LADYWEB講座|Lady's Clinic

ドクター河村のレディース・クリニック


質問 望んでいない妊娠をしました。腹部の鈍痛が気になります
わたしは28歳の独身です。不規則な時間の仕事についているにも関わらず、これまで正確に生理があったのですが、今回なんと妊娠してしまいました…。予定よりも2週間たっており、市販の検査キッドで陽性で、昨日病院へ行ったのですがエコーではっきりわからないといわれました。望んでいない妊娠でもあったのですが、それに加え、左に多胞性の6cm大の卵巣嚢腫(らんそうのうしゅ)があり、また、虫垂炎を抗生剤で散らした経験もあるのですが、ここのところ右の下腹部痛に加え、生理痛のような鈍痛もあります。昨日行った病院の先生にも話したのですが心配ないといわれてしまいました。夜寝ていても痛みで目が覚めたりするのですが、本当にそのままでも大丈夫なのでしょうか? それから中絶には初期には薬でできるという話もきいたのですが、そんな方法もあるのですか?(Y・K)


回答 できるだけ早く、正確な診断をしてもらう必要があります
次回月経予定日から2週間経っているということですから、毎月順調に月経が来ていたとすると現在およそ妊娠6週(妊娠2か月の半ば)です。妊娠6週になると、正常の子宮内妊娠で、順調に経過していれば、まず間違いなく子宮内に胎嚢(たいのう)という胎児が入る袋が超音波で写ります。Yさんの場合、診察でまだ胎嚢が見えないとなると、その可能性として、

(1)これまでは毎月、月経が正確にあったが、妊娠した今回に限ってたまたま排卵が遅れ、妊娠週数がまだ妊娠5週以前であるため、超音波で確認できない。
(2)子宮内に正常に妊娠したが、妊娠が順調に経過せず、子宮内で流産している。
(3)妊娠自体が、子宮内に正常に成立せず、子宮外妊娠を起こしてしまっている。

……などです。(1)のケースであれば、あと2〜3日もすれば、子宮内に胎嚢が見えるはずです。(2)であれば、このまま胎嚢が見えないか、見えても発育が悪く放置した場合、やがて出血が始まり本格的な流産となります。(3)の場合は、そのまま子宮外(特に卵管内が多い)で妊娠が継続すると、やがて卵管が破裂する恐れがあり、その場合腹腔内に大出血し命にかかわることがあります。

従って、上記(1)から(3)のいずれであるのかを、できるだけ早く診断しなければなりません。特に(3)の場合は、見逃すと大変なことになります。

妊娠初期に生じる下腹痛で、一般的によくあるのは、子宮が急に大きくなってくることによる痛みや、軽い子宮の収縮による痛みです。これらは、妊娠2〜3か月くらいまでは、よく認められる症状で無理をしなければ、あまり心配ありません。

しかし、Yさんの場合、上記(2)や(3)の場合により下腹部痛が生じている可能性を否定できません。もっとも、(3)の子宮外妊娠で破裂を起こした場合は、通常激烈な腹痛となりますので、少なくとも今、破裂を起こしていることはほとんど考えられませんが、子宮外妊娠が破裂せずに流産し、痛みを生じることがあります。また子宮外妊娠で、破裂や流産を生じていなくても子宮外妊娠を起こしている側が軽く痛むことはあります(破裂や流産するまでは無痛で破裂や流産により突然痛むこともよくあります)。

右の下腹部痛に関しては、虫垂炎を手術せずに抗生物質で治療したことが関係しているとすれば、過去の虫垂炎の炎症により、癒着を生じている可能性も否定できませんが、手術で虫垂を取り除いていない以上、妊娠中に再び虫垂が炎症を起こすこともあり、血液検査等により虫垂炎の再発を否定する必要があります。

左の卵巣嚢腫については、単胞性であれば、今回の妊娠に際し排卵したあとが嚢腫様に腫れることはよくあり心配ありませんが、多胞性ということになると、もともと存在していた卵巣嚢腫が今回の妊娠を契機に見つかった可能性もあり、今後フォローアップが必要です。

なお、妊娠初期の中絶薬は、日本では使用が認められておりませし、必ずしもそれが安全というわけではありません。海外では使用されているところもありますが、薬による中絶が失敗すれば、結局さらに手術もするというのが実際のようです。したがって、日本での妊娠初期の合法的な中絶方法は、現在のところ手術のみです。妊娠4か月以降になると、日本でも中絶のための薬を使いますが、分娩と同じ形態となるため、陣痛様の痛みを伴う上に、入院が必要で費用も高額です。

ともかく今は、推定妊娠6週であるにもかかわらず、子宮内に胎嚢がまだ見えない、ということが最大の問題です。子宮外妊娠でないかどうか、できるだけ早く、正確な診断を下してもらう必要があるでしょう。