LADYWEB講座|Lady's Clinic

ドクター河村のレディース・クリニック


質問 子宮筋腫の手術をすれば、不妊は治りますか?
結婚して1年半になる妹がいます。現在は、私が東京で就職していることもあり離れて暮らしています。1年くらい前から夫婦は子供を望んでいますが、まだ妊娠していません。先日、気になって不妊の検査に行ったところ、卵管の部分が通っていないといわれたそうです。写真で見ると、子宮の左右から細い管が2本出ていないといけないそうですが最初から写ってなかったそうです。そして、良性の筋腫もあるそうです。卵管がつまっていると自然に妊娠しないため、お医者様によると筋腫が圧迫してるかもしれないから(1)筋腫を2個とって卵管を通す手術をするか、(2)卵管をあてにしないで体外受精にするかといわれたそうです。(1)の手術をすれば、卵管は必ず通るのですか? 彼女には、私が独身でこのあたりの知識がまったくないため別の病院でもう一度見てもらってから決めれば、くらいしかいってあげられません。いつか筋腫が大きくなって取らなければならないのなら、若いうちのほうがいいのでしょうか? アドバイスをお願いします。(あいこ・28歳・独身・東京)


回答 子宮筋腫の状態によっては、手術を優先することもあります
まず、子宮筋腫と不妊症についてですが、子宮筋腫が存在した場合、それが原因で不妊症になることもありますが、実際には子宮筋腫を持ったまま妊娠できる方のほうが多いです。問題は、子宮筋腫の発生場所、大きさ、個数などにより妊娠することにその子宮筋腫がどの程度悪影響を及ぼしているかということです。子宮筋腫が子宮の外に向かって発育する場合は、妊娠に影響しないほうが多いです。しかしながら、子宮の内腔に発育した場合は、小さくても着床を妨げる可能性が出てきます。

子宮の筋層内にできている場合は、大きさによって子宮内腔や卵管を圧迫して不妊症の原因になることがあります。治療をする場合は、手術(腹腔鏡下での手術も含めて)で子宮筋腫のこぶだけを摘出するか、薬を使って縮小させる(薬だけで完全に消失させることはできません)方法がよく用いられています。

次に、卵管が両側とも閉塞している場合の治療ですが、細い内視鏡(程度のごく軽いものは、ガスや水、造影剤を通した際に開通することもありますが)を卵管に通して開通させるか、手術で治す方法もあります。これらの方法により卵管が開通し妊娠できることもありますが、実際の妊娠成績は、あまりかんばしくないのが実情です。

卵管を開通させる治療に比べて、圧倒的に頻繁に用いられ、かつ最も治療効果の高い治療法は体外受精胚移植です。体外受精胚移植では、受精を体外で起こさせますので、卵管が両側とも閉塞していても妊娠が可能になります。

あいこさんの妹さんの場合ですが、子宮筋腫が2個あるとはいえ、卵管が両側とも閉塞してしまうことは頻度としては少ないと考えられます。実際には診察してみないと断定的なことはいえませんが、他の原因(例えば、過去の感染や子宮内膜症など)により両側とも卵管が閉塞し、子宮筋腫がたまたま合併している可能性も充分あると思われます。その場合、子宮筋腫の手術をしたからといって、卵管が開通することにはならず、妊娠のためにより確率の高い治療をするのであれば体外受精胚移植のほうが、早いのではないかと思われます。

ただし、子宮筋腫が子宮筋層内や子宮腔内に発生し、不妊症に大きく関わっており、また妊娠の維持にも問題がありそうな場合は、子宮筋腫の治療を優先することもあります。

また子宮筋腫は、ごく小さいものも含めると40歳代の女性では、2割以上の方が、持っているといわれている非常に頻度の高い病気です。20歳代の方では、子宮筋腫があるかたは、少数ですが、若い頃から子宮筋腫があった場合に、将来的に必ず手術をしなければならないほど成長するとは限りませんので日常生活上、あるいは妊娠の上でどうしても手術が必要というケースを除き、手術をしないで様子をみることのほうが多いです。

あいこさんがおっしゃるように、別の病院でセカンドオピニオンを求めてみるのも、今後の治療方針を決定する上でよいかもしれません。