「目は口ほどにものを言い」という言葉があるが、実際、メイクでいちばん大切なのは、目元だと思う。
特に、私がいちばん気合いを入れているのが、眉毛とまつげだ。どちらも、顔の中に生えている“毛”という共通点を持ち、故に、ただ色をつければよいという他の部分のメイクと比べ、1ランク上級のテクニックを要する。生まれつき眉毛くっきり、まつげクルリンという恵まれた人以外は、そのテクニック如何で、かなり美人度に差が出るのだ。
メイク上手の方でも、たぶん1度や2度は、眉毛を描き忘れるという失敗を経験したことがあるのではないかと思う。な〜んか、今日の私って寝ぼけた顔してるなあ……と思ったら、眉毛が薄ぼんやりと曖昧なままだったとか、ひどいときには、「今日、化粧してないの?」と、男性にチェックされたりとか。眉毛というのは、そのぐらい顔の印象を大きく左右するわけである。
私の友人で、もともと眉毛がすご〜く薄い子がいるのだが、彼女の場合は、女子高時代に友達から忠告された、
「あんたは、朝起きたら何よりもまず先に、眉毛を描きなさい!」
という言葉を忠実に守り抜いているという話だ。ポケットに常にアイブローペンシルを忍ばせていることは、言うまでもない。
また、眉毛薄い系の友人その二は、小学校のとき保健の先生に、
「心配しなくても大丈夫よ。大きくなったら、お化粧でちゃんと直せるからね」
と優しく慰められて、初めて自分の眉毛が、周囲も心配するほど薄いという事実を自覚したそうだ。本人が心配してないウチから慰められた彼女の立場って、いったい……。
数年前、女子高生の間で、眉毛を上手に描くための型紙みたいなものがブームになったことがある。ぺらぺらのプラスチック製で、いろいろな眉毛の形にくり抜いてあり、それを自分の眉毛にあててアイブローペンシルでぐる〜りとなぞり、あとは中をシャカシャカと塗りつぶせばよいというシロモノだ。ハリウッド女優みたいなグイ〜ンとつり上がった眉から、弓形の優しい眉、すっとまっすぐに伸びたシンプルな眉、はたまた、しっかりくっきりの太い眉まで自由自在。どうりで、当時の渋谷系女子高生は、み〜んな同じ顔をしていた(今でもそっか!)。
確かに左右間違いなく同じ眉毛が描けるし、失敗もないから、なかなかの優れものだとは思うが、なんだか福笑いみたいで、私はどうも好きになれなかった。それに、人間の顔というのは、微妙に左右のバランスが違う。だから、左右全く同じ眉毛にすると、かえって不自然になってしまい、結果、ますます福笑いになってしまうのではないか? 実際、歩く福笑いを多々目撃したこともあるし……。やっぱり、そのへんは、自分の顔をいちばん知り尽くした所有者自身が描くのが、いちばんなじみがよいのではないかと思う。
だったら、一度描いた眉が、そのまま永久保存できたらいいんじゃない?……という発想で登場したのが、アートメイク。眉毛の入れ墨だ。確かに、毎日描く眉毛。うまくいった日はご機嫌だが、失敗するとまた落として描き直すのも面倒なので、1日ブルーな気分で過ごす羽目になる。今日は完璧! の眉は落としてしまうのがもったいない。そうだ! 落ちなきゃいいんじゃん! という話だ。
しかし、これも問題があった。メイクを落とした後のスッピン顔に、眉だけそのままクッキリというのが、これまた異様なのである。ましてやベッドに入ってスヤスヤ眠った穏やかな顔の中で、暗闇に燦然と輝くクッキリ眉毛! というのは、相当怖い。だから、かなり興味はあったが、やはり勇気のいる方法だった。
ところが、技術は進歩するものである。出始めの頃は、見事に「入れました!」という感じにしか入れられなかったアートメイクが、色も濃さも微妙なニュアンスまで調整可能になったのだ。完成型そのままにクッキリ入れるのではなく、ガイドライン的に薄く入れれば、ノーメイクのときにも違和感がないし、メイクするときには、下書きがあるので、とっても簡単、しかも失敗なし! と言うわけである。
