リビングの広い部屋に引っ越したら、絶対にアルフレックスの「Aソファ」を買おう!
……もう10年以上前からそう決めていた。
「Aソファ」と言えば、イタリアのアルフレックス社の顔のようなもの。定番中の定番である。同じアルフレックスの定番に「マレンコ」という、コロンとしたソファがあるのだけれど、たぶん、「Aソファ」のほうが、圧倒的に日本人には支持されていると思う。シンプルで、どんな部屋にも合うデザインでありながら、ちょっとした曲線や角度に、計算し尽くされた巧みの技がある。クッションも羽毛が使われていて、そのフカフカさときたら、それこそ夢心地。しかも、ものすごい種類のファブリックから、好きなものをチョイスできるという、セミオーダーメイドがまたいい。
同じイタリアのモダン家具メーカーにカッシーナがあるが、カッシーナは私にはちょっとクールすぎる。布や木の暖かみが何気なく生きているアルフレックスのほうが、ピタッとハマる気がするのだ。
というわけで、5年前にエイヤッ! っとマンションを購入したとき、真っ先に買ったのが、「Aソファ」だった。
まずは、カタログを手に入れて、サイズを検討する。いくつかのパーツがあり、それの組み合わせで、普通の長いすタイプからL字型、U字型とレイアウトできるようになっているのだ。とりあえずは、シンプルな長いすタイプで、と思ったのだが、左にアームが来る半身のパーツで既に幅が1メートルを超えている。右にアームがあるのと合わせて2メートル30センチ弱。でか〜い! おまけに奥行きが95センチときた。こりゃあ、ちょっとしたベッドじゃない! それまで、デパートの家具売り場などで何度も見ていたのだが、まさかこんなに巨大なソファだとは気づかなかった。広いスペースで見ると、大きさの感覚が違うからだろう。
さっそく、部屋の間取り図を取り出して検討。予定していたスペースには充分収まりそうだが、いったい部屋の中での存在感はいかがなものか? 色の付いた紙を持ってきて、間取り図の縮尺に比例した、Aソファモデルをハサミでチョキチョキ切り抜き、図面のリビングに置いてみる。うん、これなら行けそうだ! あとはファブリックだ。
ファブリックの色によって、ソファの雰囲気、部屋の雰囲気はかなり変わる。かといって、サンプル生地をながめていても、実際にこのバカでかい「Aソファ」に変身したとき、いかなる表情になるのかは、なかなかイメージしにくい。こういうことは、ハッキリと確認しないと行動に起こせない性格の私は、すぐにアルフレックスのショールームに出向いた。ショールームがたまたま新居と同じ恵比寿にあったのはラッキーだった。
ショールームには、アルフレックスの代表作のほとんどが展示されていた。「Aソファ」の隣には、「Aソファミディアム」という、一回りコンパクトサイズのものもあり、あまりのバカでかさに驚いたばかりの私は、ちょっと気持ちが動いた。しかし、座り比べてみると、やっぱり圧倒的に「Aソファ」のほうが座り心地がいい。「Aソファミディアム」が、腰を掛けるという表現だとしたら、「Aソファ」は、体を預けるという感じ。「Aソファミディアム」が、ソファに身を委ねるだとしたら、「Aソファ」は、ソファに抱かれるという感じ。これで迷いは吹き飛んだ。
ファブリックもさすがショールーム。ちっぽけなスワッチではなく、2メートルぐらいの生地見本を揃えてあるので、実際にソファに掛けて、雰囲気を見ることができる。ソファのベースの色はグリーンと決めてあったので、そこにベージュを合わせてみたり、イエローを合わせてみたり。1枚掛けては、ちょっと退がって、う〜ん。取り替えては、また退がって、なるほど〜〜。私が店員だったら、「あんた、どうでもいいけど、いい加減に決めたら!」と怒鳴りたくなるくらい悩んで、悩んで、結局、落ち着いたベージュを選んだ。
