春爛漫!
桜の花も咲き始め、いよいよ春真っ盛り。そして、今では初春からの風物詩になった花粉も、今年は例年以上のパワーを発揮して、全国的に猛威を振るっているらしい。“らしい”などという人ごと扱いの書きっぷりからもおわかりかと思うが、私は幸いにも、まだ『花粉症』という現代病に取り付かれてはいない。数年前から、花粉指数最高値の日本晴れ風強しという日だけ、軽いくしゃみが数回でたり、朝起きたときに、これまた軽いくしゃみ(モーニングアタックと言う)と鼻水が出る……という、花粉症になったかもしれない症候群は来ているのだが、幸い、本格的な花粉症患者には認定されていないようだ。
「あっ、それってもう時間の問題よ」
「花粉症は突然なるんだから!」
などという、悪魔の囁きにもめげず、とりあえず、史上最多という劇的増加を見せた今季も、なんとか事なきを得ずに済みそうである。
しかし、この花粉症、本当にうっとうしいらしく、電車の中などで、目を真っ赤にして鼻をすすっている人を見かけると、気の毒で仕方ない。まして、身近な人がなると、もうこれは人ごとではない。まともに会話はできないし、陽の当たるカフェで楽しくお茶することなんて、言語道断なのだから、友情にもひびが入り兼ねないのだ。
今年、親友が二人、花粉症にやられた。
一人は、お馴染みのY子だ。2月頃から何やらウルウルしてるなあと思っていたのだが、3月に入ってから、完全にやられた。毎日泣きはらしたような目をし、くしゃみは連発するし、言葉はズビズバだし。
「あだばがおぼいし、ぼうだべがぼ!」(訳すと「頭が重いし、もうダメかも」)
と、クラ〜イ顔。つぶらな瞳と笑顔がチャーミングな彼女なのに、もう台なしだ。鼻風邪をこじらせたときと同じで、花粉症になると集中力も低下するらしく、仕事にも専念できない。そのイライラが近くの人間に向けられるため、いつもの調子で話していると、だんだん不機嫌になってくるのがわかる。
「かゆいからって、そんなに目をかいちゃうと、傷つけるわよ」
と注意したら、
「だって、痒いんだもん!!!」
と、涙目でにらまれた。
彼女の夫であるI氏は、何年も前からの筋金入りの花粉症野郎だったのだが、去年、自らの力で花粉症を撃退したという強者である。どうやって撃退したか、すごく聞きたいでしょう? 名付けて「無心の術」……そう、抵抗することをすべてやめたのだ。くしゃみが出たら出っぱなし、鼻水もたれっぱなし、涙も流しっぱなし。通常の社会生活を営む人間には、かなり勇気のいる作戦であるが、こうやって、花粉症自体を無視することで、本当に彼はモノの見事に完治してしまった。
「さすがに、人前に出るときはマスクはしたけど、マスクの中では、鼻たらしっぱなしだったよ。でも、女性には勧められない方法だなあ」
ってなわけで、涼しい顔をしている夫の傍らで、Y子はかみすぎた鼻と、かきまくった目で、顔全体を真っ赤に腫れ上がらせていたっけ。
結局彼女は、眼科と耳鼻科に救いを求め、化学の力で花粉症を食い止めている。たまに、強いから寝る前だけ飲むようにと指示された薬が効きすぎて、ものすごい朝寝坊をしてしまうというハプニングもあるが、元気で明るいY子の復活は、喜ばしい限りだ。
もう一人の友人N子の場合は、マスクとサングラスは手放せず、市販の薬を飲めば、眠気で意識朦朧となるため、ほとんど自宅に引きこもり状態。久し振りに会ったら、
「頭が重いし……あれ? 寒気もしてきた……」
おいおい、それは風邪だろう! なんて、もう、自分が何の病気かもわからなくなっていた。ご愁傷様……。
