LADYWEB講座|Lady's Clinic

ドクター河村のレディース・クリニック


質問 自然妊娠と人工授精による妊娠に違いはあるのでしょうか?
32歳の主婦です。結婚後避妊していないのに、3年半妊娠しなかったため、婦人科を受診したところ、夫の精子数が少なく、性交渉しても私の子宮に精子がほとんど入っていないことがわかりました。精子数を増やすのは難しいといわれ、人工授精をすすめられました。私は早く子供が欲しいので、人工授精をやりたいと思うのですが、夫は人工的に子供を作るということに抵抗があるようです。人工授精での妊娠は、自然妊娠の場合と違いはあるのでしょうか。またこの治療で妊娠できる見込みはどの程度でしょうか。(静岡・M代)


回答 結論的には妊娠してしまえば、あとは同じです
結論的には、自然妊娠でも人工授精による妊娠でも、妊娠してしまえば、後は同じです。妊娠中も産まれてくる子供にも、自然妊娠と比べて、なんら違いはありません。人工授精という治療法の、「人工」という言葉が、心理的な抵抗を一層大きくしているように思われます。男性側の精子数が少なかったり、精子運動率が悪かったり、あるいは女性側の受け入れに問題があって(子宮頚管粘液の分泌不良など)、性交後に充分な数の良好運動精子が、子宮に入れない場合などに行われるのが人工授精です。

精子が自力では子宮にたくさん入っていけないので、たくさんの良好運動精子を「人工的に」子宮に入れてあげる、という治療であり、その後は精子が卵子に自力でたどりつき、自力で受精しなければなりません。すなわち、「人工的」に行うのは、あくまでも精子の子宮への注入であり、人工授精において、卵子と精子がひとつになる受精そのものには人の手は加えておらず、精子が自力で卵子と合体するのであって、自然妊娠の場合と同じなのです。

人工授精の治療内容を正確に把握していただければ、抵抗感はかなり少なくなるのではないかと思います。一般的には精液を充分きれいに処理し、できるだけ良好運動精子をたくさん集めて、やわらかくて細いカテーテルを用いて子宮に注入します。きちんと行えば、痛みや副作用もほとんどありません。

次に人工授精の妊娠率についてですが、女性の年齢、精子の状態、実施の際の排卵誘発剤使用の有無や種類、実施のタイミング等によりかなり異なりますが、平均するとあまり高くないのが実情です。

女性が若く精子の状態もよいなど、好条件が揃えば、1回で20%以上の妊娠率が出せます。しかしながら一般的には人工授精の妊娠率は、平均すると治療1回あたり、5〜10%程度といわれています。人工授精を始めた方の30〜40%がこの治療により妊娠します。しかしながら、1回当たりの妊娠率は高くはなく1、2回で諦める必要はありません。通常、人工授精で妊娠する方の80〜90%は、治療開始から5、6回目(もしくは7回目)までに妊娠します。

しかしながら、この実施回数については、あくまでも統計上の目安であり、男性側の精子の程度、女性側の年齢や他の不妊因子、およびご夫婦の希望も取り入れて決定します。まずはご主人にも治療内容を把握していただき、ご了解を得ることが必要ですが、もし人工授精で妊娠が成立しなくても、次の有効なステップ(体外受精、顕微授精)がありますので、焦らずに治療をお受けになるとよいと思います。(2003.12.17)