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どのくらいの期間、妊娠できなければ、「不妊症」になるのでしょうか? |
33歳の主婦です。結婚当初の半年は避妊していましたが、避妊をやめて1年近く経つのに妊娠しません。これは「不妊症」ということになるのでしょうか。どれくらいの期間妊娠しなければ、病院を受診するべきでしょうか。また受診する場合に、病院の選び方や注意点があれば教えてください。(岐阜・匿名希望)
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性生活を行っていても、2年間妊娠しない場合を「不妊症」と呼びます |
妊娠可能な年齢にある男女が妊娠を希望し、ある一定期間、性生活を行っているにもかかわらず妊娠しない場合を「不妊症」と呼んでいます。この期間を2年間とするのが一般的ですが、米国生殖医学会では、1年と定めています。
また、避妊をしないで普通に性生活があった場合、1か月あたりで妊娠が成立する確率は、およそ20〜30%程度といわれています。この確率は特に女性側の年齢により大きく異なり、30歳代後半から40歳代になるとさらに低下します。
仮に1か月あたりに妊娠する確率を20%とした場合、たとえば、100組のカップルが先月まで避妊しており、今月から避妊を解いたとすると、今月は100組のうちの20%つまり20組が妊娠することになります。翌月には、最初の月に妊娠しなかった80組のうちの20%(16組)が妊娠し、2か月で合計36組が妊娠することになります。このように計算すると、1年後には90組以上が妊娠することになります。
さて、以前より夫婦の10組に1組は不妊症であるといわれており、最近はさまざまな要因(晩婚化、子宮内膜症の増加、クラミジア等性感染症の増加など)によりその割合は増加しているといわれております。上記の計算のごとく、1か月平均で避妊しないカップルの20%が妊娠すると仮定した場合に1年後には10組中9組が妊娠するはずであることから、避妊しないで1年間妊娠しなければ、妊娠しにくい何らかの原因があることが疑われます。妊娠のチャンスを逃す月もあることを考慮に入れても、2年間妊娠しなければ、妊娠しにくい原因がある可能性はさらに高くなります。
これらのことから、避妊しないで1年間妊娠しなければ、不妊症検査のために受診してよいであろうと思われます。ただし、この期間については特に妻側の年齢を考慮しなければなりません。なぜなら、女性の場合30歳代半ばから卵子の質が低下し、月経1周期あたりの妊娠率は年齢とともにどんどん低下していきます。30歳代の終わりからは妊娠できる能力は急速に落ちていきます。
例えば、女性が30歳代の終わりにご結婚され積極的に妊娠しようとしたにも関わらず妊娠しない場合に、この年代の1年間はとても貴重であるといえます。まして2年間経過し40歳代に入ると妊娠できる能力はさらに低下しますので、年齢の高い方は、不妊期間が1年以内であっても早めに受診されることをおすすめいたします。
また受診の際の注意点として、基礎体温表をつけて(可能なら2、3か月、1か月分だけでもあれば助かります)受診すると排卵の有無やホルモン分泌の状態を推測するためにとても有用です。男性側が原因で妊娠しないカップルが全体の半数近くを占めていることがわかっていますので、男性側の検査(まずは精液検査)も必須となります。ご主人も一緒に受診されると検査の内容等の説明も受けられるためよいのですが、精液検査については、自宅で採取して病医院へ持参されてもかまわないため、受診は奥様のみでも可能です。
どのような病医院を受診さるか悩むところかと思いますが、不妊治療に精通した医師がいるところ(不妊外来を設けている病医院や、不妊専門のクリニックなど)をおすすめいたします。また、検査や治療が長期戦になることを覚悟して、あせらず治療を受けることも大切です。(2003.7.17) |
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