花粉症は、文字通りスギとかヒノキの花粉が原因の、都会に集中したアレルギー症状だ。花粉が原因だったら、田舎のほうが多いだろうと思うのだが、そこには、車の排気ガスに含まれる化学物質も関係しているというので納得がいく。だいたい、私が子供の頃、「花粉症」なんて言葉、なかったもんなあ。
もともとくしゃみや鼻水は、ウイルス防衛のため、進入してきた異物を吹き飛ばしたり、流し出したりする、いわゆる防衛反応だ。普通花粉ごとき異物は、くしゃみや鼻水の手を借りずとも、粘膜で充分対応できてしまうはずなのに、現代人は、食生活の乱れや、排気ガス、たばこの煙などの化学物質、乾燥などの原因が積み重なって、粘膜が軟弱になっているのだそうだ。だから、まずこの粘膜を丈夫にすることが、花粉症の対処方ということで、去年あたりは、ヨーグルトを食べよ! と、あちこちの健康番組が大騒ぎした。お陰で、LB81乳酸菌やら、Lカゼイ・シロタ株とかいう地味で専門的な菌の名前まで有名になってしまった。
また、こういう問題のときに必ず登場する、中国4千年の歴史を誇る中国茶パワーでは、まずは甜茶が名乗りを挙げた。これは、甜茶に含まれる甜茶ポリフェノールという成分が、くしゃみや鼻水を起こす炎症物質、ヒスタミンを抑えるからだという。そのとたん、各種甜茶あめが市場に溢れた。
そして今季登場した真打ちが、ジャ〜ン! 凍頂烏龍茶である。これは、烏龍茶の高級品ということで、以前から名前は知られていた。他の烏龍茶より低い温度で発酵させ、焙煎が浅いのが特徴で、青心烏龍という希少な品種が使われるらしい。この凍頂烏龍茶に含まれるメチル化カテキンという成分が、ヒスタミンの大元であるIgE抗体そのものを抑えるとかで、早い話が、免疫機能の過剰反応で発射されるヒスタミンを持ったガードマン(IgE抗体)自体の間違った出動を抑えるということですね、フムフム。
自他共に認める健康オタクの私。ヨーグルトはもともと大好きなので、毎朝欠かさなかったし、お茶もよく飲むので、どうせ飲むなら、体にいいものがお得でしょうとばかり、すぐに凍頂鳥龍茶を飲み始めた。もちろん、実際に花粉症で苦しんでいる友達には、うんちく付きですぐに勧めた。
と、あるときネットで見かけたのが、『紅富貴(べにふうき)』という、もともと煎茶用に作られた、日本の緑茶の品種。これが、凍頂鳥龍茶の数倍のメチル化カテキンを含んでいるというのだ。ただし、栽培量が極めて少ないらしく、ネットでも純粋な100%紅富貴茶葉はあっという間に売り切れ、私がゲットできたのは、紅富貴30%含有の粉末ブレンドだけだった。それすらも、今では品薄らしいから、後は秋の茶葉の収穫を待つしかないらしい。秋に飛び交うブタクサの花粉症に備えて、今年の秋には、『紅富貴』が店頭を賑わすに違いない。また、静岡の茶畑に、紅富貴が突如増え始めるなんて言うことも、大いに考えられる。悲しいことに、今やアレルギーは、大きなビジネスチャンスのキーワードなのだから。
そう言えば、1月に厚生労働書が『花粉に対する緊急対策の実施について』を発表し、『花粉シンポジウム』が開催された。今頃になって、である。しかも、記者会見に表れた役人が、鼻声の明らかな花粉症野郎であったことから、自分たちが辛いから何とかしなかきゃ、という気になったんだろうコノヤロー! というのは明らか。
これから、アレルギーで、アトピーで、地震に被災していて、年老いた親を持つ役人をどんどん増やせば、日本も少しはよくなるのかもしれない。
言い訳満載の厚生労働省の花粉症特集ページ
http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/kenkou/ryumachi/kafun.html
