今から7年ほど前、アメリカ・ニュージャージー州、アトランティックシティのカジノで、たった20分あまりで、所持金のすべてを使い果してしまった夫婦がいた。「もうやめましょう! お願い!」とあたりをはばからない大声。私もほかの客たちも、いっせいにその夫婦のいるルーレットテーブルに注目することになってしまった。

 

モナコでは連続27回黒の目が出たことも......
 

「今度こそ黒が出るさ! ここで後には引けないよ!」
そのテーブルでは、赤の目が連続14回出ており、夫のほうが黒に賭け続けていたため、有り金のほとんどをスッてしまっていたのだった。

負け続けてすっかり熱くなってしまった夫は、後ろでいくら妻が泣こうが叫ぼうが止まらない。サイフの中からありったけの100 ドル札の束を出すと、叩きつけるように黒の目に置いた。

だが、結果は無残だった。15回目も赤の目。全財産を失った夫は、言葉を失ったまま立ち尽くし、やがて野次馬たちが見守るなか、泣き叫ぶ妻の手を引き、肩を落としてカジノから去っていった。

ルーレットの女性ディーラーは、この勝負の間じゅう至って冷静な表情で、淡々と球を投げていた。また勝負が終わった後も、表情ひとつ変えず、夫婦の行く末などまったく気にしていないようだった。

この夫婦のように、確率論にしたがってルーレットをやる人は多い。たとえば、「赤の目が続けて出たから、次は黒の目だ」「26がずっと出てないから、そろそろ出るぞ」といった賭け方である。

この方法はルーレットのセオリーとして定着し、必勝法のように考えている人も多い。だが、実はルーレットの目は、ディーラーが自在に狙えるのだと知ったら、あなたはどう思うだろうか。

 

アメリカンタイプのルーレットは、お客にとって不利

ルーレットのウィール(回転する盤)には、現在二種類あり、ヨーロッパタイプとアメリカンタイプがある。この2種類は、どこの部分が違うかというと、ウィールの数字の配列がまったく異なる。また、「親の総取り」である「0」が、ヨーロッパタイプではひとつしかないのに比べ、アメリカンタイプは「0」と「00」の2箇所がある。

もともとルーレットは、確率論の研究のため、ランダムな数字が出るように工夫されたものだった。それが、いつの間にか貴族の賭け事の道具として使われるようになり、全世界に広がっていった。それが現在、ヨーロッパタイプといわれるウィールである。

やがてアメリカのカジノでは、店の利益を追求するために、このウィールに改良が加えられた。「親の総取り」である「0」を多くし、ディーラーが狙いやすいように、数字の配列を変える......。こうして生まれたのが、アメリカンタイプのルーレットである。

 

ディーラーはちゃんと考えて球を投げている

ラスベガスでは聞いた話では、5 年もルーレットを投げていると、狙ったその一点に、自由に球を投げ入れることができるようになるという。つまり、赤も黒も「0」 も「00」も、自由自在に目を出せるということで、経験豊富なディーラーの技術の前には、確率論などまったく無意味なのだ。

「よほどの高額がかかっているか、プロの人でも来ない限り、あまり狙いませんよ。ルーレットは放っておいても、たいていお客さんのほうで自滅してくれますから。それより、適当に勝ってもらって、次の日また遊びに来てもらったほうが、お店には都合がいい」

私が取材したディーラーは笑いながらそう言ったけど、現実は、この言葉ほど鷹揚にやってはいないようだ。カジノでよく観察していると、お客が稼ぎすぎたな…‥と思うと、それまでお客に取らせていたディーラーも、ちゃんと回収に入る。投げ方に気合が入り、今まで以上にウィールの回転がゆっくりになったとしたら間違いない。明らかに狙ってきているので注意が必要だ。

 

 

目もくらむ早さでチップを置くプロの技

またギャンブラーの中には、「ルーレットの目は狙える」ということを前提として賭ける人もいる。ウィールの速度、球が当たるピン(ウィールについている金属の飾り。球は必ずピンのどれかに当たって落ちるようになっている)、スピンの程度(ディーラーが球に与える回転)などを見て、ディーラーが球を投げ入れた瞬間に、落ちる場所を予測する。

そして、多少ずれることを考えて、狙った目と思われる前後5目ぐらいにすべてチップを張るのである。それもただ数字の上に1枚置くのではなく、タテ横斜めのすべてに、一つの数字をグルリと取り囲むように置くのだ。(中には、38目中35目の数字に置くプロもいる)

この方法は、ルーレットのウィールに並んでいる数字の配列を完璧に記憶していないとできないし、ディーラーが球を投げた直後から「ノー・モア・ベット!」と、声がかかるまでの、せいぜい5秒から7秒の間にチップを張る技術がないと不可能である。

ビギナーでもルーレットで勝てる場合もある!? 

「えーっ、ルーレットってそんな面倒くさいことをしなくちゃ勝てないんですか!?」
この話を聞いた人は、たいていそう言って驚く。だが実際にルーレットの必勝法としては、これ以上のものはなく、この技術をもって海外カジノで勝負したところで、勝率はせいぜい5 〜7 割といったところである。

そこで、面倒くさいことをせずに勝てそうな、ビギナー向きのルーレット必勝法をひとつ。ハイローラー(大金を賭けているお客)を探し、その裏に張るべし。裏とは、ルーレットのウィール上にある数字の反対側に位置する目のことで、ディーラーがハイローラーをはずそうと思うと、必然的に反対側を狙って投げるからである。そのハイローラーが、カジノ側のサクラでない限り、あなたがルーレットで勝てる可能性は、確実にアップするはずだ。