よりどりみどり〜Life Style Selection〜


遺伝的健康オタク論

健康食品というのは、読んで字のごとく、健康によい食品をいう。私が幼少の頃は、この健康食品なるシロモノは、どちらかというと、かなりうさんくさいイメージがあった。

ローヤルゼリーだの小麦の胚芽だの玄米だの、どれもパッケージからしてババくさく、地味だった。おまけに、体によいとされている割には、医学的な根拠が曖昧でハッキリしない。百貨店の健康食品コーナーは、案内嬢に聞いても見つけ出せないほど、フロアの隅っこのほうにあり、販売員のおばはんは、見るからに口うるさそうな雰囲気を醸し出していて、素人(健康食品にプロも素人もないけど)が踏み込むには、かなりの勇気と気合いが必要であった。

バカにした書き方をしている割に、何でそんな売り場のことまで詳しいかと言うと、ウチの父親が、今で言う『健康オタク』だったからだ。

私が物心ついた頃から、父はどこから聞き込んでくるのか、わけのわからん健康法を始めてはやめ、を繰り返す、懲りない親父だった。特にどこか体が悪いわけでもないのに、なぜそこまで健康に執着するのか、改めて聞いたことはないが、まあ、一つの趣味みたいなものだったのだろう。

母が言うには、私がまだヨチヨチ歩きの頃、突然父が、

「体を鍛える!」

と言い出したのだそうだ。そして、鉄の棒の両脇に大きな石を括り付けた自家製のバーベルを作り、毎晩庭先で持ち上げ始めたのが始まりだったらしい。今みたいに、あちこちにスポーツクラブがある時代だったら簡単な話だが、当時はそんなのないし、バーベルだって、よっぽど専門のスポーツ店にでも行かなきゃ売ってなかった。だから手作りってことなのだが、いったいそれでトレーニングになるのかって話だ。左右の石の重さが同じなわけないから、バランスも悪いだろうし、だいたい危ない。ちなみに、私の父はスポーツマンでも何でもない、ただの教師でした。

それから毎晩、その手作りバーベルを「ヨイショ!」と持ち上げては、ドスン! と下ろして「フ〜〜!」と息を吐く父の声が、庭先から聞こえていたという。その内、鍛える父親の姿に興味をもった3歳の娘が、母親が洋裁で使う50センチ物差しをバーベルの替わりに持ち、「オイッチョ! ブ〜〜! オイッチョ! ブ〜〜!」と言いながら、並んで真似して上げ下げし始めたんだと。そのマンガみたいなチビが、この私である。

例えばテニスやスキーがとってもうまかった父親の影響で、自分も幼い頃からやってましたとか、父の趣味がジャズ鑑賞で、いっつもジャズばっかり聞かされてました、な〜んていうのは、何となくカッコイイ話であるが、物差し持って、並んで「オイッチョ! ブ〜〜!」ってのはどうなんだろう? 

自己流筋トレは意外に効果があったらしい。ただ、お陰で肩が筋肉モリモリになった父は、背広がみんなきつくなってしまい、不経済な体だと母に叱られて、トレーニングは打ち切りになった。

しかし、オタクは懲りない。私が中学生になった頃、今度はわけのわからない健康体操をどこからか教わってきて、寝る前に一人黙々とやり始めた。確かストレッチみたいに、からだをゆっくりと伸ばす体操だったが、体操に入る前に、顔全体を両手の平でこすったり、耳たぶのあたりを指でパチンパチンと刺激するあたりが怪しげだった。これはたぶん、リンパの流れをよくするためで、今、美容通の間でブームのフェイス・マッサージに通じるものだったのだと思うが、当時は私だけでなく、母も妹も「なんじゃ、あれは!」とバカにして無視していた。

健康食品も、なんだかいろいろ手を出してたなあ。生のキャベツがいいとか言って、千切りにしたキャベツを朝晩山盛り食べていたこともあった。とんかつ屋にでも行けば! って話だ。何の味も付いていない、ただの小麦胚芽の粉末(見た目はきなこである)を、食後にスプーン2杯口に入れ、もそもそしたのをお茶で飲み下す、というのは、今でもやっているらしい。この間実家に帰ったら、テーブルの上に、小麦胚芽の入ったびんが置いてあったから。

