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排卵が起きていないのですが、排卵誘発剤の内服は副作用が心配です |
避妊しないで1年過ぎたのに、妊娠せず、また生理も不順なため婦人科を受診したところ、排卵が起きていないようなので、排卵誘発剤を内服する必要があるといわれました。生理は時に来るものの、確かに基礎体温はほとんど上がることがありません。しかしながら、排卵誘発剤というと副作用が強いのではという印象があり、内服するのを躊躇しているのですが、内服しても大丈夫なのでしょうか。漢方薬では無理なのでしょうか。(石川県・R)
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内服薬で排卵が起きれば、副作用はそれほど心配いりません |
自然の妊娠のためには、卵巣から卵子が出る「排卵」は、必須です。卵子が排出されないと、精子と出会うことができず、受精が起きないため妊娠しません。排卵はさまざまなホルモンによりコントロールされており、とりわけ脳の視床下部や下垂体、あるいは卵巣から分泌されるホルモンの分泌とバランスが重要です。なぜ排卵しないのか、どのホルモンが問題で排卵が障害されているのかを調べることも大切であり、それにより治療法も異なります。
ダイエットや肥満が原因となる場合には、適正体重に戻していくことも大切です。ストレスが原因であれば、それを取り除くことができると排卵が回復することもあります。乳汁分泌ホルモンが過剰に分泌されている場合には、排卵が抑制されるためその原因の追求とともに、このホルモンを適正なレベルに下げる必要があります。
しかしながら、まったく排卵が起きていない無排卵症では、排卵誘発剤を使用しないと排卵しない場合が多くを占めています。漢方薬で排卵障害が治療できないわけではないものの、無排卵症を漢方薬のみで治療するのは多くの場合困難であり、また漢方薬にも副作用が皆無というわけではありません。
さて、排卵誘発剤には、内服によるものと注射によるものがあります。内服によるものは、脳に働いて卵胞を発育させるホルモンを出させ、卵胞を成長させます。注射(HMG製剤)によるものは、直接卵巣に働いて、卵胞を成長させます。したがって、内服薬と注射薬では、同じ排卵誘発剤といっても作用機序がまったく異なり、副作用の程度も頻度も大きく異なります。内服の排卵誘発剤のほうが、副作用が少なく、一般的にまずこちらを使用します。薬品名としてはクエン酸クロミフェン(製品名:クロミッド、セロフェンなど)、シクロフェニル(製品名:セキソビット)です。
副作用として問題となるのは、卵胞が複数発育することにより卵巣が腫れたり、妊娠した場合の多胎妊娠ですが、クロミッドによるものでは卵巣が腫れすぎるケースは多くはなく、多胎妊娠の頻度は妊娠例のおよそ5%程度であり、その大多数は双子です。まれに胃腸症状、頭痛を訴えることがあります。また極めてまれに霧視といって、視野がぼやけることがあり、卵巣が腫れすぎたり霧視が出たりする場合には、内服を中止します。
さらに、個人差はあるものの、この薬の内服により子宮頚管粘液が極端に減ったり、子宮内膜が厚くならない場合には、妊娠しにくいため、これらの問題が起きていないかどうかを医師に確認してもらいながら、使用する必要があります。セキソビットでは卵巣が腫れすぎたり、多胎になることはほとんどありませんが、クロミッドに比べると排卵誘発効果は劣ります。内服の排卵誘発剤により排卵障害の方の80〜90%は排卵しますが、内服のみでは排卵しない場合には、注射の排卵誘発剤を使用せざるを得ません。
注射の排卵誘発剤(製品名:ヒュメゴン、フェルチノームP、パーゴグリーン、HMG日研、など)は、卵巣に直接働き排卵誘発効果は極めて高いですが、その分副作用も強いため、卵胞の発育を超音波でモニターしたり必要に応じホルモン値をチェックしながら注意深く使用する必要があります。副作用としては、卵胞がいくつも発育するため卵巣が大きく腫れたり、その結果としておなかが張ったり痛んだりすることがあります(卵巣過剰刺激症候群)。また程度が重くなると腹水・胸水が貯留したり、極めて稀ながら血栓症を発症することがあります。
多胎妊娠の頻度も妊娠例の約20%程度と高く、双子が多くを占めているものの、3つ子以上になることもあり得ます。排卵誘発剤には上記のような副作用はあるものの、内服の排卵誘発剤で排卵が起きれば、その副作用の程度は注射によるものと異なり多くの場合軽度であり、あまり深刻になる必要はありません。(2003.10.15) |
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