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人工授精で妊娠しない場合は、次に何をすべきですか? |
34歳の主婦です。2年半不妊(不妊原因は夫の精子がかなり少ないことです)で、タイミング指導の後に人工授精を先月で合計6回実施しましたが、妊娠しませんでした。次のステップとして、さらに原因を調べるために腹腔鏡検査を行うか、体外受精を行うか、検討中ですが、どちらを選択するべきでしょうか。(東京都・M子)
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不妊原因がはっきりしている場合は、体外受精や顕微授精がより妥当です |
男性側の精子数が少なかったり、精子運動率が悪かったり、あるいは女性側の受け入れに問題があって(子宮頚管粘液の分泌不良など)、性交後に充分な数の良好運動精子が子宮に入れない場合などに行われるのが人工授精です。通常、人工授精で妊娠する方の80〜90%は、治療開始から5、6回目(もしくは7回目)までに妊娠します。すでに6回人工授精を行い妊娠が成立しなかった場合に、次のステップを検討するのは妥当でしょう。
精子に問題があり、人工授精でも妊娠が成立しなかった場合の次のステップの治療は、体外受精や顕微授精です。人工授精が精子を子宮内に送り込むだけの治療であるのに対して、体外受精は女性の卵巣から卵子を取り出し、夫の精子と体外で受精させ、受精卵を培養した後に子宮に戻すという治療です。顕微授精は体外受精でも受精が成立しない場合に、取り出した卵子に精子を1個だけ直接注入して受精させる治療です。
これらの治療を行うと、人工授精では起きていなかったであろう受精が、ほとんどの方で成立するため、あとは胚移植後に着床してくれさえすれば妊娠が成立することになり、人工授精に比し、かなり高い妊娠率が期待できます。1回の治療あたりの、人工授精の妊娠率が平均5〜10%であるのに対して、体外受精や顕微授精では、全国平均で25%以上の妊娠率となります。
さて次に腹腔鏡検査ですが、この検査は内診や超音波検査、子宮卵管造影検査などの一般的な不妊症検査で原因が特定できない場合でも、腹腔内を内視鏡で直接観察することにより、不妊原因を明らかにできる可能性があります。また、腹腔内の癒着剥離や子宮内膜症などの治療も行うことができる場合もあります。
しかしながら、腹腔鏡検査は、実施に際して入院を要する場合も多く、全身麻酔をして腹部に穴を開け内視鏡を挿入して観察をしますので、不妊症の検査としては負担が大きいことも事実です。また、実施したからといって新たな原因が確実に見つかるとも限らず、見つかってもそれに対する治療ができて検査後の妊娠が高確率で期待できるともいえず、またまれながら血管や腸管を傷つけてしまうこともあり得ます。
原因を徹底的に追究して、可能な限り自然妊娠を目指すのであれば、腹腔鏡もよい選択肢であると思われますが、M子さんの場合、ご主人の精子がかなり悪いことがすでに不妊原因として明らかになっており、この場合腹腔鏡検査を行ってあらたな不妊原因を見つけても、検査後に高い確率で妊娠ができるとは必ずしも期待できません。
不妊原因がまったく不明であるならば、腹腔鏡検査も良い選択肢ですが、男性側の原因が明らかであるM子さんの場合には、人工授精6回不成功後のステップアップとしては、体外受精や顕微授精がより妥当であろうと思われます。(2004.4.17) |
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