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陰部に口内炎のような潰瘍ができて、激しく痛みます |
新しくできた彼と先週初めてセックスしました。それから数日して軽い痒みがあったあと、陰部に口内炎のような潰瘍ができ、歩くのも尿をするのもつらいくらい、激しい痛みがあります。陰部にこのようなものができたりひどく痛んだことは過去に経験ありません。なにか性病にかかったのでしょうか。彼のペニスには何の症状もないようなのです。薬局で売っている薬で治すことはできないでしょうか。(匿名希望・千葉・会社員)
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外陰ヘルペスの疑いがあります。婦人科の受診をおすすめします |
文面から推測すると、外陰ヘルペス(ヘルペス外陰炎、性器ヘルペス)が、もっとも疑われます。多くの場合は性交渉によって感染しますが、性器同士でなくても性器と口唇の接触でうつることもあります。またこれらの性的接触がまったくない場合にも、非常にまれながら、なんらかの経路でウイルスが付着し、症状が出ることもあります。
この病気は単純ヘルペスウイルスという病原体で感染します。感染しても症状が出ないこともありますが、一般的に性的接触から3〜7日(もう少し長短があることもあります)ほどの潜伏期間ののちに症状が出てきます。感染から間もなく痒みを伴うこともあり、それから外陰部(膣内にもできることがあります)に水泡ができ、間もなく破れて2〜5mmの潰瘍となり、口内炎に似た状態になります。潰瘍が外陰部の左右対称にできることもあります。黄色の帯下を伴う場合も多いです。
特に初めての感染の場合には、一般的に激しい痛みを伴います。歩行や排尿も苦痛なくらいの痛みになることも珍しくありません。また、鼡径部のリンパ節が腫れることもあります。重症のケースでは、高熱を伴うこともあります。症状は通常1〜3週間続き、無治療でもやがてはおさまっていきますが、治療をしたほうが早く治ります。また重症化しにくいため、診断を確定させるためにも、後で述べる今後のためにも、このような症状が出た場合には、ぜひ婦人科の受診をおすすめします。
診断には感染部位から直接単純ヘルペスウイルスを検出する方法と、血液検査で抗体ができているかどうかを検出する方法があります。どちらの検査も一長一短がありますが、特に初感染時は病状が特徴的なため、肉眼で診断がつく場合が多いです。ヘルペスはウイルスであり、治療には抗ウイルス剤の軟膏をぬるか、内服をします。重症例では、入院し抗ウイルス剤の点滴をしなければならないこともあります。また同時に、痛みを抑える表面麻酔剤のジェリーを塗ったり鎮痛剤を内服して症状を緩和することもあります。医師の処方箋がないと、抗ウイルス剤は手に入りません。このため、治療には必ず婦人科への受診が必要です。
性交渉の相手には症状が出ていない場合も多いです。この場合は男性側には症状が出ていなくても、目に見えないウイルスを体内や粘膜面に持っていることになります。このウイルスは症状がおさまった後も、体内(神経節)に潜み、体調が悪くなったり、抵抗力が落ちた時(風邪をひいた時や月経時、心身の疲労時、妊娠時など)に再発することがあります。再発時は初感染時に比べると症状は軽いです。
このウイルスは新生児に感染すると、死亡したり、重い後遺症を残すことがあります。妊娠中母体内での胎児への感染は極めてまれですが、たまたま分娩前に初感染したり、再発してしまうと、自然分娩で膣から産む場合には赤ちゃんがウイルスに接してしまうため、膣からの自然分娩は危険であり、帝王切開を選択しなければなりません。従って、一度でも外陰ヘルペスに感染したことがある女性は、妊娠したら必ずそのことを担当の産婦人科医に伝えておく必要があります。
一度感染してしまうと、単純ヘルペスウイルスは体内に潜んでしまいますが、症状がなければ性交は可能です。その際は完全な感染予防は困難なものの、コンドームの装着が望まれます。しかし、当然ながら、再発時にはパートナーへの感染防止のため性交は控えなければなりません。(2003.1.15) |
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