ソムリエ試験に合格した女性に贈った、ワインクーラーから花があふれ出るイメージのアレンジ。
フローラルデザイナーとして花と触れながらいつも思うのは“花にはなんて不思議な力があるのだろう”ということです。花はすぐに何かの役に立つとか、いただいて栄養になったり美味しいというものではないですが、見た瞬間に美しいと感じ心が癒されたり、元気が出たり、勇気が出たり……枯れてしまう瞬間は寂しいですし、形として残るものではありませんが、美しかった時の姿を鮮明に覚えているから不思議なものです。
よくギフトとしてアレンジメントや花束のご依頼を受けます。お祝いの花、お悔やみの花、母の日やお誕生日、そしてお見舞の花。花を贈るというのは“花の不思議な力”も借りて、送り主の気持ちをアレンジや花束という形にして伝えることだと思っています。だから、その気持ちが上手く伝わるよう託された私の責任は重大なのです。
依頼を受けると先ず私なりに色々と考えます。例えばご自宅に届ける場合は、お家の広さに準じた大きさにしたほうがよいでしょうし、おそらく持ちのよいお花を選んだほうが長く楽しんでいただけるでしょう。逆に個展などへのお祝い花の場合は、会期が短ければ、その期間中に精一杯咲いてくれるお花を選ぼうとか……。そう、まるでオーダードレスを作るかのように、依頼主にアドバイスしながら、どういうアレンジや花束にするかを決めていくのです。
ある時、ソムリエ試験に合格した女性に贈る花ということでアレンジを依頼されました。長い間勉強して念願のソムリエ試験に合格。送り主の希望は、できればワインを連想させるもので、お祝いの気持ちが届くようにということのみでした。というわけで、ワインクーラーから花があふれ出るイメージのアレンジを作ったのです。
夏のご挨拶にと承ったデンファレやアンスリウムを入れたアレンジ。
またある時は、バレエ「くるみ割り人形」の主役を踊る女性に贈る花束という依頼が。きっと沢山の花がその方に贈られると思うので、何か印象に残るものをということだけが依頼主のご希望でした。色々考えた結果その演目を踊った、その日を思い出していただける花束だったらよいのでは、ということで花束の中にリボンをあしらった「くるみ」を入れることを提案。衣装の色にもピッタリの花束にしてお届けしました。
そして、夏のご挨拶にと承ったデンファレやアンスリウムを入れたアレンジ。毎年同じ送り先にということで、お中元とお歳暮のお花を頼んでくださる方からのものです。もちろん私は送り先の方々を存じていませんでしたが、こういうご縁で年に2回お花を届けた時に、その方たちと必ずお会いできると、なんとなく嬉しくなります。特別な言葉を交わすわけではありませんが、“花の不思議な力”は様々な方とのご縁にもつながるようです。
最後にもうひとつエピソードを。以前お見舞のお花を病院に届けたときのこと、後日その方からお連絡がありました。アレンジしたのは優しい色合いの花でした。「美しいお花のお陰で、贈ってくださった方の気持ちを感じ少し元気が出ました。お見舞にお花を贈る意味がわかったような気がします」と。この言葉を聞いて、お見舞にお花を贈る意味を私も改めて気付きました。これも“花の不思議な力”があったからこそかもしれませんね。
〜花を贈る時のワンポイントアドバイス〜
ご自身と感性の合う花屋さんやフローラルデザイナーに、お願いできるのがいちばんですね。さあ、このお店(この方)にお願いしようと決めたら、用途はもちろんのこと、花を贈る理由や送り先のことを差し支えない範囲でできるだけ詳しく伝えることも大切。そうするとデザイナーも色々とアイディアが広がると思います。お花に関して具体的な希望があればそれもあわせて伝えてよいと思いますが、お花の種類などを細かく指定してしまうと、デザインやお花の選択の幅が広がりにくいので、例えば「バラを入れて可憐な感じに」とか「有名人でいえば○○さんみたいな雰囲気で」等々、形容詞も含めて仕上がりのイメージを伝えると、より一層選択の幅も広がると思います。
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