さて、ここで最後の難関が待ち受けていた。実はこの「Aソファ」、このショールームで、「はい、じゃあこれでよろしくね!」と買うわけにはいかない事情があったのだ。「Aソファ」といえば、イタリアの高級家具。ファブリックの価格によって、総価格に差はあるが、おおよそ¥50万〜¥70万ぐらいの代物になる。もちろん定番品ゆえに、セールにはならない。でもね〜、ソファで¥60万って、どうなのよ! 元来小市民の私は、何とか安く手に入らないかと、いろいろコネクションを当たった結果、百貨店のインテリア部にいたことのある友人が、割引と社販を駆使して、え〜い、しょうがねえ2割引だ〜〜! と、太っ腹振りを見せてくれたのである。この価格での2割引は夢のような話、ということで、ファブリックを決めたらすぐに手続きをしに行くことになっていた。ショールームは、ファブリックを決め、見積もりをとるだけの、いわば下見。
見積もりも上がり、お客様ゲット〜! の嬉しげな表情のスタッフに、こんな話、いったいどう説明したらいいの? じゃあ、もう一度考えて来ます。と言うには、もう明らかに考えは決めている。やっぱりやめます、じゃあ2度とこのショールームに足を踏み入れられない。ちょっと夫に相談してっつーのもバレバレだよ。ああ、どうしよう……。
結局ここは正直に言うしかないということで、百貨店で買うことになっている旨を説明した。スタッフの女性は、ちょっと拍子抜けした表情になったが、何の問題もなく、見積もりを手渡してくれた。まあ考えてみれば、どこで買っても、アルフレックスの売り上げに変わりはないのだから、こんなにオロオロすることもなかったか。自分の小心さに、苦笑い……。
こうして買った「Aソファ」は、引っ越した翌日に届いた。思ったとおり、ど〜んとでかかったが、リビングにピッタリとマッチ。「Aソファ」があるだけで、部屋が一段とゴージャスになる。ファブリックの色合いも思った以上に素敵だった。そしてなんと言っても、至福の座り心地。クッションを抱きしめて横になれば、思いっきり足を伸ばして昼寝ができる。
かくして、憧れの「Aソファ」は、今や我が家のへそ的存在である。一度、後輩が泊まりに来て、「あ、私はソファで寝るからいいですよ〜」とぬかした時などは、激怒して怒鳴ったものだ。
「ばっかもん! このソファはウチでいちばん高いんじゃ〜! ソファでいいとは、なんちゅう言いぐさじゃ〜〜! よだれでも垂らしたら、ぶっ飛ば〜す!」
そう、このソファに寝転がっていいのは、この私だけなのです。
『arflex』 http://www.arflex.co.jp/
……もう10年以上前からそう決めていた。
「Aソファ」と言えば、イタリアのアルフレックス社の顔のようなもの。定番中の定番である。同じアルフレックスの定番に「マレンコ」という、コロンとしたソファがあるのだけれど、たぶん、「Aソファ」のほうが、圧倒的に日本人には支持されていると思う。シンプルで、どんな部屋にも合うデザインでありながら、ちょっとした曲線や角度に、計算し尽くされた巧みの技がある。クッションも羽毛が使われていて、そのフカフカさときたら、それこそ夢心地。しかも、ものすごい種類のファブリックから、好きなものをチョイスできるという、セミオーダーメイドがまたいい。
同じイタリアのモダン家具メーカーにカッシーナがあるが、カッシーナは私にはちょっとクールすぎる。布や木の暖かみが何気なく生きているアルフレックスのほうが、ピタッとハマる気がするのだ。
というわけで、5年前にエイヤッ! っとマンションを購入したとき、真っ先に買ったのが、「Aソファ」だった。
まずは、カタログを手に入れて、サイズを検討する。いくつかのパーツがあり、それの組み合わせで、普通の長いすタイプからL字型、U字型とレイアウトできるようになっているのだ。とりあえずは、シンプルな長いすタイプで、と思ったのだが、左にアームが来る半身のパーツで既に幅が1メートルを超えている。右にアームがあるのと合わせて2メートル30センチ弱。でか〜い! おまけに奥行きが95センチときた。こりゃあ、ちょっとしたベッドじゃない! それまで、デパートの家具売り場などで何度も見ていたのだが、まさかこんなに巨大なソファだとは気づかなかった。広いスペースで見ると、大きさの感覚が違うからだろう。
さっそく、部屋の間取り図を取り出して検討。予定していたスペースには充分収まりそうだが、いったい部屋の中での存在感はいかがなものか? 色の付いた紙を持ってきて、間取り図の縮尺に比例した、Aソファモデルをハサミでチョキチョキ切り抜き、図面のリビングに置いてみる。うん、これなら行けそうだ! あとはファブリックだ。