この情報を教えてくれたのは、この連載の第22回で紹介した、ネイルアーティストの井上由美さんだった。彼女のサロン『Hans-On』でフェイシャルエステを受けた帰り、ピッカピカの素顔に、ちょいちょいと眉毛だけ描いて帰ろうとした私に、由美さんが声を掛けてきた。正面からジッと私の顔を見つめてひと言。
「小野さん、その眉毛、ちょっとマズイかも!」
どうやら、慌てていい加減に描いたので、左右のバランスがかなりひどかったらしい。修正をしながら、由美さんは、アートメイクを勧めてくれたのだった。由美さん自ら、アメリカで技術の勉強もしてきたそうなので、これは安心。私はさっそく眉を入れてもらうことに決めた。
施術はいたって簡単である。まず、好きな形に眉の下書きをする。これは、プロがちゃんとバランスを見て描いてくれるので、完璧だ。それから、色を決める。私は髪の色に合わせて、ブラウンにした。そして、下書きの上から、先に小さな針の付いたボールペンみたいな機械を使って、色をチクチクと入れていくだけ。と〜っても簡単……ただし……すんごく痛いの!
眉毛のある場所というのは、眼孔の骨の上。ほとんど皮だけのところだ。脂肪のクッションもないから、神経に直接痛みが伝わり、痛いのなんのって。特に眉間に近い部分は文字通り針地獄だった。ジッと我慢していても、知らないウチに涙がぼろぼろ出てくる始末。おまけに、顔の皮膚を刺激されるとくしゃみが出るらしく、途中何度も「あ、くしゃみが!」と叫んで、仰向けのままハクショ〜ン! 真っ白い蝋のような背中に、真っ赤な牡丹の彫り物を入れてもらう緋牡丹のお竜の艶めかしさに比べて、なんと無様でこっ恥ずかしいこと! でも、由美さんいわく、みんな涙目でハクションなんだそうだ。よかった、私だけじゃなくて。
痛みと闘うこと1時間。眉のアートメイクは、思った以上にきれいに仕上がった。1週間ほど、かさぶたのような状態で違和感があるが、その後はうっすらときれいな眉のラインが私のものに! ラインからはみ出た毛を毛抜きで抜いて、メイクするときは、上からアイブローペンシルでサササッとなぞれば出来上がり。これで、眉のメイクはめちゃめちゃ楽になった。1時間の痛みが我慢できる方には、絶対オススメである。2年は持つらしい。
さて、もう一つのポイントであるまつげのほうは、ビューラーテクニックとマスカラが勝負だ。目の幅が大きめの私は、なかなかサイズの合うビューラーがなく、いろいろ試したが、今はシュウ・ウエムラのものを使用中だ。
マスカラは、あの名品「ケラシル」以来、ランコム一筋。「ETERANICILS(エタニシル)」「MAGNIFICILS(マニフィシル)」など、次々に出る新製品を渡り歩き、現在は「AMPLICILS(アンプリシル)」がかなり気に入っている。バチ〜ッと扇のように広がったダイナミックなまつげを作るには、これがいちばん! ビューラーでカールし、一度塗って乾かしてから、再び根本からビューラーでグイ〜ンとカールさせるのがコツである。
こちらも試しに、まつげパーマというのを試してみたが、パーマをかけると、確かにカールは出るが、長さが出ないので、私は自分の腕一本で勝負していく道を選んで、日夜腕を磨き続けている。
さて、今気になっているのが、アイラインのアートメイク。うっすらとラインが入っているだけで、目の存在感が全然違うから、アイラインはめ組の女のマストアイテム。ただ、落ちやすいのが難点なので、落ちないアイラインは非常に魅力ではある。しかし、あの痛さで、しかも眼の際! ちょっと手元が狂えば眼球ひと刺し……おおコワッ! どなたか経験のある方は、是非体験談をお聞かせください。