かつて大ブームとなった「紅茶きのこ」にも、当然手を出した。恥ずかしながら、我が家には、梅酒用のガラス製の広口びんの中で、怪しげな「紅茶きのこ」が培養されていました。「紅茶きのこ」とは、砂糖入りの紅茶に、何やら菌みたいなもの(酢酸菌だったらしい)を入れ、2〜3週間して、表面に怪しい膜が張ってきたら出来上がり、という、実に薄気味悪いものである。やれ胃腸が丈夫になった、高血圧が治った、水虫が完治したなどと週刊誌やテレビでやたらと騒いでいたので、一口飲んでみたことがあるが、あのまずさは一生忘れない。茶色の液体の上に浮かぶクラゲのような物体がキノコだと言うが、私にはカビの王様にしか見えなかった。

その内世間でも、雑菌が含まれていて危険であるとか、お腹をこわすとかいう悪い噂が立ち始めた。と同時に父の情熱も一気に冷め、広口びんは台所の流しの下の奥〜のほうに追いやられて、「紅茶きのこ」は本当にカビだらけになった挙げ句に捨てられた。

そんな数々の健康法を経てきたせいか、父はこれまで大きな病気は全くせず、現在もピンピンしている。今はアガリクスにハマっており、アガリクスさえ飲んでいれば、ガンから腰痛まで治ると盲目的に信じ込み、うれしそうだ。

そして、あれだけ父親をバカにしていた私も、気が付けばちょっとした健康オタクである。ここ数年の健康ブームで、健康をテーマにしたテレビ番組が増え、健康商品やサプリメント、ビタミン、ミネラルに関する情報が、科学的に分析され、説明されるようになった。当然説得力が出てくる。もともとうんちくに弱く、いいと思ったら何でも試さないではいられない性格なので、いろいろ手を出し、あれがいい、これはイマイチ……とやっているウチに、すっかり詳しくなってしまったのだ。

例えば鎮江の香酢は、もともとその独特な味が好きで、料理の隠し味に使っていたのだが、各種アミノ酸の宝庫で、米酢の10倍のアミノ酸を含んでいると知り、餃子もニラまんじゅうも、どっぷり香酢に浸して食べるようになった。悪いけど、『やずや』より早かったぞ。

ご飯は、『縄文米』という、発芽玄米、黒米、赤米、はと麦、胚芽押し麦、ヒエ、アワ、キビ、黒豆、ひよこ豆、レンズ豆、小豆、金時豆、ワイルドライスの14種類の穀類と豆類が混ざったものがお気に入りだ。そのまま炊いたり、白米と半々にして炊いたりしてバリエーションを楽しんでいる。マドンナみたいにマクロビオティクスを実践しているわけではないが、塩を多めに入れて炊いた『縄文米』は、栄養豊富なのはもちろんのこと、噛めばかむほど味が出て、とっても美味しいのだ。確かに日本人はやっぱり真っ白なご飯だ! と思う。でも、ツヤツヤの銀シャリの旨さを知っているからこそ、『縄文米』もまた旨し! なのだ。

この他、ヨーグルトに大麦若葉の粉末を入れ、はちみつで甘みを加えたものも、私の定番だ。ヨーグルトは健康食品の走りだが、これに大麦若葉の粉末を入れると、抹茶味に似て意外に好相性なのである。美味しい上に体によければ、そりゃあ続けたくなるってもんだ。水も、たまたまもらって飲んだコントレックスが私の好みに合っていたので、ミネラルの含有量も多いし、いいかなと思って続けている。

サプリメントは、今、世の中では何でも『CoQ10』と大騒ぎしてるが、『CoQ10』なんて、2年前から飲んでるもんねエ。まだ日本では売っていなかったので、ハワイに行ったときに買いだめしたもんだ。

というわけで、気が付けば自分も、親そっくりの健康オタクになっていたという、心温まる話(?)。昔と違って、血流だとか抗酸化などという理屈まで揃っているから、そのオタク度は、私のほうが高いかもしれない。既に、新しいものも試しているし。

ズバリ言うわよ! 来年あたりはみんな「アルファリポイック酸」と「DMAE」で大騒ぎしてるでしょう、ふっふっふっ……。

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