュートを打つことができなかったのは残念。 大柄なオーストラリアの選手たちの壁(間)をすり抜けての、あるいは、すり抜けない状況での、一瞬の隙とタイミングを突いてのシュートを期待していたのだが…国際的な選手ならば、前に壁が立ち塞がっていても、マークに囲まれていても、ちょっとしたタイミングや間の取り方で自分がシュートを打つスペースを作って、その最小限のスペースを見つけた瞬間にシュートを放つ…そんなスキルというか技量というか、これも場数と経験なのか、日本のフォワード選手には足らない部分だ。大久保にしても。 こういう部分は普段のJリーグの試合でも磨けるでしょ? やっていって欲しいものだ。 それから玉田だが、TVで観戦していた人たちによると、ボール回しや流動的な動きによく絡んでいたということで玉田の評価は悪くない様子。しかし私には全然物足りない。 昨年11月のアウェイのカタール戦で「自覚に目覚めたか!?」と絶賛したわけだけれども、この試合でもそうした自覚は感じられたが、シュートチャンスにピシッとフィニッシュできないのは失望。 序盤の田中達也のグラウンダーのクロスにもスライディングしないし(ボールには触っていたようだが)、その後もダイアゴナルに走り込んでくるのだけれど、そのダッシュが緩い。ボールに追いつかない、体を張らない、オーストラリア選手よりもスピードもアジリティもあるはずなのに…ま、2月4日のフィンランド戦を観ていてもコンディションが上がってきていない印象だったので、それから1週間経ってもまだイマイチだったようだ…もっとも、コンディションが上がっても貴公子の玉田のことだから同じようなものかもしれないけど…さらに極めつけは、長友のクロスに対して相手ディフェンダーと競り勝って相手の前に入ってジャンピングヘッドしたのに当てるのが精一杯、なんともショボイシュートしかできなかったシーン。 これはA代表のフォワードしては限界です。 あんな技術しかないなんて。たとえヘッドが不得意でも不得手でも、フル代表の選手のレベルじゃない。カタールやバーレーンには通用するだろうが本大会では到底通用しないので、もう早々に見切りをつけるべきだろう。 日本の攻撃だが、サイドから崩しにかかっていったのは常套手段ではあるが、たぶんTVで見ていた人たちには判で押したようにサイドにボールを展開するように感じられたのではないか。現場で見ていたらそこまでは感じないと思うのだが、それでも確かに、オーストラリアの最終ラインの裏を突いてみるとか、それに2列目が入れ替わって飛び出すとか(それは充分警戒されていたような気がするが)、シンプルなボールタッチとパス本数でシュートを打つシーンとか、もっとあったらよかっただろう。 サイドからの展開で私が問題を感じるのは、せっかくサイドで崩しても、ゴールライン近くまで侵入しても、 肝心のクロスの精度やアイディアやイメージ(中での味方選手の動きのイメージ)や、キックの種類の少なさだ。 サイドからのクロスが決定機になったのは、序盤に田中達也が抜け出して玉田が合わせた低いクロス、後半に左サイドバックの長友が送って玉田がヘッドで合わせ損ねたやつ、右サイドバックの内田が送って長谷部がボレーで叩いたやつ(大久保に当たってゴールキックに)の3つくらいしかないんじゃないか。これ以外に前半、中村俊輔のスルーパスに長谷部が走り込んで折り返したシーンも加えてもよいが(中で玉田が合わせられず?)まあそんなもんだろう。 これはあまりに少ない。 あれだけサイドから崩しているのに。 中村俊輔と遠藤の2枚のプレイメーカー(ゲームメイク)だが、この2人が試合をコントロールし、ボールを散らし配給し、チャンスメイクする形なのだが、中村俊輔がボールを持ってドリブリングすればオーストラリア選手が必ず2人は寄せてくるし、遠藤に対しても充分な警戒をしてきた。 それでも、この2人にはもう1段階高いプレーや決定的な仕事を期待したい。 もっと囮になるとかも含めて。そういう部分ではたいへん物足らない。この程度のプレイメーカーなら2人もいらない。1人でいい。その分、他の選手を使いたい。 他にも、最終ラインからのビルドアップの不足なども目に付いたが…。 2月11日はインターナショナルマッチデイだったので、世界各地でワールドカップ予選とともに多くのテストマッチが組まれた。スペインVSイングランドなんてカードも行われてTVで観させてもらったのだが、大柄なイングランドのディフェンス陣に対して、日本人とさして体格の違わないスペインがあの手この手でゴールマウスをこじ開けようとする攻撃は大いに参考になった。 日本代表の選手たちも、スペイン代表の選手たちと比べて大きな技術的な差はないと思うのだ。 確かにプレッシャーの中での技術のブレは相対的に劣るし、日本人選手の中でも差やムラがある。それが大きなクオリティの違いとなってくるのだろうが、それでもやろうとしていることは似ているし、日本チームのやろうとしていることは間違っていない。 だが、ショートパスを繋いでボールポゼッションしている間に、 スペイン代表は全員が、相手ディフェンス網の一瞬のスキなりギャップを感知して、そこをすかさず突いてくる判断というか戦術眼というか直感なり察知力、そしてそれに即応する技術を持っている。