季節柄だろうか、最近“消臭グッズ”がやたらと目につく。
例えば、汗くささを撃退するデオドラントなんか、テレビのコマーシャルでも「これでもか!」というくらいの勢いだ。そもそもデオドラントとは、自分が臭くて他人様にご迷惑をおかけしてしまうのを防ぐための、いわば恥ずべきアラ隠しの商品なわけである。だから、もうちょっと控えめでいいのではないかと思うのだが、どれもこれも、「私、もう臭くありませ〜〜ん!」と、ハイテンションでやけに脳天気だ。
モッくんがターザンになって脇の下露わに「ア〜ア〜〜〜!」とやると、「汗クサッ!」「汗クサッ!」と動物たちがみな倒れていく。そこでギャッツビーのデオドラント一発!
「ボク、もう汗臭くな〜い!」
これなんか、汗クサッ! と言うより、アホクサッ! である。
得体の知れない臭い鑑定の外人のおばさんが出てきて、女の子の脇の下をクンクン……GOOD! と○印のカードを上げるやつも、リアル過ぎてどうなのよ!
デオドラントではなくお部屋の消臭剤でも、王子様が囚われの姫君を助けに敵陣にひとりさっそうと飛び込むセンチがある。敵をばったばったとなぎ倒し、いざ姫君が監禁されている部屋に飛び込むやいなや、「臭っ! この部屋臭うよ!」と顔をしかめるやつだ。愛する王子に、いきなり「臭っ!」とか言われちゃうお姫様なんて、自害しても不思議じゃないシチュエーションだと思う。
「もう汗くさくな〜い!」とヘラヘラして言うのも、他人にいきなり「臭っ!」と言われるのも、どちらも嫌悪と羞恥というものに対するデリカシーが少々足りない気がしてならない。
それに引き替え、そのへんの微妙な心の機微ってやつが出ていて、好きだなあと思うのが、布にしみ込んだ臭いを消す「ファブリーズ」のセンチである・
ご近所の仲良し奥様3人が、お部屋のニオイについて語り合っている。
「じゃあ、みんなで遠慮なく言い合ってみる?」
「うん、そうね、そうね!」
自分の家のニオイはなかなか気がつかないので、それぞれの家を回って、正直に臭うかどうか言い合おう……ということなのだ。みんなでにこやかにそれぞれの家へ。
「なんか、臭いかも」
「あ、これ古い油のニオイ!」
忌憚なく意見を言い合い、「それじゃあ、また後でね」と別れる仲良し3人……のはずが、3人とも目が何気につり上がっていたりする。ウハハハハ! いいぞ、いいぞ! 「あんなにハッキリ言わなくたっていいじゃない!」という心のつぶやきが聞こえて来そうな、よそよそしい空気がたまらないね。そうそう、そういうもんだよね、女っていうのは。何でも言って! なんて言ったって、ハッキリ「臭い」と言われると、失礼しちゃうわね! ってことになるのだよ。でもそれが、ファブリーズのお陰で一件落着。
「あら、ニオイが消えてる〜〜! オホホホ」
で、いつもの楽しいティータイムが始まるのだった、めでたし、めでたし! この、プライドと、でも欠点は正したいという向上心の狭間に起こる、何とも人間くさいドラマが、私は大好き。
まあ、センチはともかくとして、人の欠点を注意してあげるというのは、意外と難しいものだ。それも、“ニオイ”という、かなりデリケートな部分の話になればよけいにである。
つい最近、知り合いにかなりこの“ニオイ”のキツイ女の子がいて、いったいどうやって教えたらよいか、ということで親友のY子と二人でかなり悩んだことがあった。
「いくら何でも“あなた、ちょっと臭いわよ”、なんて言えないよね」
「“この季節、汗くさくなるといけないから私はこれ塗ってるの。あなたもどう?”とか言ってさり気なくデオドラントを渡すってどう?」
「あ、それ絶対不自然! それに、渡されても使わないかもよ」
「しかしさあ、周りの誰かが今まで注意しなかったのかねえ? 冷たいよね」
自分たちもできずに困ってるくせに、ついに他人のせいにし始める私たち。
