LADYWEB講座|Lady's Clinic

ドクター河村のレディース・クリニック


質問 初めての妊娠で流産。心配なので、原因を調べる検査をしたほうがよい?
私は現在、30歳です。先週、初めての妊娠で流産しました。12週での稽留流産でした。医師は原因ははっきりしないが、染色体異常だろうということでした。今回特に検査の必要もないのではということでしたが、この時期の流産は少ないと聞き、検査をお願いしたところ、 一般的な血液検査を1つだけやっていただくことになりました。抗核抗体の検査だそうです。まだ検査結果は出ていないのですが、今思えば、学生のころひじを蜂にさされたときの症状がひどく、放っておいたら関節が動かなくなるところだったといわれたことがあります。その時、抗体の話をされたことを思い出しました。また、今はまったくといっていいくらい症状はないのですが、子供の頃はアトピーで皮膚科通いをしていました。このようなことは流産に関係はあるのでしょうか? また、今回抗核抗体の検査以外の検査もお願いしたほうがよいのでしょうか?(埼玉・S子・専業主婦)


回答 2、3回続けて流産した場合は、原因を突き止め、治療の必要があります
まず流産についてですが、一般的に人間の場合、妊娠しても流産に終わってしまう頻度は、10〜15%といわれており、意外と高頻度です。平均すると妊娠のおよそ8回に1回くらいは流産することになります。妊娠初期の流産の多くは染色体異常によるものです。統計にもよりますが、おそらく妊娠初期(妊娠4か月まで)の流産のおよそ70%くらいは染色体異常によるのもだろうと考えられています。そして、染色体異常による流産の多くが、ご夫婦どちらにも染色体異常がなくて、偶然運悪く受精卵が染色体異常を起こすものです。染色体異常の流産に対しては治療法がありません。

流産の多くは、妊娠2か月から3か月(妊娠4週から11週)の間に生じます。妊娠のごく初期の流産は染色体異常の頻度がより高くなります。妊娠4か月まで胎児が育っていたのに染色体異常で流産することも珍しくはありませんが、染色体異常以外の流産原因も充分ありえます。自分の体に対して抗体を作ってしまう自己免疫疾患もそのひとつで、この場合抗核抗体が陽性になることが検査上の特徴です。

それ以外でも流産の原因として、抗リン脂質抗体、ホルモン異常、感染症、凝固系疾患(血を固める機能の異常)、子宮自体の奇形や子宮筋腫など、さまざまなものが考えられます。まだ1回だけの流産ですので、これらの病気のいずれかがあったというよりも、偶然運悪く流産した可能性のほうが高く、S子さんの担当医がおっしゃられたように、1回だけの流産ではこれらの検査はあまり行われません。

2回(反復流産)もしくは3回(習慣流産)連続して流産を繰り返す場合は、原因を突き止めて可能なものは治療し、次の妊娠も流産に陥らないようにするため、積極的に検査を行うことが多いです。S子さんの場合、蜂に刺されたときの症状やアトピー性皮膚炎があるということから、免疫機能が過剰に反応してしまう可能性は考えられますが、アトピーと習慣流産の直接的な因果関係は不明です。1回だけの流産ですから、原因追及のための検査は必須ではありませんが、ご本人が希望されれば上記の流産原因に関する検査は容易にできます。(2002.10.21)