桜の花も咲き始め、いよいよ春真っ盛り。そして、今では初春からの風物詩になった花粉も、今年は例年以上のパワーを発揮して、全国的に猛威を振るっているらしい。“らしい”などという人ごと扱いの書きっぷりからもおわかりかと思うが、私は幸いにも、まだ『花粉症』という現代病に取り付かれてはいない。数年前から、花粉指数最高値の日本晴れ風強しという日だけ、軽いくしゃみが数回でたり、朝起きたときに、これまた軽いくしゃみ(モーニングアタックと言う)と鼻水が出る……という、花粉症になったかもしれない症候群は来ているのだが、幸い、本格的な花粉症患者には認定されていないようだ。
「あっ、それってもう時間の問題よ」
「花粉症は突然なるんだから!」
などという、悪魔の囁きにもめげず、とりあえず、史上最多という劇的増加を見せた今季も、なんとか事なきを得ずに済みそうである。
しかし、この花粉症、本当にうっとうしいらしく、電車の中などで、目を真っ赤にして鼻をすすっている人を見かけると、気の毒で仕方ない。まして、身近な人がなると、もうこれは人ごとではない。まともに会話はできないし、陽の当たるカフェで楽しくお茶することなんて、言語道断なのだから、友情にもひびが入り兼ねないのだ。
今年、親友が二人、花粉症にやられた。
一人は、お馴染みのY子だ。2月頃から何やらウルウルしてるなあと思っていたのだが、3月に入ってから、完全にやられた。毎日泣きはらしたような目をし、くしゃみは連発するし、言葉はズビズバだし。
「あだばがおぼいし、ぼうだべがぼ!」(訳すと「頭が重いし、もうダメかも」)
と、クラ〜イ顔。つぶらな瞳と笑顔がチャーミングな彼女なのに、もう台なしだ。鼻風邪をこじらせたときと同じで、花粉症になると集中力も低下するらしく、仕事にも専念できない。そのイライラが近くの人間に向けられるため、いつもの調子で話していると、だんだん不機嫌になってくるのがわかる。
「かゆいからって、そんなに目をかいちゃうと、傷つけるわよ」
と注意したら、
「だって、痒いんだもん!!!」
と、涙目でにらまれた。
彼女の夫であるI氏は、何年も前からの筋金入りの花粉症野郎だったのだが、去年、自らの力で花粉症を撃退したという強者である。どうやって撃退したか、すごく聞きたいでしょう? 名付けて「無心の術」……そう、抵抗することをすべてやめたのだ。くしゃみが出たら出っぱなし、鼻水もたれっぱなし、涙も流しっぱなし。通常の社会生活を営む人間には、かなり勇気のいる作戦であるが、こうやって、花粉症自体を無視することで、本当に彼はモノの見事に完治してしまった。
「さすがに、人前に出るときはマスクはしたけど、マスクの中では、鼻たらしっぱなしだったよ。でも、女性には勧められない方法だなあ」
ってなわけで、涼しい顔をしている夫の傍らで、Y子はかみすぎた鼻と、かきまくった目で、顔全体を真っ赤に腫れ上がらせていたっけ。
結局彼女は、眼科と耳鼻科に救いを求め、化学の力で花粉症を食い止めている。たまに、強いから寝る前だけ飲むようにと指示された薬が効きすぎて、ものすごい朝寝坊をしてしまうというハプニングもあるが、元気で明るいY子の復活は、喜ばしい限りだ。
もう一人の友人N子の場合は、マスクとサングラスは手放せず、市販の薬を飲めば、眠気で意識朦朧となるため、ほとんど自宅に引きこもり状態。久し振りに会ったら、
「頭が重いし……あれ? 寒気もしてきた……」
おいおい、それは風邪だろう! なんて、もう、自分が何の病気かもわからなくなっていた。ご愁傷様……。