「これが男だったら、私は言えるな。“ちょっとあんた、臭いわよ〜。何とかしたら?”ってハッキリとね!」
「わかんないよ。最近の若い男の子は、そういうこと言われると、すごく傷つくらしいから」
「ええ! そうなの? 男のくせしてそんなことで傷ついちゃうわけ? どうしようもないね、最近の若者は!」
と、ついには若者批判で話の焦点がずれ始め、結局どう言ったらうまく伝えられるか、いまだに悩んでいる有様だ。どなたかよい方法をご存知の方は、教えていただきたいものである。
そういう私はそんなに汗かきなほうではないので、デオドラントの世話になることはあまりないが、部屋のニオイはかなり気にしている。誰でも経験があると思うが、家によってニオイは全然違うものだ。自分の家に帰ってきた瞬間にホッとするのも、きっと慣れ親しんだニオイがあるからだろう。ただ、ずっと家にいるとそんなに気にならないのだが、外から帰って玄関の扉を開けた瞬間に、昼間パスタを作ったときのニンニクのニオイや、出し忘れたゴミのかすかなニオイなんかがすると、ヤバイ! と思う。消臭芳香剤というのが好きではないので、そういうときは、ラベンダーのアロマオイルを焚くことにしている。
ニオイの出ることのいちばん多いキッチンでは、ドイツ製のステンレスの円盤みたいなものがなかなか役立っている。4年ぐらい前に買ったもので、現在は「スメルキラー」なんていう商品名で売られているらしい。本当は何て言うのか定かではない。ステンレス合金を石けんみたいな平べったい円盤形にしたもので、水に触れると触媒作用で空気中のニオイ分子を分解して消臭するという。これ自体ニオイがするとか、何かが溶け出すわけではないのだが、実際にタマネギや魚臭くなった手でこのステンレス円盤を石けんみたいにくるくるやりながら水で洗うと、本当にニオイが落ちるからビックリである。これぞ化学の力! また、お皿に少し水を入れて、この円盤を浸しておくと、部屋の消臭にもなるのだ。直径たった8センチの円盤で、20畳ぐらいOKというのだから、この円盤から電子みたいな奴らがブワ〜ッと飛び出す様が肉眼で見れたら、感動するだろうなあ。
トイレには、これまたスゴイ化学の力の消臭技モノを見つけた。今度は光触媒ですぞ! トイレの芳香剤ってヤツも苦手な私は、ずっとポプリを置いたりしていたのだが、トイレは狭いので、最初はニオイが強すぎるということと、10日ぐらいで香りがなくなってしまうので、しょっちゅう買い換えなきゃならないのが問題だった。
そんなとき、インターネットで見つけたのが、「清潔いちばん」という水洗トイレのタンクに沈めて使うものだ。中に小さなチタンボールとセラミックボールが入っていて、それが光触媒効果で、タンク内の水を除菌、消臭、浄化して洗浄能力を高め、それをトイレに流すことによって、便器の汚れも防ぎ、大気まで浄化してトイレの中の消臭もしてくれるという。こいつもまた触媒作用なので、チタンボールが減ることもなく、半永久的に使用できるというのもうれしい。
さっそく買ってみたが、その効果は抜群であった。消臭は申し分ないし、なんたって便器が汚れない。水垢すら付かない。ホント、1か月以上全く掃除しなくたって、ピッカピカ、ツルッツルなのである。これもまた、OHラジカルとかいうスゴイ奴がブワ〜ッと飛び出して、水中や大気中の不純物を分解している様を、この目で確かめたいものである。
ところで、この光触媒、例えばチタンでアクセサリーなんかを作って、これを身につけると、嫌なニオイが消える……なんていうのはできないのだろうか? それができたら、ニオイが原因の人間関係のトラブルも減るんじゃないかと思うのだが……。
う〜ん、コミュニケーションの煩わしさから逃れるために、化学の力なんかに頼ってるようじゃ、人間まだまだ未熟ですかな!