特に、私がいちばん気合いを入れているのが、眉毛とまつげだ。どちらも、顔の中に生えている“毛”という共通点を持ち、故に、ただ色をつければよいという他の部分のメイクと比べ、1ランク上級のテクニックを要する。生まれつき眉毛くっきり、まつげクルリンという恵まれた人以外は、そのテクニック如何で、かなり美人度に差が出るのだ。
メイク上手の方でも、たぶん1度や2度は、眉毛を描き忘れるという失敗を経験したことがあるのではないかと思う。な〜んか、今日の私って寝ぼけた顔してるなあ……と思ったら、眉毛が薄ぼんやりと曖昧なままだったとか、ひどいときには、「今日、化粧してないの?」と、男性にチェックされたりとか。眉毛というのは、そのぐらい顔の印象を大きく左右するわけである。
私の友人で、もともと眉毛がすご〜く薄い子がいるのだが、彼女の場合は、女子高時代に友達から忠告された、
「あんたは、朝起きたら何よりもまず先に、眉毛を描きなさい!」
という言葉を忠実に守り抜いているという話だ。ポケットに常にアイブローペンシルを忍ばせていることは、言うまでもない。
また、眉毛薄い系の友人その二は、小学校のとき保健の先生に、
「心配しなくても大丈夫よ。大きくなったら、お化粧でちゃんと直せるからね」
と優しく慰められて、初めて自分の眉毛が、周囲も心配するほど薄いという事実を自覚したそうだ。本人が心配してないウチから慰められた彼女の立場って、いったい……。
数年前、女子高生の間で、眉毛を上手に描くための型紙みたいなものがブームになったことがある。ぺらぺらのプラスチック製で、いろいろな眉毛の形にくり抜いてあり、それを自分の眉毛にあててアイブローペンシルでぐる〜りとなぞり、あとは中をシャカシャカと塗りつぶせばよいというシロモノだ。ハリウッド女優みたいなグイ〜ンとつり上がった眉から、弓形の優しい眉、すっとまっすぐに伸びたシンプルな眉、はたまた、しっかりくっきりの太い眉まで自由自在。どうりで、当時の渋谷系女子高生は、み〜んな同じ顔をしていた(今でもそっか!)。
確かに左右間違いなく同じ眉毛が描けるし、失敗もないから、なかなかの優れものだとは思うが、なんだか福笑いみたいで、私はどうも好きになれなかった。それに、人間の顔というのは、微妙に左右のバランスが違う。だから、左右全く同じ眉毛にすると、かえって不自然になってしまい、結果、ますます福笑いになってしまうのではないか? 実際、歩く福笑いを多々目撃したこともあるし……。やっぱり、そのへんは、自分の顔をいちばん知り尽くした所有者自身が描くのが、いちばんなじみがよいのではないかと思う。
だったら、一度描いた眉が、そのまま永久保存できたらいいんじゃない?……という発想で登場したのが、アートメイク。眉毛の入れ墨だ。確かに、毎日描く眉毛。うまくいった日はご機嫌だが、失敗するとまた落として描き直すのも面倒なので、1日ブルーな気分で過ごす羽目になる。今日は完璧! の眉は落としてしまうのがもったいない。そうだ! 落ちなきゃいいんじゃん! という話だ。
しかし、これも問題があった。メイクを落とした後のスッピン顔に、眉だけそのままクッキリというのが、これまた異様なのである。ましてやベッドに入ってスヤスヤ眠った穏やかな顔の中で、暗闇に燦然と輝くクッキリ眉毛! というのは、相当怖い。だから、かなり興味はあったが、やはり勇気のいる方法だった。
ところが、技術は進歩するものである。出始めの頃は、見事に「入れました!」という感じにしか入れられなかったアートメイクが、色も濃さも微妙なニュアンスまで調整可能になったのだ。完成型そのままにクッキリ入れるのではなく、ガイドライン的に薄く入れれば、ノーメイクのときにも違和感がないし、メイクするときには、下書きがあるので、とっても簡単、しかも失敗なし! と言うわけである。