さらにその瞬間、味方同士がやろうとしている(やろうと閃いた)ことを共有するというか、イメージをシンクロできる能力を持っている。 日本チームはそこが劣っている。あるいは、選手間に差やムラがある。 ま、そういうところは選手個々人が高めていってもらうしかないところだろう。 スペイン代表を観ていて、長谷部(遠藤でもいいんだが)がマルコス・セナ(ビジャレアル)みたいなプレーをしてくれれば、さらにワンランク上のチームになるのだがな、と思ったりした。 それでもって田中達也はシャビ・エルナンデス(バルセロナ)か、というかダビド・ビジャ(バレンシア)のようなプレーをしてくれ。 長谷部は11日の水曜日にオーストラリア戦にフル出場して、ドイツにとって返して14日の土曜日にはブンデスリーガの試合にスタメン出場していたね。中盤の(セントラルミッドフィルダーではなく)右サイドで起用されていたみたいだが、チームに貢献していたと思うが、もっとゴールチャンスに絡む積極的なプレーが欲しいなぁ…いいプレーだっけど怖さがないというか。 ドリブリングやパスが頻繁にオーストラリア選手に引っ掛かっていたが、あれは日本選手には気の毒なところはある。 いつもはそういうサイズの選手やチームを相手にすることが少ないから。その辺はアジアの極東という位置にあることのハンディではあるよな。 さて、そんなわけで選手たちにはもっともっとレベルや意識を上げていってもらうとして、 私が今回の試合で一番強く感じたことは、監督を替えるべきということだ。 岡田監督では不充分ということ。 先に、日本代表チームのやり方は間違っていないと書きました。実際、選手たちも、評論家たちもライターたちも、この戦い方を続けること、この戦い方をさらに高めること、そう異口同音に語り、書いています。それはそのとおりです。それにさらに選手たちのスキルや技量や意識をもっともっと高めていってもらう…それは全く正しいことと思いますよ。 だけどね、それだけでは不充分。 それにプラス、代表監督の技量が加わらないと。 ナショナルチームの監督らしい技量、間口と奥行きです。今回の試合では、監督の「策の無さ」を痛切に感じましたね。選手起用やベンチ入りさせたリザーブの選手を見ても、今回かなり本気で勝ちにいったと思うんですよ。 それなのに、あの程度の策しかないの? という感じ。 結果ではなく内容がね。 岡田監督もよくやっていると思います。フランス大会のアジア最終予選途中に急遽就任して(1997年10月)初めて出場権を獲得し、本大会でも指揮をとりました…J2のコンサドーレ札幌でJ1昇格という現実的な戦いを経験し、J1残留も果たしました…横浜F・マリノスで2年連続リーグ優勝も成し遂げました。そうした経験を踏まえて到達した戦術・戦略が、今の日本代表チームの戦術でしょう。悪くないと思いますよ。 だけどね、そこからのさらなる積み上げの可能性を感じない。 今回の試合でも、日本チームは(何度も書くけどシーズンオフに)悪くない戦いぶりだけれども、それならそれで(それはそれで)さらなる戦略がない。アジア予選は勝ち抜くよ…しかし本大会では通用しないよね。 1勝できれば儲けもの、あるいは1勝できるかどうか、くらいの可能性しかない。 今回の試合のオーストラリアには、あれだけ守備ブロックを強固に構築していれば、仮にスペイン代表だってなかなかゴールを奪えないだろうし、2006年のワールドカップでも、優勝したイタリアだって終了間際のPKでしかゴールが奪えなかった。それくらい「手ごわい」とかいうよりも「ゴールを奪うのに苦労する」(それは守備が素晴らしいとかいうわけではない! ニュアンスわかると思うけど)相手であることは間違いない。 でもだからと言って、今回の試合内容だけで良しとはできない。 選手たちもレベルを上げ、それにさらに豊富な戦術を展開できる監督、選手たちのレベルアップの手助けができる監督、そういう監督が必要であるし、日本代表はそういう監督を起用しなくてはならない。 いま思っても、オシムは段階的にチームを構築・向上させていくメソッドを持っていた。それは見えていたし、行方が楽しみでもあった。 インターナショナルにプロフェッショナルな監督・コーチを起用して欲しいし、もう、日本のフットボールはそうでなくてはらない時期だ。そういうステージに進まなきゃ。 最後に、2月4日に日本代表のテストマッチの相手をしたフィンランド代表監督のバクスターが、某一般紙のインタビューで興味深いコメントをしているので抜粋して紹介しましょう。 「ドイツと比べるなら、日本とドイツの違いは技術でも戦術でもスピードでもない。日本はサッカーがうまい。しかしドイツは勝ち方がうまい。これはまったく別物」 「日本は相手にFKを与えすぎる。闘争意欲があり過ぎるのだろう」 「もう少し賢く、もう少し良い戦略を立てて守ったほうがいい。日本が優位でも、バーレーン戦のようにセットプレー1つで負けてしまうことがある」 (2009/2/15) |