パリのメトロ(地下鉄)は、便利だけれど、とても乗り心地が悪い。運転が荒いので、メトロに乗っている間中、私は力一杯、支え用のパイプを握りしめていなければならない。さもないと、簡単に転んでしまう。

車両はとても狭い。なので入り口近辺の椅子は、折りたたみ式になっていて混んでくると、その席に座っている人たちは、暗黙のうちに立ち上がってスペースをつくる。するとバネ式の椅子がはねあがって、自然に折りたたまれるようになっているのだ。

ところが、そのバネが強いので、だれかが立ち上がる度に、バッタン! という大きな音がして、その音の激しさに、私は毎回、うわっ! と驚いてしまう。

パリ人はメトロの車両に乗り降りする他人に、ほとんど注意を払わないので、車両の入り口近辺に、知らん顔でどーんと立っている人が多い。そんな彼らの態度を、中国に1年以上滞在経験のあるジェフは「とても中国人に似てるね」といった。

ある日なにげなく、ホームに入ってくる電車をみていたら、運転手の服装はユニフォームではなく、とてもカジュアルな私服で、彼らは肘をついたり、とても疲れたような不機嫌そうな顔で、運転していた。

最後方の車両に、車掌はいないし、ホームにだって駅員なんていない。切符が必要なのは、入る時だけだし、そこにも駅員がいないので、入り口を飛び越えたり、二人連なって入ったりする、無賃乗車がとても多い。

今日もそのメトロに乗って、バスティーユ駅近くのOpera Bastilleに、チケットがすでに完売されているのを承知の上でバレエを見に行った。私は友だちと3人で、会場入り口で、開演間際に、わけありで手持ちのチケットを売りたい人から、手に入れることにしたのだ。

雨の木曜日のせいか、席はバラバラだったけど、私たちはなんの問題もなくチケットを手に入れ(ほんとうに格安だった)すばらしいホールに、満足しながら開演にのぞんだ。すべて順調、なんとラッキーなことか。でも始まってびっくり。それは、バレエでなく、なんとオペラだった。

(写真解説)
上段:パリのメトロ
中段:メトロの改札口
下段:メトロメトロの入り口 place de la Bastille