この情報を教えてくれたのは、この連載の第22回で紹介した、ネイルアーティストの井上由美さんだった。彼女のサロン『Hans-On』でフェイシャルエステを受けた帰り、ピッカピカの素顔に、ちょいちょいと眉毛だけ描いて帰ろうとした私に、由美さんが声を掛けてきた。正面からジッと私の顔を見つめてひと言。
「小野さん、その眉毛、ちょっとマズイかも!」
どうやら、慌てていい加減に描いたので、左右のバランスがかなりひどかったらしい。修正をしながら、由美さんは、アートメイクを勧めてくれたのだった。由美さん自ら、アメリカで技術の勉強もしてきたそうなので、これは安心。私はさっそく眉を入れてもらうことに決めた。
施術はいたって簡単である。まず、好きな形に眉の下書きをする。これは、プロがちゃんとバランスを見て描いてくれるので、完璧だ。それから、色を決める。私は髪の色に合わせて、ブラウンにした。そして、下書きの上から、先に小さな針の付いたボールペンみたいな機械を使って、色をチクチクと入れていくだけ。と〜っても簡単……ただし……すんごく痛いの!
眉毛のある場所というのは、眼孔の骨の上。ほとんど皮だけのところだ。脂肪のクッションもないから、神経に直接痛みが伝わり、痛いのなんのって。特に眉間に近い部分は文字通り針地獄だった。ジッと我慢していても、知らないウチに涙がぼろぼろ出てくる始末。おまけに、顔の皮膚を刺激されるとくしゃみが出るらしく、途中何度も「あ、くしゃみが!」と叫んで、仰向けのままハクショ〜ン! 真っ白い蝋のような背中に、真っ赤な牡丹の彫り物を入れてもらう緋牡丹のお竜の艶めかしさに比べて、なんと無様でこっ恥ずかしいこと! でも、由美さんいわく、みんな涙目でハクションなんだそうだ。よかった、私だけじゃなくて。
痛みと闘うこと1時間。眉のアートメイクは、思った以上にきれいに仕上がった。1週間ほど、かさぶたのような状態で違和感があるが、その後はうっすらときれいな眉のラインが私のものに! ラインからはみ出た毛を毛抜きで抜いて、メイクするときは、上からアイブローペンシルでサササッとなぞれば出来上がり。これで、眉のメイクはめちゃめちゃ楽になった。1時間の痛みが我慢できる方には、絶対オススメである。2年は持つらしい。
さて、もう一つのポイントであるまつげのほうは、ビューラーテクニックとマスカラが勝負だ。目の幅が大きめの私は、なかなかサイズの合うビューラーがなく、いろいろ試したが、今はシュウ・ウエムラのものを使用中だ。
マスカラは、あの名品「ケラシル」以来、ランコム一筋。「ETERANICILS(エタニシル)」「MAGNIFICILS(マニフィシル)」など、次々に出る新製品を渡り歩き、現在は「AMPLICILS(アンプリシル)」がかなり気に入っている。バチ〜ッと扇のように広がったダイナミックなまつげを作るには、これがいちばん! ビューラーでカールし、一度塗って乾かしてから、再び根本からビューラーでグイ〜ンとカールさせるのがコツである。
こちらも試しに、まつげパーマというのを試してみたが、パーマをかけると、確かにカールは出るが、長さが出ないので、私は自分の腕一本で勝負していく道を選んで、日夜腕を磨き続けている。
さて、今気になっているのが、アイラインのアートメイク。うっすらとラインが入っているだけで、目の存在感が全然違うから、アイラインはめ組の女のマストアイテム。ただ、落ちやすいのが難点なので、落ちないアイラインは非常に魅力ではある。しかし、あの痛さで、しかも眼の際! ちょっと手元が狂えば眼球ひと刺し……おおコワッ! どなたか経験のある方は、是非体験談をお聞かせください。