Vol.04 〜クリスマスからお正月へ〜 12月を彩る花々

リース今年も残すところ、あとわずかとなりました。東京の表参道では、11年ぶりのイルミネーションが復活し、街はクリスマスの雰囲気で華やかに彩られました。私も2回程、表参道を車で通り、美しい景色を見ましたが、皆様は今年のクリスマス、街にどんな飾り付けが施されているかご覧になりましたか。私は、色々な場所のイルミネーションを数々見て美しい飾り付けにうっとりしました、といいたいところなのですが、実はあまりチェックできないまま、クリスマスを迎えてしまいました。これは毎年のことなのですが、イルミネーションが施される頃からクリスマスレッスンやギフトのお届け等々、落ち着かない日々が続き、結局クリスマス当日にバタバタと、都内のホテルやショッピング街を駆け巡り「今年のクリスマスはこんな風だったのね」と“納得する”という状況が何年も続いています。

私のアトリエも、12月のクリスマスレッスンには、お陰様で沢山の方にいらしていただきました。例年通り、リースとアレンジメントのいずれかを選んでいただくレッスン内容としましたが、今年はモミで作るリースが人気でした。ベーシックなスタイルが好まれたのでしょうか。私としては、アレンジメントのデザインは他では見られないものを考えたので、なかなか好きだったのですが、一度はモミのリースを作りたいとお思いになる、リピーターの方も多かったようです。実はあらかじめ、レッスンにいらっしゃるであろう人数を予想してアメリカ・オレゴン産のモミ枝を準備していたのですが、当初の予想人数を超えたため、モミ枝を追加しなければなりませんでした。例年であれば、12月の花市場ではモミ枝を難なく調達できるはずなのですが、なぜか今年は輸入のモミ枝が完売となり、リースレッスン用の材料が足りるか足りないかのギリギリの状況だったのです。

というわけで、レッスンの前に皆さんへの見本も兼ねてアトリエ用にリースを作ろうと思っていたのですが、そういう時は、レッスンにいらしてくださる方のモミが優先。アトリエのリースは後回しに、ということで、結局クリスマスレッスンが終わった数日後にアトリエ用のリースを作りました。リース1つを作れるだけのモミ枝が残るかどうか心配でしたが、レッスンにいらした方々が使った、枝の途中で切った残りのモミなどを上手く使うことで、アトリエ用リースが完成しました。今年のリースは、パープル系。形は少し楕円形にしてオーナメントはシンプルにしました。ふんだんな花材で作るリースやアレンジも素敵ですが、この様に「残りもの?」で作るものも意外と格別で私は好きです。もしかしたら、お料理に似ているのかもしれません。作る献立を決めて、材料を準備するのもよいですが、冷蔵庫をパッと開けた時に、そこにある食材でいかに美味しいお料理にチャレンジするのが楽しいように。

大王松アレンジ

大王松を使ったアレンジ。

さて、海外ではクリスマスが過ぎた1月6日頃までリースやツリーを飾っているようですが、前回申し上げたように日本では、クリスマスの翌日にはお正月を迎えるディスプレーへと変身します。ご自宅でもどこでもそうですね。

お正月といえば、松や千両。日本人にとっては、これを見ただけでお正月を連想することとなるのでしょう。一口に松といっても、生け花やアレンジメントに使われる松は様々な種類があります。皆さんがよく見かける一般的な“若松”、根っこがついた状態で出荷されることが多い“根引き松”、葉がとても長い“大王松(だいおうしょう)”、葉の部分が緑と黄色の蛇の目になった“蛇の目松”、葉のかたまりが沢山ついている“三光松”、そして 五葉松や寿松等々があります。私がよく使うのは根引き松。音だけ聞いていると「ねびき」なので、知らない方は“値引き松”と思われるかも知れませんが、いえいえ違います。根っこがついているので“根引き松”なのです。

千両は赤(朱色に近い赤)と黄色(オレンジに近い黄色)があります。最近では深紅に近い赤の千両が出回るようにもなり、それも美しいのですが、やはり千両は昔ながらの朱に近い色のものがお正月らしいと思います。通常の洋風アレンジメントでしたら“赤=深紅”ということで、赤い色を取り入れると美しいと思いますが、和風、特にお正月のお花は少し違うように思います。以前、日本舞踊の公演を拝見した時のこと、着物や舞台装置に使われている赤は朱色で、微妙な色の違いですが日本の伝統的な色であることを実感した覚えがあります。

葉ボタンアレンジ他にお正月らしい雰囲気の花、といえば葉ボタンでしょうか。花といっても実際には美しい葉を楽しむわけですが、冬の花壇などでよく見られ、その姿はまるでキャベツそのもの。それをアレンジに使うと聞いたら驚かれるかと思うのですが、切り花として小さなサイズの葉ボタンが数種類出回っています。葉の色は、白や紫です。葉の形は、縮れた“ちりめん”、そして縮れていない“丸葉”があります。葉ボタンの英名は、ornamental cabbage。昨年の秋に訪れたロンドンの花市場で ”cabbage” と大きく書かれた表示のもと、切り花の葉ボタンが売られていたのには、何となく微笑ましく思いました。

しめ縄アレンジ

しめ縄を使ったアレンジ。

その他にお正月らしさを演出するものといえば水引、しめ縄です。水引は、アレンジに少し加えるだけで、実にお正月らしくなります。様々な結び方があり、この季節にはいつも「水引を美しく結ぶ技を習得しなければ」と思いつつ、お正月以外に水引を使うことがあまりないので、あっという間に一年が経ってしまい、また翌年同じことを思う、という具合です。

しめ縄は丸めてお花をあしらい、ドア飾りなどにすると、お正月を迎える気持ちが一気に高まります。また、最近では松や千両を少しモダンに使ったアレンジなども見られるようになりました。

このように、クリスマスを過ぎると洋から和へ、がらっと変わりますが、お正月用には松や千両、葉ボタン等々を選べば、雰囲気あるアレンジとなることは間違いなしだと思います。街のクリスマスディスプレーをチェックするのと同様、お正月の花がどの様に飾られているかを、年末年始の楽しみとしてご覧になってみてください。年末は忙しさのあまり、そこまでの余裕はないかもしれませんが、そういう時こそ“花の不思議な力”を借りて心に余裕を持つこともお忘れなく。

では、皆様 Merry Christmas! そして、どうぞよいお年をお迎えください。


〜お正月花に関するワンポイントアドバイス〜

お正月花は、31日の一夜飾りを避けるということで、30日に飾る方々が多いと思います。寒い冬なので、花が保たなくて心配、ということはあまりないですね。年末に飾った保ちのよい花であれば、松の内の1月7日頃まで充分美しい状態でしょう。でも逆に、松などは1月7日以降、もて余してしまうことがあります。枯れたわけではないので、捨ててしまうのはちょっと心苦しい、でもそのまま飾っておくのも何となくおかしいわ。そんな時は松の葉っぱでちょっと遊んでみてはいかがでしょうか。糸やてぐすに葉っぱを通して所々にビーズ等をあしらって壁に飾れば、ちょっとしたモダンなオブジェのよう。水をもらえないのでちょっとかわいそうではありますが、強い葉なのでぐったりとしてしまうこともなく、そのままドライの葉としても楽しめると思いますよ。松も最後まで使ってあげてくださいね。

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