LADYWEB講座|Lady's Clinic

ドクター河村のレディース・クリニック


質問 クラミジアは性交渉でしか、かからない病気なのでしょうか
先日、不妊症の件で夫婦で産婦人科を受診しました。原因は夫のほうにあるとわかっていたので、夫婦で色々な検査をしていただきました。ところが、私のほうが血液検査でクラミジア感染に陽性と出てしまったのです。 記憶があいまいなのですが、私は、何年も前にクラミジアにかかり、治療をしたことがあります。ですが、結婚して3年、もちろん夫以外から感染するようなことはいっさいしていませんし、夫のほうも同じように身におぼえはないといっています。血液検査の結果でお互い疑心暗鬼になってしまい、子供を作るどころではなくなってしまいました。クラミジアは、本当に性交渉だけでしかかからない病気なのでしょうか?(M美・関東・主婦)


回答 クラミジア感染症は、パートナーも同時に治療することが必要です
クラミジア(性感染症の場合は、そのなかでもクラミジア・トラコマティス)感染症は、性行為により膣から子宮、卵管、腹腔内に感染が及び、炎症を起こすと、卵管が詰まったり、狭くなったり、あるいは腹腔内に癒着を起こして卵管による卵子の捕捉(ピックアップ)が障害されて不妊症の原因になることがあります。また妊娠しても子宮外妊娠の原因となる場合があります。

クラミジア感染の検査方法は、血液によりクラミジアに対する抗体ができていないかどうかを調べる場合と、クラミジアの病原体そのものを検出する場合があります。血液による抗体検査の場合は、現在はクラミジアの病原体は消滅(つまり病気は治っている)していても、抗体はしばらく血液中に検出されます。したがって治癒後であっても、治癒後しばらくは過去の感染も陽性と判定されてしまいます。

抗体検査では通常IgG,IgAという2種類の検査を行う場合が多く、それらの値からかなり以前の感染なのか、それとも比較的最近でまた他に感染させやすい状態なのか、についてある程度の推測はできますが、その時点での病原体の存在を確定させたり、感染時期を特定することはできません。現在もまだクラミジアの病原体がいるのかどうかを調べるには、血液による抗体検査ではなく、抗原検査(クラミジアという病原体そのもの、またはそのDNA)を行う必要があります。女性の場合は子宮頚部を綿棒でこすり、病原体がいるかどうか検査します。

M美さんの場合、過去にクラミジアに感染の既往があり、治療が終わってクラミジアの病原体自体は消えていても、血液検査ではまだ陽性に出ている可能性があります。あるいはもし治療が性交渉のパートナーと同時になされていなければ、再感染をしていた可能性もあります。性交渉によるクラミジア感染の治療は、その時点での性交渉のパートナーも同時に治療することが原則です。同時治療をしなければ、本人が治っていても、また性交渉により相手から再感染してしまう可能性があるからです。

クラミジア・トラコマティスは、通常は性行為により感染するといわれています。ただし、性器同士でなくても性器と口(オーラルセックス)でも感染することがあります。オーラルセックスの感染では、クラミジアの病原体は性器のみならず咽頭からも検出されます。なお、今は珍しくなりましたが、トラコーマという結膜炎もクラミジアが病原体です。これら以外で、日常生活でクラミジアに感染することは、ほとんどないのではないかと思われますが、はっきりしたことはわかっていません。

クラミジアが性器に感染すると、放置することでより妊娠しにくくなるおそれがあり、また感染したまま妊娠、出産すると分娩時に新生児に感染し、新生児がクラミジアによる結膜炎や肺炎を起こすこともありますので、現在も病原体が存在することが判明したら必ず治療を現在のパートナーと同時に行うことが必要です。(2002.9.4)