例えば、汗くささを撃退するデオドラントなんか、テレビのコマーシャルでも「これでもか!」というくらいの勢いだ。そもそもデオドラントとは、自分が臭くて他人様にご迷惑をおかけしてしまうのを防ぐための、いわば恥ずべきアラ隠しの商品なわけである。だから、もうちょっと控えめでいいのではないかと思うのだが、どれもこれも、「私、もう臭くありませ〜〜ん!」と、ハイテンションでやけに脳天気だ。
モッくんがターザンになって脇の下露わに「ア〜ア〜〜〜!」とやると、「汗クサッ!」「汗クサッ!」と動物たちがみな倒れていく。そこでギャッツビーのデオドラント一発!
「ボク、もう汗臭くな〜い!」
これなんか、汗クサッ! と言うより、アホクサッ! である。
得体の知れない臭い鑑定の外人のおばさんが出てきて、女の子の脇の下をクンクン……GOOD! と○印のカードを上げるやつも、リアル過ぎてどうなのよ!
デオドラントではなくお部屋の消臭剤でも、王子様が囚われの姫君を助けに敵陣にひとりさっそうと飛び込むセンチがある。敵をばったばったとなぎ倒し、いざ姫君が監禁されている部屋に飛び込むやいなや、「臭っ! この部屋臭うよ!」と顔をしかめるやつだ。愛する王子に、いきなり「臭っ!」とか言われちゃうお姫様なんて、自害しても不思議じゃないシチュエーションだと思う。
「もう汗くさくな〜い!」とヘラヘラして言うのも、他人にいきなり「臭っ!」と言われるのも、どちらも嫌悪と羞恥というものに対するデリカシーが少々足りない気がしてならない。
それに引き替え、そのへんの微妙な心の機微ってやつが出ていて、好きだなあと思うのが、布にしみ込んだ臭いを消す「ファブリーズ」のセンチである・
ご近所の仲良し奥様3人が、お部屋のニオイについて語り合っている。
「じゃあ、みんなで遠慮なく言い合ってみる?」
「うん、そうね、そうね!」
自分の家のニオイはなかなか気がつかないので、それぞれの家を回って、正直に臭うかどうか言い合おう……ということなのだ。みんなでにこやかにそれぞれの家へ。
「なんか、臭いかも」
「あ、これ古い油のニオイ!」
忌憚なく意見を言い合い、「それじゃあ、また後でね」と別れる仲良し3人……のはずが、3人とも目が何気につり上がっていたりする。ウハハハハ! いいぞ、いいぞ! 「あんなにハッキリ言わなくたっていいじゃない!」という心のつぶやきが聞こえて来そうな、よそよそしい空気がたまらないね。そうそう、そういうもんだよね、女っていうのは。何でも言って! なんて言ったって、ハッキリ「臭い」と言われると、失礼しちゃうわね! ってことになるのだよ。でもそれが、ファブリーズのお陰で一件落着。
「あら、ニオイが消えてる〜〜! オホホホ」
で、いつもの楽しいティータイムが始まるのだった、めでたし、めでたし! この、プライドと、でも欠点は正したいという向上心の狭間に起こる、何とも人間くさいドラマが、私は大好き。
まあ、センチはともかくとして、人の欠点を注意してあげるというのは、意外と難しいものだ。それも、“ニオイ”という、かなりデリケートな部分の話になればよけいにである。
つい最近、知り合いにかなりこの“ニオイ”のキツイ女の子がいて、いったいどうやって教えたらよいか、ということで親友のY子と二人でかなり悩んだことがあった。
「いくら何でも“あなた、ちょっと臭いわよ”、なんて言えないよね」
「“この季節、汗くさくなるといけないから私はこれ塗ってるの。あなたもどう?”とか言ってさり気なくデオドラントを渡すってどう?」
「あ、それ絶対不自然! それに、渡されても使わないかもよ」
「しかしさあ、周りの誰かが今まで注意しなかったのかねえ? 冷たいよね」
自分たちもできずに困ってるくせに、ついに他人のせいにし始める私たち。
