LADYWEB読者のみなさんから、KOH先生のところに、さまざまな質問がよせられています。その中でも多いのが、サッカーをする子供をどうサポートすればよいのかという、お母さんからの質問。そこで、KOH先生に直接相談にのっていただくことにしました。
今回の相談者は、東京都の嘉島知代さん(38歳)です。

怪我と上手に付き合うことも、トレーニングのひとつ

嘉島 「今、中学1年生の息子がサッカー夢中なのですが、しょっちゅう怪我をしているんです。親としては心配で心配で。怪我が多いというのは、サッカーにはむいていないということでしょうか?」

KOH先生 「そういうことではないと思いますよ。サッカーは身体が接触する激しいプレーもありますから、グラウンドに倒れて、擦り傷や切り傷をつくることもあるでしょう。ですが選手は、そういったプレーに慣れることによって、だんだん倒されないことを学んでいくんです。怪我が多いというのは、サッカー技術を身につけていく、ひとつのプロセスという見方もできると思います。それからもうひとつ。生傷ができやすいのは、日本のサッカーグラウンドは、土でできているところが多いということも、無関係ではありません」

嘉島 「怪我にグラウンドが関係しているんですか?」

KOH先生 「そうです。本来サッカーは、芝生の上で行なうスポーツです。芝生のグラウンドですと、転んでも擦り傷ができにくく、またサッカーボールを上手に扱えるようになるには、やはり芝生のほうがいいんです。スポーツのルール、技術のあり方は、どんな場所で行なわれるか、ということはたいへん大きな要素です。その前提が違ってしまうと、技術そのものも上達しません。怪我を少なくするということだけでなく、サッカー本来の技術を習得するためにも、芝生の上で練習するということは、大切なことなんですが。残念ながら、日本のスポーツ環境は、まだそこまで整っていなくて……」

嘉島 「そうなんですか。ただ、それを差し引いて考えても、うちの息子は怪我が多いように思えるんです。同い年の他のお子さんと比べると、なんですが」

KOH先生 「それはあまり心配しないでよいと思います。小学校高学年から中学校という時期は、身体の成長が著しいんですが、その度合いは人によって異なるんですね。ですから、同じトレーニングをしても、疲れ方、つまり筋肉の疲労度や骨への負担なども、人それぞれ違うんです。また、身体全体を見ても、各部ともバランスよく成長するわけではないんです。成長の早い部分もあれば、遅い部分もあります。そのバランスが悪いために怪我をすることもあると思います。ですが、それもいずれ身体ができあがってくれば、問題ありません」

嘉島 「つまり、あまりあせらないで、見守ったほうがいい……と」

KOH先生 「私の友人の息子さんは、小学5年生なのですが、背が高くて、中学生ぐらいの身長があるんです。その子はサッカーをしていまして、身体が大きいのでキック力はあるんですが、それがかえって足の甲を傷める原因になってしまいました。これも身体の部位によって、成長の差があるためなんです。キック力があるがために、逆にまだできあがっていない足の甲に、負担がかかってしまったんですね」

嘉島 「うちの息子には、まだ捻挫の後遺症があるようなのですが、それは大丈夫なのでしょうか?」

KOH先生 「一般的に捻挫と呼んでいるのは、スポーツ選手によくある靱帯損傷のことなのです。靱帯損傷とは、靱帯が伸びてしまったり、何本か切れたりしてしまうことですので、あまり甘く考えてはいけません。もちろん正しく治療すれば回復できるのですが、素人療法は悪化させてしまうこともあります。まず専門家にきちんと診断をしてもらうこと。それから、ある程度回復するまでは、コーチと相談して、怪我の具合に合わせたトレーニングをさせてもらうことが大事です。決して無理をしないことです。特に治りかけの時期、自覚症状がないので、今までできなかった分を取り戻そうとして、無理をしてしまいがちです。治りかけの状態で、サポーターやテーピングをきつくして練習を再開したため、悪化してしまうケースもありますので、気をつけたほうがいいと思います」

嘉島 「わかりました。うちの息子にも無理をしないように言っておきます」

KOH先生 「また、捻挫した足でサッカーを続けているとよくないことのひとつに、プレーに変な癖をつけてしまう、ということがあります。これは、無意識のうちに捻挫した足をかばってしまうためなのです。私も中学3年生の時にひどい捻挫をしたのですが、試合が近かったので、治りきっていないのにサポーターをきつくして練習に臨んでしまったんです。その結果、足をかばって蹴り方が偏ってしまい、本来のプレーができなくなってしまいました。無理をしたために、靱帯損傷からも回復できず、その状態が長く続いたためにサッカー技術そのものが、低下してしまったんです。回復をあせる気持ちが、かえって回復を遅らせてしまったという、ひとつの例ですね。

注意しなければいけないのは、身体の関節部分の怪我というのは、完治することはないということです。表面的には、治ったように見えても決して以前と同じではない。自覚症状がなくなり、元通りに動かすことができても、靱帯には明らかに損傷が残るんですね。どんなスポーツでもそうですが、怪我や捻挫はつきものですから、それとうまく付き合っていけるようになることが大切だと思います。怪我をしてしまったときの適切な判断と、適切な処置、その後の適切な過ごし方がとても大切なんです。違和感や後遺症がある時は、医師やコーチと相談し、完治するまでハードな練習は避けることです。でも、ついやってしまうんですけどね。そこをぐっと耐えること、冷静な判断、自己管理も、サッカー選手には大切なトレーニングであることを知っておいてください」

嘉島 「ありがとうございました。さっそく専門医に診てもらって、あせらずじっくり治すように、息子に伝えようと思います」

(2001.12.25)