Vol.01 連日連夜、朝まで踊り明かす舞踏会の街、ウィーン

デビュタントたちによる舞踏会のオープニング。
芸術、文化、それに歴史が融合する美しい古都、ウィーンは、“音楽の都”とも形容されるくらい、音楽とは切っても切れない街……。これは日本でも広く認められていることでしょう。しかし意外に知られていないのは、舞踏会の街、でもあることです。あるいはワルツの街、と言っても良いかもしれません。

ヨハン・シュトラウスのウィンナーワルツに人々が熱狂した19世紀半ば、「会議は踊る」と、かつては皮肉を込めて表現された時代もあったほど、ワルツはウィーンになくてはならないものです。お店に入っても、カフェでお茶をしても、タクシーの中にも、なんとオペラ座前の公衆トイレにさえも、ウィーンでは街中に、独特の三拍子が溢れています。とりわけ冬のあいだ……ファッシングと呼ばれる謝肉祭の時期に、ウィーンの街ではあちこちで、大小さまざまな舞踏会が開かれます。

現代では、“職業の数だけ舞踏会がある”とも言われ、舞踏会の主催は各種の職業組合や、団体、学校、また個人的なものまで、さまざまなものがあります。舞踏会が開催される場所も、王宮から市庁舎、一流ホテルと、こちらもいろいろです。その規模も、比較的内輪の人たちだけで行われるこぢんまりとしたもの、服装や雰囲気もカジュアルなものから、“男性はタキシードか燕尾服、女性はロングイブニングドレス”、とドレスコードの指定がある、フォーマルで大規模な舞踏会など、これも多様です。そして、装飾や演しもの、おみやげに至るまで、それぞれが色々な工夫をこらし、特色を出しているのです。

舞踏会シーズン中は、街のショーウィンドーも華やかです。
ウィーンでは毎年、秋になると、バル(舞踏会)カレンダーといって、シーズン中のほぼすべての舞踏会の日程、場所が掲載されたものが発行されます。それを見てもわかるように(実際に私はひとつひとつ数えてみたこともあります)、ひと冬に約200、週末など多い時には一晩に10以上もの、舞踏会が開かれています、しかも、古くからの習慣により舞踏会は明け方まで続きます。

まさに“連日連夜”、ウィーンの人々は踊り明かしているのです。