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3日後……。再び同じカジノを訪れた私は、またそのオジサンに出会うことになった。だが不思議なことに、今度は余裕の表情で、ブラックジャックのテーブルにちょこんと座っていたのである。私が逃げ出した後、別の日本人観光客でもつかまえて、借金の申し込みに成功したのだろうか……?
「やあ、こんにちは。実はあの後、電信で日本から金を送ってもらいましてね。きょうはなかなか好調なんです」
聞けば、会社の出張費用を、すべてカジノで使い果たしたという。そして、クレジットカードで限界いっぱいのキャッシングをしたが、それもあの日にスッてしまったのだという。
「いやー、あのときは大変失礼致しました。お恥ずかしい」
その日のオジサンは、3日前とはまるで別人であった。きっと会社では課長クラスの、そこそこ責任のある立場にいるのだろう。“衣食足りて礼節を知る”じゃないけれど、お金を日本から送ってもらって余裕ができたオジサンは、冷静でいるときは、なかなか礼儀正しい紳士であった。
ギャンブルには、こんなふうにひとりの人間の人格を、とことん変えてしまうほどの魔力がある。私の場合も、負けが続いて熱くなり、半分やけくそで大金を賭け、きれいさっぱりスッてしまったことがあった。もちろん一回で懲りたが、悪い方向に向かうとわかっていながら、突っ走る自分を制御できないギャンブラーの気持ちは、とてもよくわかる。
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