「明日のメインレースは2−4で決まり! テッパンだよ。テッパン!」
ある日、近所のそば屋で遅い昼食をとっていたら、後ろのほうから、そんな声が聞こえてきた。

テッパン......漢字では鉄板と書き、ギャンブルにおいては九分九厘、間違いなく勝てる「固い勝負」のことをテッパンという。少し前までは固い勝負のことを「銀行レース」などといっていたが、バブル崩壊後は、銀行の信用がなくなってしまったのか、最近はあまり耳にしなくなった。

 

ギャンブルしない人もギャンブル用語は使う
 

私にいわせれば、テッパンだろうが銀行だろうが、ギャンブルの世界に絶対なんてあ>り得ない。固いはずのテッパンが、一瞬のうちにトーフになってしまうことなんて、それこそ掃いて捨てるほどあるのだから......。

それはさて置き、かつてはギャンブル用語だったものが、今は日常的に使われ、ごくありふれた言葉や言い回しになっている例がたくさんある。

たとえば「思うツボ」。任侠映画などで、よく「丁半コマ揃いました。入ります」などといって、昇り龍の刺青を入れたツボ振り人が、スッとサイコロをツボの中に入れるシーンがあるが、あのときに使うツボのことを、当時の賭場では「壷ザル」と呼んだそうだ。

映画などではよくわからないが、籐で編んだツボの底には綿がこんもりと入っていて、中に入ったサイコロが勢いよく転がるように細工が施してある。ツボ振りの名人ともなると、自分の思う出目を狙ったそうで、つまり自分の「思うツボ」というわけである。

 

 

「うんともすんとも......」の出典はギャンブル

またテレビやコンピュータが故障して、まったく音が出なくなったときに、「このテレビ、うんともすんともいわないわ!」などと表現したことはないだろうか。この「うん」も「すん」もやはりギャンブル用語だった。

今から400年以上も前の天正時代、南蛮人からもたらされ、あっという間に日本中に広まった『うんすんかるた』がその語源である。

『うんすんかるた』は、その後、花札として改良され、現在はすたれてしまったが、ポルトガル語で「1」を表す「うん」と、「最高」を表す「すん」だけは残っていて、今でも日常的に使っているというわけである。ただし、なぜ今のような意味になってしまったのかは不明だ。

 

 

ギャンブラーは、コピーをつくる名人!?

また『うんすんかるた』似たようなもので、室町時代に伝えられた『ポルトガルかるた』が語源になっている「ピンからキリまで」という言葉がある。「ピン」は、このかるたの一枚目の札をそう呼んだことから「最初」とか「最高」などの意味に使われている。

一方、「キリ」のほうは諸説あるそうだが、いちばん有力なのは、花札の最後の月、つまり12月を表す札が桐の絵であることから、「最低」とか「最後」を表すようになったのではないかと言われている。

そのほか、「シカトする」「ボロを出す」「カモる」「ボンクラ」「チンヶなヤツ」なども、元はみなギャンブル用語である。

今も昔も、ギャンブラ−たちは、コピーをつくる名人だ。日常生活に溶け込んだギャンブル用語は、間違っても上品とはいえないが、なかなか味わいのある、使い勝手のいい言葉ではないだろうか。