Kimono Master 山龍の和-ism指南

Kimono Master 山龍
Kimono Master 山龍

第15回 Party! Party! Party!

キーワードは光り物

忘年会にクリスマス・パーティ、新年会と、宴会&パーティが目白押しの季節となった。リッツカールトン、ペニンシュラと、高級ホテルが軒並みオープンした今年は、華やかなレセプションやパーティの招待状があちこちで飛び交い、気分が高揚する機会が何かと多い。

パーティといえば、間違いなく着物の出番である。

思えば1年前、初めて着物なるものを仕立てた私は、年末年始の社交場で着物姿を披露し、注目の的であった。“着物はパワードレス”と、常日頃山龍がいっているが、まさに着物は女っぷりと品格を数段アップさせる力がある。しかも、それまでまったく着物のイメージがなかった私がいきなり着物! なのだから、それだけで話題の中心だった。

しかし、今年はちとわけが違う。

かなり着物姿が定着してしまい、ただ着物を着ているだけでは、周りが許してくれないのだ。いつもの着物じゃ期待を裏切るし(って、誰が期待してるんじゃ? という話ですが)、だからって、パーティごとに着物を新調する財力はない。第一、山龍が提唱する着物は、都会の街並みに映える着物であり、シャンデリアに映える着物ではないのである。それに賛同して着物ライフに突入した私としては、百花繚乱のThe着物は絶対に着たくない。さてどうしたものか……?

「パーティの着物いうと、すぐに華やかな柄やら、赤に橙、黄色に緑と派手な色を着たがるんやけど、それで艶やかになるかいうと、単に派手なだけ。そんなん着ても、着物を知らん人から見たら、みんな同じに見えてしまうんよ」

では、パーティで素敵に見える着物とは、いったいどういうものなのだろう?

「大事なのは生地の光沢やな。無地に近いシンプルな着物でも、光沢があるだけで艶やかに見えるから」

山龍いわく、光沢のある着物とは、繻子(しゅす)地のものなのだそうだ。洋服でいうと、サテン地である。つまりは、上質のシルクサテンということ。そりゃあ、ドレスでも最高に艶やかな素材だ。着物でもドレスでも、艶やかさを求めると、行き着くところは素材になるということだろう。

「で、ドレスにアクセサリーを加えるように、顔の近くに花柄なんかが付いとる着物でもエエ思うよ。僕はあんまり好きくないけど(笑)。衿にスパンコールが付いてたり、伊達襟付けたり、付け袖したりするのも、パーティならOK! エエんちゃう!」

非日常の場であるパーティ会場での装いに関しては、山龍も非常に寛大なのである。ま、ちょっと投げやりな気もしないではありませんが……。

プラチナが糸になる?

ついでなので、着物の装いパーティ編の技を聞いておこう。

「ま、無地の繻子地の着物を1枚作ったら、あとは小物で勝負やな。パーティにおいては、着物でも洋服でも、大事にすべきは小物!」

シンプルなドレスに、ゴージャスなアクセサリーを一つ付けて勝負するように、着物でも、例えばバッグに凝って、トータルコーディネイトで華やかさを出すという方法があるという。

ドレスに光り輝く大粒の宝石という決め技があるように、着物には、金糸やプラチナ糸という、それだけでゴージャスな素材があるのをご存知だろうか?

金糸といっても、金がそのまま糸になるわけではない。金を叩いて薄く伸ばして金箔にする。三椏和紙(みつまたわし)に漆(うるし)やにかわを塗り、そこに金箔を貼った後、麺を切るように細く切る。それを絹糸に螺旋状に巻き付けたものが金糸だ。プラチナ糸も同じで、プラチナ箔を三椏和紙に貼ったものを切って、絹糸に巻き付けて作る。

「箔はピラピラやから、和紙に貼らんと巻けんのよ。貼るのに漆やにかわを使うのは、乾いたとき、堅くなるから。他の接着剤やらは、乾いてもやらかいから、弾力があって、貼った金箔やプラチナ箔にキズが出てしまうねん」

何やらテクニカルな話になってきたが、漆やにかわは乾くとガラスのごとく堅くなるので、貼った箔がへこむことがなく、キズが出ないということらしい。

そうして作られた金糸やプラチナ糸で織った帯などは、金やプラチナがそのままの存在感で輝いているのだから、それはそれはゴージャスである。もちろん、お値段もゴージャス! 100万円は軽く超えるので、簡単には手がでない。ダメじゃん!

「でも、プラチナ糸を織った生地で作ったバッグもあるで。パーティにはぴったりちゃう?」

プラチナ糸で織った生地で作られたバッグ。ご予算のある方は、草履も買っておけば、完璧ですね。
プラチナ糸で織った生地で作られたバッグ。ご予算のある方は、草履も買っておけば、完璧ですね。
アップで見ると、微妙な織り方の違いがよくわかる。色の濃いところが、プラチナ箔を和紙に貼って裁断したままのものを織り込んだ部分。
アップで見ると、微妙な織り方の違いがよくわかる。色の濃いところが、プラチナ箔を和紙に貼って裁断したままのものを織り込んだ部分。
それを早くいってください!

山龍オススメのプラチナ糸で織った生地のバッグは、お値段にして10万円ちょっと。その存在感と、パーティ会場での演出効果を考えれば、決して高くはない。しかも、プラチナ糸にする前の、和紙に貼って裁断した状態のままのものを織った部分とと、糸にしたものを織った部分を組み合わせることによって、織り地に何ともいえない表情がある、かなりの優れものである。メッキなどではとうてい出せない、織物故の陰影が目を惹く。

「アクセントとして、アットランダムに横糸に一段金糸を入れることで、メリハリをつけてあんねん」

倍率のものすごく高い虫眼鏡で見なければわからないような技で織ってあるこの技術こそが、日本独特の織物ならではの素晴らしさ。プラチナ製だからということではなく、金属を糸にし、それが織物となっているところにこそ、注目したい。

「もっと専門的なことをいうと、着物地が3.3センチの間に横糸が40本、帯で60本なのに対して、120本入ってんねん。それだけビシッと隙間なく糸が詰まってるから、汚れが隙間に入らない。だから、コーヒーこぼしても、拭けば大丈夫」

糸とはいえ、表面に露出している部分は金属100%なのだから、丈夫なのである。

プラチナ糸の綴れ織りに込められた和の技と、幾重にも重なった糸から生まれる、上質の輝き、気品。受け売りながら、「プラチナ糸ってね……」と、未知なる話題を提供できるおまけも付いて、プラチナ糸織りのパーティバッグは威力絶大。

さあ、みなさん! 和の輝きを纏って、いざパーティへGO!

(2007.12.13)