「これが男だったら、私は言えるな。“ちょっとあんた、臭いわよ〜。何とかしたら?”ってハッキリとね!」
「わかんないよ。最近の若い男の子は、そういうこと言われると、すごく傷つくらしいから」
「ええ! そうなの? 男のくせしてそんなことで傷ついちゃうわけ? どうしようもないね、最近の若者は!」
と、ついには若者批判で話の焦点がずれ始め、結局どう言ったらうまく伝えられるか、いまだに悩んでいる有様だ。どなたかよい方法をご存知の方は、教えていただきたいものである。
そういう私はそんなに汗かきなほうではないので、デオドラントの世話になることはあまりないが、部屋のニオイはかなり気にしている。誰でも経験があると思うが、家によってニオイは全然違うものだ。自分の家に帰ってきた瞬間にホッとするのも、きっと慣れ親しんだニオイがあるからだろう。ただ、ずっと家にいるとそんなに気にならないのだが、外から帰って玄関の扉を開けた瞬間に、昼間パスタを作ったときのニンニクのニオイや、出し忘れたゴミのかすかなニオイなんかがすると、ヤバイ! と思う。消臭芳香剤というのが好きではないので、そういうときは、ラベンダーのアロマオイルを焚くことにしている。
ニオイの出ることのいちばん多いキッチンでは、ドイツ製のステンレスの円盤みたいなものがなかなか役立っている。4年ぐらい前に買ったもので、現在は「スメルキラー」なんていう商品名で売られているらしい。本当は何て言うのか定かではない。ステンレス合金を石けんみたいな平べったい円盤形にしたもので、水に触れると触媒作用で空気中のニオイ分子を分解して消臭するという。これ自体ニオイがするとか、何かが溶け出すわけではないのだが、実際にタマネギや魚臭くなった手でこのステンレス円盤を石けんみたいにくるくるやりながら水で洗うと、本当にニオイが落ちるからビックリである。これぞ化学の力! また、お皿に少し水を入れて、この円盤を浸しておくと、部屋の消臭にもなるのだ。直径たった8センチの円盤で、20畳ぐらいOKというのだから、この円盤から電子みたいな奴らがブワ〜ッと飛び出す様が肉眼で見れたら、感動するだろうなあ。
トイレには、これまたスゴイ化学の力の消臭技モノを見つけた。今度は光触媒ですぞ! トイレの芳香剤ってヤツも苦手な私は、ずっとポプリを置いたりしていたのだが、トイレは狭いので、最初はニオイが強すぎるということと、10日ぐらいで香りがなくなってしまうので、しょっちゅう買い換えなきゃならないのが問題だった。
そんなとき、インターネットで見つけたのが、「清潔いちばん」という水洗トイレのタンクに沈めて使うものだ。中に小さなチタンボールとセラミックボールが入っていて、それが光触媒効果で、タンク内の水を除菌、消臭、浄化して洗浄能力を高め、それをトイレに流すことによって、便器の汚れも防ぎ、大気まで浄化してトイレの中の消臭もしてくれるという。こいつもまた触媒作用なので、チタンボールが減ることもなく、半永久的に使用できるというのもうれしい。
さっそく買ってみたが、その効果は抜群であった。消臭は申し分ないし、なんたって便器が汚れない。水垢すら付かない。ホント、1か月以上全く掃除しなくたって、ピッカピカ、ツルッツルなのである。これもまた、OHラジカルとかいうスゴイ奴がブワ〜ッと飛び出して、水中や大気中の不純物を分解している様を、この目で確かめたいものである。
ところで、この光触媒、例えばチタンでアクセサリーなんかを作って、これを身につけると、嫌なニオイが消える……なんていうのはできないのだろうか? それができたら、ニオイが原因の人間関係のトラブルも減るんじゃないかと思うのだが……。
う〜ん、コミュニケーションの煩わしさから逃れるために、化学の力なんかに頼ってるようじゃ、人間まだまだ未熟ですかな!