「カジノに行くときは、服装に気をつけないとね。中にはタキシードやカクテルドレスを来てくる人もいるし……」私と私の会社のスタッフ、私の友人の5人で初めてラスベガスのカジノに出掛けようというとき……最初に聞いた話がこれだった。「えッ、タキシード? ドレス!? どうしよう、そんなの持ってないッ」「借りてきたら? ねえねえ、ドレスじゃないけどスーツならいいよねッ」「許してもらおうよ、これで」
そんな調子で、ラスベガスに出掛ける前の私たちグループは、着ていく服の準備で大騒ぎだった。まるでディスコの服装チェックのように、高級レストランに入るときのように、ラフなかっこうのお客はカジノからつまみ出される……そんな風に思い込んでいたからだ。ところが……。

 

ラスベガスのカジノには、短パン&毛ずねのオジサンがいた
 

胸ドキドキで初めて足を踏み入れたラスベガスのカジノは……。イメージしていた世界とはまったく違っていた。
「ちょっと! チェックのシャツにGパンのお兄さんがいるわよどうなってるのッ!?」「Gパンなんて珍しくないわよッッ。右見ても左見てもGパンだらけじゃない。ひどいッ、あの人なんてスウェットの上下だッ」「見て見てッあのオジサン、短パンに毛ずね出してるぅッ」
三つ揃いのスーツでキメたスタッフの男の子、パーティにも出掛けられそうなドレスに身を包んだ私と友人たちは、聞いていた話とのあまりの落差に、ガックリ力が抜けてしまった。その後、グチること、グチること。
「誰よッ、カジノは正装じゃなきゃいけないって言った人。私たちの苦労はなんだったのよッ。飛行機で服がシワにならないように持ってくるの、大変だったんだからぁ!!」
もちろん、ラスベガスには高級イメージのカジノもあるし、ドレスアップしないと入れないようなVIPルームもある。だが、ラスベガスのカジノのほとんどは、一般の観光客が気楽にのぞけるような場所ばかりなのだ。ネクタイ着用、ジャケット着用などの特に服装に対する規制はなく、普段の恰好で充分に間に合うのだ。

 

ヨーロッパのカジノはゴージャスファッションが常識

その後、何度かラスベガスに出掛け、カジノはジーンズで……が私の定番になった頃、ヨーロッパのカジノに出掛けるチャンスが訪れた。ところが、ヨーロッパのカジノを巡ってみた結果、私のカジノファッション観は、またまた変わったのである。

フランスもモナコもイタリアもスペインも、ヨーロッパのカジノはどこも正装が基本だった。男性はジャケット着用が常識。ラフな恰好だと入口で入場を拒否される。女性の場合は、ジーンズなどのラフな素材でない限りは、パンツやスラックスでも許される。ただし、注意されないからといって、ヨーロッパのカジノの雰囲気の中に身を置いてみると、やはり、おざなりな恰好で出掛ける気にはなれないのだ。

それだけ他のお客はきちんとしているし、カジノにくる女性客ともなると、これ以上ない! というほど着飾っている人も多いからだ。

 

 

 
ヨーロッパのカジノは「社交の場」 

カジノに毎晩のように出掛けるマダムたちは、決まって値段の想像もつかないほど豪華なアクセサリーを、耳に首に両手に、山ほどぶら下げている。ダイヤやエメラルドがきらめく重そうな手を、カジノのテーブルに座ってこれみよがしに(単なる私のひがみ目かもしれない)ヒラヒラと動かす。そんな目がくらみそうな光景の中にあってラスベガス仕込みの(!?)ちゃちな服でカジノに出掛けるのには、やっぱり勇気がいるのである。

「そうか。一般に言われているカジノのゴージャスでリッチなイメージというのは、つまりヨーロッパのカジノのことだったんだ!」
と、納得した私だった。

私なりに各国のカジノのイメージをひと口で言うなら、マカオや韓国はいかにも博打場! というムード。アメリカのラスベガスやアトランチックシティは、大人の遊園地。そしてヨーロッパのカジノは、生活レベルや階級意識がファッションに顕れる社交場……と、いう感じだろうか。