ファブリックの色によって、ソファの雰囲気、部屋の雰囲気はかなり変わる。かといって、サンプル生地をながめていても、実際にこのバカでかい「Aソファ」に変身したとき、いかなる表情になるのかは、なかなかイメージしにくい。こういうことは、ハッキリと確認しないと行動に起こせない性格の私は、すぐにアルフレックスのショールームに出向いた。ショールームがたまたま新居と同じ恵比寿にあったのはラッキーだった。
ショールームには、アルフレックスの代表作のほとんどが展示されていた。「Aソファ」の隣には、「Aソファミディアム」という、一回りコンパクトサイズのものもあり、あまりのバカでかさに驚いたばかりの私は、ちょっと気持ちが動いた。しかし、座り比べてみると、やっぱり圧倒的に「Aソファ」のほうが座り心地がいい。「Aソファミディアム」が、腰を掛けるという表現だとしたら、「Aソファ」は、体を預けるという感じ。「Aソファミディアム」が、ソファに身を委ねるだとしたら、「Aソファ」は、ソファに抱かれるという感じ。これで迷いは吹き飛んだ。
ファブリックもさすがショールーム。ちっぽけなスワッチではなく、2メートルぐらいの生地見本を揃えてあるので、実際にソファに掛けて、雰囲気を見ることができる。ソファのベースの色はグリーンと決めてあったので、そこにベージュを合わせてみたり、イエローを合わせてみたり。1枚掛けては、ちょっと退がって、う〜ん。取り替えては、また退がって、なるほど〜〜。私が店員だったら、「あんた、どうでもいいけど、いい加減に決めたら!」と怒鳴りたくなるくらい悩んで、悩んで、結局、落ち着いたベージュを選んだ。
さて、ここで最後の難関が待ち受けていた。実はこの「Aソファ」、このショールームで、「はい、じゃあこれでよろしくね!」と買うわけにはいかない事情があったのだ。「Aソファ」といえば、イタリアの高級家具。ファブリックの価格によって、総価格に差はあるが、おおよそ¥50万〜¥70万ぐらいの代物になる。もちろん定番品ゆえに、セールにはならない。でもね〜、ソファで¥60万って、どうなのよ! 元来小市民の私は、何とか安く手に入らないかと、いろいろコネクションを当たった結果、百貨店のインテリア部にいたことのある友人が、割引と社販を駆使して、え〜い、しょうがねえ2割引だ〜〜! と、太っ腹振りを見せてくれたのである。この価格での2割引は夢のような話、ということで、ファブリックを決めたらすぐに手続きをしに行くことになっていた。ショールームは、ファブリックを決め、見積もりをとるだけの、いわば下見。
見積もりも上がり、お客様ゲット〜! の嬉しげな表情のスタッフに、こんな話、いったいどう説明したらいいの? じゃあ、もう一度考えて来ます。と言うには、もう明らかに考えは決めている。やっぱりやめます、じゃあ2度とこのショールームに足を踏み入れられない。ちょっと夫に相談してっつーのもバレバレだよ。ああ、どうしよう……。
結局ここは正直に言うしかないということで、百貨店で買うことになっている旨を説明した。スタッフの女性は、ちょっと拍子抜けした表情になったが、何の問題もなく、見積もりを手渡してくれた。まあ考えてみれば、どこで買っても、アルフレックスの売り上げに変わりはないのだから、こんなにオロオロすることもなかったか。自分の小心さに、苦笑い……。
こうして買った「Aソファ」は、引っ越した翌日に届いた。思ったとおり、ど〜んとでかかったが、リビングにピッタリとマッチ。「Aソファ」があるだけで、部屋が一段とゴージャスになる。ファブリックの色合いも思った以上に素敵だった。そしてなんと言っても、至福の座り心地。クッションを抱きしめて横になれば、思いっきり足を伸ばして昼寝ができる。
かくして、憧れの「Aソファ」は、今や我が家のへそ的存在である。一度、後輩が泊まりに来て、「あ、私はソファで寝るからいいですよ〜」とぬかした時などは、激怒して怒鳴ったものだ。
「ばっかもん! このソファはウチでいちばん高いんじゃ〜! ソファでいいとは、なんちゅう言いぐさじゃ〜〜! よだれでも垂らしたら、ぶっ飛ば〜す!」
そう、このソファに寝転がっていいのは、この私だけなのです。
『arflex』 http://www.arflex.co.jp/