2月といえば、バレンタインデー。この日は、どのようなプレゼントを贈られたでしょうか。日本ではチョコレートが主流ですが、バレンタインデーの風習は、男性から女性にお花をプレゼントすることが本来のスタイルで、海外のお花屋さんでは、バレンタインデーが一年中でいちばん忙しい日、といっても過言ではないようです。ここ数年は、日本でも、バレンタインデーの本来の意味を見直そうと、花業界が中心となり、『フラワーバレンタイン』という言葉を浸透させ、『男性から女性にお花を贈る2月14日』という認識をもっていただこう、という活動をおこなっているようです。チョコレートで定着しているバレンタインデーが、いつの日か、お花も定番となるよう願うばかりですが、2年前の「Vol.12 花束をもつ男性、素敵です」でも記したように、日本人の男性の、果たしてどのくらいの割合の方が、お花に関心をもっているのかしら、と思い、フラワーバレンタインを浸透させるのも、もしかしたら少し難しい状況ではないかと思っていたところでした。
大雪の日に到着したプリザーブドフラワーアレンジ
ところが、今年のはじめ、男性のお花に対する意識がかわってきたのではないかと思うご注文をいくつかいただき、私自身も驚いたところなので、今回は、そのうちの2つのエピソードをご紹介したいと思います。2つに共通していたことは、奥さまへのお誕生日プレゼントということと、また、日にちの余裕をもってのご注文だったということ。そして、お花は当日のサプライズにしたいので、奥さまにはくれぐれも内緒でという準備万端なご注文だったことでした。
まず最初のご注文ですが、これはプリザーブドフラワーのアレンジメントで、とのことでした。ご注文主の奥さまが、もともと私のお客さまだったご縁で、ご依頼をいただきました。少々遠方でしたので、宅配便での発送で、到着日は1月中旬。そして、ご依頼のメールをいただいたのは、11月末のことでした。そのメールには、以前その方の奥さまからご友人宛へのお花の注文をいただいた際、お届けした作品を奥さまもとてもお気に召していらっしゃったようで、ご依頼主がそのことを思い出し、ぜひ私に依頼したいと、ご連絡に至ったことが記されていました。
とても早いご注文であったこと、そして、その文面から、非常に大切なプレゼントとしてご依頼いただいた、ということがわかり、私も一段と気の引き締まる思いでした。当日のサプライズを成功させるため、お届けするアレンジメントの色合いや、デザインの打ち合わせを、ご依頼主とメールで数回重ねました。また、お花のこと以外でも、宅配伝票に記すお届け先の電話番号については、奥さまに万一ご連絡がいってしまう場合を考え、ご自宅ではなくご依頼主の携帯電話の番号にする等々、そのあたりも計画綿密、準備万端に…ということで、1月の到着日当日を迎えることとなりました。
私も愛用しているガラスのお皿や花入れ
そして、当日。この日は、私とご依頼主にとって、なんとも予想外のサプライズが待っていたのでした。それは、関東地方での、あの大雪です。予定通りの段取りとなるかどうかを案じていましたが、それもご依頼主の計らいで、宅配便の配達が午前中の早い時間となり、事なきを得て、無事到着となったようです。自然の力による大雪の予期せぬハプニングもありましたが、だからこそ、思い出深いお誕生日プレゼントになったことと思います。
そして、このようなご注文と前後するような形で、今度は別な方から、奥さまへのお誕生日お祝いの花束を、というご注文をいただきました。しかも、今回もサプライズで、ということでしたので、注文確認の電話をする際には携帯電話宛へという、準備万端なご注文でした。ご依頼くださったのは、ガラス作家の方。ある和食器店で、この方がつくったお皿や花入れ、置物などに目が留まり、購入したところ、偶然にも、私の知人もこの方の作品のファンだということがわかったりしたことが、この方とのご縁の始まりでした。美しく品のよい形や色で、且つ使いやすさも重視されたお皿などは、レッスンの時、生徒さん達にお茶菓子をお出しするのにも使ったりしていて、皆さんからの評判も上々。ガラスの花入れにクレマチスを挿した写真をお送りしたことも、この方との交流をもつきっかけとなりました。そして、その後、機会があるごとに、お花のご依頼をいただくようになったのです。
この花束をラッピングしてお届けしました。
今回は、奥さまへのお誕生日プレゼントとのこと。「どんな印象の花束にしましょうか」との問いに、「あまり大きすぎないもので、淡い色合いのものがいいかな。あとは、お任せします。」というお応えでした。以前、私が奥さまと電話で話したときに感じた印象も、優しそうな方だなというものでした。そういう私の印象も含めながら、淡く優しい雰囲気の春の花々を集めて、ブーケ風の花束をおつくりし、ご依頼主にお渡ししました。きっと、少し照れながら奥さまにお渡しするのかしらと思いながら。
そして、このご依頼も、無事に役目が果たせたかしら、と思っていたところに、奥さまから嬉しそうなお声の電話を頂戴し、当日の様子をうかがって、無事に役目が果たせたな、と私もホッとひと安心したのでした。
新しい年が明けて間もない時期に、これらのご依頼があったことで、2年前には日本の男性の、お花に対する関心の低さを記しましたが、少しずつでも変化がでてきたのだろうかと明るい兆しを嬉しく感じました。20年ほど前に、花屋で働いていたころ、奥さまへの花束を買いにくる男性もいらっしゃり、お花のご希望をうかがいましたが、「よくわからないから、適当につくってください。」という方も多くいらっしゃいました。ところが、今回はそのような点でもずいぶん違ってきたということを実感しました。きっと、これも、花にふしぎな力があるからこそ、なのかもしれません。
〜 お花ご依頼時のワンポイントアドバイス 〜
花束やアレンジメントなどをお花屋さんに注文する際には、なるべく事前にお店の方と相談できるとよいですね。とくに、この花を使って、という指定がある場合はなおさらのこと。わかり次第早めの注文が鉄則ですが、切り花の仕入れは表日(おもてび)と呼ばれる、月曜、水曜、金曜におこなう花屋さんがほとんどだと思いますから、そのことも頭の片隅に入っているとよいかもしれませんよ。たとえば、日曜日に必要なお花を依頼する際、とくにお花の詳細な指定などがある場合は、遅くとも木曜日までにはお願いできていると安心ですね。このような、お花屋さん事情を知っておくことも、上手な注文の第一歩になると思いますよ。