アリゾナとカリフォルニアの州境に位置するレイクハバスに、イギリスのロンドンにあるはずのロンドン・ブリッジが架かっているのをご存知でしょうか。湖畔にある町、レイクハバス市の人達は「この町には世界最大の骨董品があるんだ!」(We have the world’s largest antique!)と自慢します。ロンドンからはるか1万キロも離れたアリゾナの地に、どのような経緯でロンドン・ブリッジが架かることになったのか、その話をご紹介します。
コロラド川とレイクハバス
全長2,334kmのアメリカでも屈指の大河、コロラド川。その支流はロッキー山脈に始まり、ユタ州、アリゾナ州を経て、アリゾナ州とカリフォルニア州の州境を流れ、コルテズ海に流れ込みます。コロラド川は広大なコロラド・プラトー(台地)を侵食しながら流れ、悠久の時を経てあの雄大なグランドキャにオンを作り上げました。その一方で、コロラド川はアメリカ西部及び南西部の開発に大きく貢献し、その周りに広がる大都市のフェニックス、ラスベガス、ロサンゼルスに電力や水を供給し、その地域に生活する1,000万人を超える人々の生活の基盤となりました。コロラド川には(主に)5つのダムが作られています。上流から順にレイクパウエルを作ったグレンキャニオン・ダム、レイクミードを作ったフーバー・ダム、レイクモハビを作ったデイビス・ダム、そしてレイクハバスを作ったパーカー・ダム、そしてインペリアル・ダムです。
ロンドン・ブリッジの建設から売却まで
ロンドン・ブリッジのあるレイクハバスは、マリンスポーツのメッカとして賑わっている。
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沈み始めた橋をどうするか、長い討論がされました。その結果、沈み行くロンドン・ブリッジの売却案が浮上し、ロンドン市議会はそれを可決してしまうのです。沈んでいく橋を売りに出したところで、買ってくれる人などいる訳がない、とロンドン市民の誰もが思ったに違いありません。ところがたった一人だけその入札に参加した人がいたのです。