花粉症は、文字通りスギとかヒノキの花粉が原因の、都会に集中したアレルギー症状だ。花粉が原因だったら、田舎のほうが多いだろうと思うのだが、そこには、車の排気ガスに含まれる化学物質も関係しているというので納得がいく。だいたい、私が子供の頃、「花粉症」なんて言葉、なかったもんなあ。
もともとくしゃみや鼻水は、ウイルス防衛のため、進入してきた異物を吹き飛ばしたり、流し出したりする、いわゆる防衛反応だ。普通花粉ごとき異物は、くしゃみや鼻水の手を借りずとも、粘膜で充分対応できてしまうはずなのに、現代人は、食生活の乱れや、排気ガス、たばこの煙などの化学物質、乾燥などの原因が積み重なって、粘膜が軟弱になっているのだそうだ。だから、まずこの粘膜を丈夫にすることが、花粉症の対処方ということで、去年あたりは、ヨーグルトを食べよ! と、あちこちの健康番組が大騒ぎした。お陰で、LB81乳酸菌やら、Lカゼイ・シロタ株とかいう地味で専門的な菌の名前まで有名になってしまった。
また、こういう問題のときに必ず登場する、中国4千年の歴史を誇る中国茶パワーでは、まずは甜茶が名乗りを挙げた。これは、甜茶に含まれる甜茶ポリフェノールという成分が、くしゃみや鼻水を起こす炎症物質、ヒスタミンを抑えるからだという。そのとたん、各種甜茶あめが市場に溢れた。
そして今季登場した真打ちが、ジャ〜ン! 凍頂烏龍茶である。これは、烏龍茶の高級品ということで、以前から名前は知られていた。他の烏龍茶より低い温度で発酵させ、焙煎が浅いのが特徴で、青心烏龍という希少な品種が使われるらしい。この凍頂烏龍茶に含まれるメチル化カテキンという成分が、ヒスタミンの大元であるIgE抗体そのものを抑えるとかで、早い話が、免疫機能の過剰反応で発射されるヒスタミンを持ったガードマン(IgE抗体)自体の間違った出動を抑えるということですね、フムフム。
自他共に認める健康オタクの私。ヨーグルトはもともと大好きなので、毎朝欠かさなかったし、お茶もよく飲むので、どうせ飲むなら、体にいいものがお得でしょうとばかり、すぐに凍頂鳥龍茶を飲み始めた。もちろん、実際に花粉症で苦しんでいる友達には、うんちく付きですぐに勧めた。
と、あるときネットで見かけたのが、『紅富貴(べにふうき)』という、もともと煎茶用に作られた、日本の緑茶の品種。これが、凍頂鳥龍茶の数倍のメチル化カテキンを含んでいるというのだ。ただし、栽培量が極めて少ないらしく、ネットでも純粋な100%紅富貴茶葉はあっという間に売り切れ、私がゲットできたのは、紅富貴30%含有の粉末ブレンドだけだった。それすらも、今では品薄らしいから、後は秋の茶葉の収穫を待つしかないらしい。秋に飛び交うブタクサの花粉症に備えて、今年の秋には、『紅富貴』が店頭を賑わすに違いない。また、静岡の茶畑に、紅富貴が突如増え始めるなんて言うことも、大いに考えられる。悲しいことに、今やアレルギーは、大きなビジネスチャンスのキーワードなのだから。
そう言えば、1月に厚生労働書が『花粉に対する緊急対策の実施について』を発表し、『花粉シンポジウム』が開催された。今頃になって、である。しかも、記者会見に表れた役人が、鼻声の明らかな花粉症野郎であったことから、自分たちが辛いから何とかしなかきゃ、という気になったんだろうコノヤロー! というのは明らか。
これから、アレルギーで、アトピーで、地震に被災していて、年老いた親を持つ役人をどんどん増やせば、日本も少しはよくなるのかもしれない。
言い訳満載の厚生労働省の花粉症特集ページ
http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/kenkou/ryumachi/kafun.html