慌ただしい年末まであと数日となりました。今年のクリスマスは、いかがお過ごしでしたでしょうか。街を美しく彩る、クリスマスディスプレイ、そして、花屋さんの店内などご覧になりましたでしょうか。
11月下旬頃から、花屋さんではクリスマスらしいグリーンが、たくさんみられるようになります。モミ、ヒバ、ヒムロスギ、ヒイラギ等々。その中でも、クリスマスの代表的なグリーンといえば、モミ。モミの香りを感じるだけで、クリスマスがすぐ近くまで訪れていることが、告げられているかのようです。
モミやヒムロスギは、この季節ならではの、長年の定番グリーン。昨年のクリスマス特別レッスンでも、モミを使ったリースをお教えし、また、このアトリエにも、モミでつくったリースに、パープル系のオーナメントをつけて飾りました。香りだけでなく、存在感もあるので、クリスマスらしくて素敵なのですが、じつは、毎年モミでは少し変化がないかしら、と思っていたところでした。
スモーキーでちょっと甘めな大人クリスマス
そんな矢先に、この季節にぴったりの、モミとはまた別な印象の、雰囲気あるグリーンをみつけました。その名も“ブルーアイス”。ヒノキ科イトスギ属の針葉樹で、色は少し白っぽい、シルバー系のグリーンです。そして、細い繊細な枝は、まるで樹氷を思わせるほどです。数年前から市場で見ていて、注目はしていたのですが、値段などの関係から、使ってみるまでにはいたりませんでした。ところが、今年は少し買いやすくなり、リースやアレンジに大活躍したのです。そして、私以外のフラワーデザイナーの方々も、似たようなことを考えたのでしょうか。今年の市場では、ブルーアイスを購入する方が多かったような気がしています。濃い緑のグリーンもクリスマスらしくてよいのですが、人間とは勝手なもので、たまには違う雰囲気のものを使いたくなるみたいです。そして、シルバー系のグリーンが大好きな私としては、とてもよいものに、めぐり会えた気がしてなりません。
今年のクリスマスは、私なりに、“スモーキーでちょっと甘めな大人クリスマス”をテーマとしていて、花は淡いピンク系や、ベージュがかったピンク系で、と思っていました。この色であれば、濃いグリーンよりも、シルバー系グリーンのほうが相性がよいはず。というわけで、ブルーアイスをメインのグリーンとし、クリスマス特別レッスンのリースやアレンジ、また、ギフト等のクリスマスアレンジにも取り入れ、思うようなデザインのものをつくることができたと思っています。海外に送ったクリスマスカードにも、ブルーアイスとピンク系の花をあわせた、アレンジの写真を添えました。
ブルーアイスの葉をメインにしたリース
また、アトリエのリースは、昨年同様、レッスン分のブルーアイスが足りなくなるといけないと思い、生徒さんが使いきらずに残した、ささやかな葉を、少しずつ集めてつくりました。葉の美しさをみせたかったので、飾りは、色々な種類を入れず、1種類だけシンプルなオーナメントを飾っていたのですが、リースをつくって数週間後、試しに花を取り入れてみました。じつは、ある会社の応接室に飾っていた、深紅のアマリリス一輪の花びらが、2枚ほど散ってしまい、その一輪は捨ててしまおうかと思ったのですが、ふと見た瞬間「もしかしてリースに取り入れられるかもしれない」というアイディアが沸いてきました。アマリリスの花びらが2枚落ちて、平面的な形になり、よくいえば斬新な感じで、「これは、何の花かしら?」という、ある種、人目を惹く印象!? になったのでは、と思っています。真っ赤な花には、濃い緑のグリーンのほうが相性がよいと思っていましたが、シルバー系のグリーンとの相性もなかなかのようです。短く折れてしまったバラもあわせて、今年も「残りもの?」でつくったリースの完成です。そうしてつくられたリースも、クリスマスまでの数日間、今度は白い花とあわせて、北欧を思わせるリースに変身させ、ブルーアイスと、様々な花や、オーナメントの組み合わせを楽しみました。
さて、クリスマスを終えると、いよいよ年末。今年も印象に残った、たくさんのでき事がありましたが、その中で、大変うれしかったことのひとつが、このクリスマスギフトの時期にありました。
名刺代わりに毎年つくっているポストカード
私は、毎年、名刺代わりとして、私が写したアレンジ写真のポストカードをつくっています。これは、クリスマスカードとして、取引先の方にお送りしたり、またお花を頼んでくださったお客様、そして、お花のお届け先の方にも、ご挨拶がてら、お送りしたりしています。お届け先の方にお送りするのは、どうしようかしら、と少々迷ったりする場合もあるのですが、できる限りお出ししていました。
12月のはじめ、ある方から「クリスマスのお花を依頼したい」というお電話をいただきました。お名前を伺ったところ、存じ上げない方でしたので「どなたかのご紹介でしょうか?」とお尋ねしたところ、「以前そちらのクリスマスアレンジをうけ取ったことがあり、とても素敵だったので、ぜひ依頼したいと思いまして……」というお答えでした。
そして、その方が、ご依頼内容のご相談にいらっしゃることになり、色々とお話していくと、お花が届いたのは、約10年前の今頃のでき事だったこと、そして、その時のクリスマスアレンジは、その方のお母様宛てに届いたものだったということ、その後、お届け先の方宛として、私がお送りしていたポストカードを10年間、大切に保管してくださっていて、今回のご依頼につながったことがわかったのです。
お届け先の方にもポストカードをお出しするのは、なんとなく、こちらの宣伝目的のようで、受け取った方はどの様な気持ちがするのだろうと、本当に迷っていた時期もあったのですが、そうして大切にしてくださっていたことがわかり、感無量でした。もちろん、みなさんが同じ考え方ではないと思うので、違う反応の方もいらっしゃることと思います。でも、12月近くになって、ちょうど今年も、冬のグリーティング切手を用意し、ポストカードをお出ししようと思っていた矢先に、この上もないうれしいでき事に出会え、今年も、お一人お一人のことを思い浮かべながら、一言ずつメッセージをお書きしました。
そして、こうしてめぐり会えた心温まる出会いを思いながら、この慌ただしい年末を、花の不思議な力もかりて、充実感たっぷりに過ごすことができています。
みなさまも、今年1年めぐり会った数々のでき事を思い出しながら、どうぞよいお年をお迎えください。
〜お花を依頼する際のワンポイントアドバイス〜
特にこの季節は、みなさんも、花屋さんなどでアレンジや花束を依頼される場合があると思います。今回書かせていただいたように、花屋さんから届いたものが気に入って、そのお店に依頼をしたいのであれば、そのことも必ず伝えるとよいのではないでしょうか。どういう雰囲気のものを贈られて、依頼にいたったかということがわかると、花屋さんも、その方の好みを把握しやすいので、好みに近いものをつくっていただける可能性が高いと思いますよ。
これからの寒い季節は、春のかわいい切り花が多く、お花の保ちもよいので、バレンタインやホワイトデー、そして3月の卒業シーズンなどには、お花を買うことも多いですよね。そんなとき、なるべく希望のものをつくっていただけるように、できるだけわかりやすく好みを伝える、ということも大切ですね。