LADYWEB講座|Lady's Clinic

ドクター河村のレディース・クリニック


質問 抗生物質やステロイド剤は、妊娠出産に影響はないのでしょうか?
現在、27歳の女性です。19歳になった頃から顔中に広がったひどいニキビに悩まされ、1年以上皮膚科に通いました。その時、抗生物質やステロイド剤などを処方され、ニキビはだいぶよくなりました。ですが、薬をやめてから、最近また悪化しています。5月に結婚するので、また皮膚科に通うことを考えていますが、抗生物質やステロイド剤は、妊娠出産に影響はないのでしょうか? また、もし影響があるとしても、妊娠を予定している場合、どのくらい前に薬をやめれば、副作用を避けられるのでしょうか?(明美・27歳)


回答 薬を内服する妊娠の時期、薬の種類によっても、危険度は異なります
まず抗生物質やステロイド剤の妊娠中の内服による胎児への影響ですが、これは該当する薬を内服する妊娠の時期と、内服する薬の種類によって危険度が違ってきます。

初めに薬の内服と、妊娠の時期についてですが、最終月経から数えて初めの4週間は、胎児への影響はほとんどないと考えられています。月経開始4週間後からのおよそ1か月間(妊娠4週から7週末まで。妊娠月でいうと妊娠2か月)は、胎児の重要な器官の多くが形成される時期であり、薬の内服には特に注意が必要です。妊娠10週くらいまでに手指や心臓が形成され、その後15週末(妊娠月でいうと妊娠4か月末)までは性器や口蓋の形成が続きます(ちなみに、妊娠週数は、最終月経開始日を妊娠0週0日と数えます)。胎児の体の形成が終わる妊娠16週(妊娠5か月)以降は、薬の内服による奇形は生じませんが、薬によっては発育、発達などへの影響は起こりえます。

次に薬の種類についてですが、抗生物質は安全性の高いものと、内服を避けておいたほうがよいものがあります。以前から用いられているペニシリン系やセフェム系の抗生物質は、安全性が高いと思われます。ただし、長期間服用するにきびの治療薬としてこれらが適切かどうか、また保険適応の問題もあり、皮膚科の先生とご相談していただく必要があります。

ステロイド剤は、妊娠中は治療上どうしても必要な場合のみ使用されます。一般的にステロイド剤は、通常のにきびに対してはあまり使用されないようですので、どうしても必要でなければ、避けたほうがよいと思います。

現在は妊娠判定薬の感度がよくなっており、高感度の試薬を用いると、月経周期が約28日型の方では、次回月経の開始予定日あたりには妊娠かどうかがわかる場合が多いです。どうしても必要というわけではない薬は、この時期以降は内服を中止する必要があります。

薬を内服後、その薬が代謝されて体から完全に排出されるまでの期間は薬剤によって異なっており、また個体差もありますので、妊娠の可能性がある周期には、次回予定月経日の少し前から、薬の安易な内服を避けるとさらに安心です。(2002.5.4)