パリには、美術館だけでなくすばらしい図書館があった。パリ市内は20の区に分かれていて、ルーブル美術館のある1区を中心に渦巻き状に2区、3区、4区と外に向かって、区の数字が大きいになっていく。

13区にあるその図書館は、フランス国立図書館といい、セーヌ川のすぐわきにそそり立っていた。1996年に建てられたもので、なにしろその大きさと空間には圧倒される。

外から見ると大きな、くの字型のビルが、敷地の四隅に、距離をおいて四棟、どーんと立っているだけのように見える。だが、そのビルはオフィス用で、一般の人が使う図書スペースはなんと、全部地下にあるのだ。

その地下の階の中央部分は、吹き抜けの大きな庭になっていて、その庭はガラス張りの回廊に囲まれている。なので地下といっても室内は自然光が入り、閉塞感はぜんぜんない。

回廊の一部では、じゅうぶんなスペースを利用して、いつもエキシビションが行われていて、ここを訪れたひとは、だれでも無料で見ることができる。

今回は、映画「ロード・オブ・ザ・リング」の手描きの下絵が、展示されていた。

ここは、あらゆるジャンルの膨大な数の本があるばかりでなく、歴史的にも重要な書物が、数々保存されていると聞く。

家に帰って、夕食の席でその図書館に行った話しをすると、「あそこは、本当にすばらしい本がたくさんあるんだよ。だけどね…」

彼らがいうには、まず、建築デザインが良くない(うん、確かにフランスっぽくなかった)。アクセスが悪い。本の配置が悪く、広いので、ちょっと違うテーマのものを探そうと移動するのに、信じられないほど時間がかかってくたびれてしまう。

きわめつけは、万が一、セーヌ川が氾濫したら、地下に貯蔵してある貴重な書物が、水浸しになる危険性がある。

膨大な費用をかけて建てただろうと、しろうとの私にもたやすく想像できるこの巨大な建物。なるほど、よそ者にはわからない問題がけっこうあるものだ。

(写真解説)
上段:フランス国立図書館の外観
中段:地上から見下ろした中庭
下段左:回廊の展示
下段右:地下に降りるエスカレータ