カオルくんの闘病記

9月1日(日)

朝食吐く。おもらしもあり。パジャマが着替えてあった。せつないね。昼食はがんばって2割食べたという。お昼に間に合わなくてごめんね。

4時すぎ、しゃっくりをし始めたかと思ったら吐きそうになった。食後、かなり時間がたっていたし、こらえろー、深呼吸だー。カオルくんは両手でベッドの手すりをつかんで必死にこらえる。落ち着いたかな?看護婦さんにあとをお願いして帰宅。夕飯はがんばったけど、吐いたそうだ。

9月2日(月)

11時病院着。カオルくんはすでに起きていて、朝食はがんばって食べて、吐かなかったという。パンはいいみたいだ。婦長さんに「おかゆは吐くというイメージがついてしまっているようなので……」と相談すると「普通食に替えましょう」とにっこり言ってくれた。

昼食はまだおかゆなので、私のおむすびを食べさせる。嘔吐の繰り返しでナトリウム不足。ナトリウムが不足すると、頭がボーッとするのだという。それが栄養面からなのか、脳からなのか判断しかねるので、塩をとってくださいと、4gの塩を1包置いておかれる。

夕方、塩水を飲ませる。夕飯は梅干しでごはんを少しとのり巻き1本、チャーハンのおむすびを少し食べる。「少しずつよくなっているんじゃない?」と言っても本人は「そう?」という反応。

9月3日(火)

10時30分病院着。吐いてないし、点滴もやっていない。よかった。スパゲッティを買っていってあげたけど、タバスコを忘れ3口くらい食べただけ。残念。

病院のごはんで梅干し、ゴマ、塩のおむすびをつくる。これを少しと玉子焼き1/8、ナスひと口食べる。「まだちょっと気持ち悪いなあ」というカオルくんに「急に完全によくなるはずないじゃん」と答える。

9月4日(水)

白血球の値が下がっているということで、面会時はマスク、手袋を着用。夕食はカオルくんの妹、ちづちゃんの手作りカレーで、7割を食べた。

9月5日(木)

朝、けっこう心配しながら病院に行ったが、カオルくんの顔色もよくホッとする。むくみもとれた気がする。昼食にギョーザを焼いて行くが、ふたつ食べるのがやっと。ごはん半分、みそ汁、玉子とじ、お浸し、魚を少々食べる。でも、おいしそうには食べていなかった。

寒気がするというので看護婦さんに伝える。風邪をひいてはまずいので暖かい下着を着せる。4時すぎ、電気毛布をかけてもらう。夕食は6割食べる。

9月6日(金)

夜中に熱は上がらなかったという。薬も使わず、よかった。でも、感染が怖いので昼食前、個室に移動。本人は顔色もよく、昨日よりボンヤリもしていなくて、朝食は完食!!
昼はグラタン、ごはん1/3、ぶどうパン1個、りんごゼリー。

9月7日(土)

個室に移って2日目。熱は上がっても37度後半のようだ。ま、38度を超さなければよしとしよう。今朝も完食。昼食も少々きつそうだったが、頑張っていた。私が持ってきたパンの差し入れが「固い」と文句を言われた。えー、そんな固くないじゃん。

ちょうどK先生が来て、「これ以上白血球が下がると、輸血も考えなければいけない。無菌室に入ってもらう可能も……」と言われる。現在、同じ病院の外来にある漢方の治療を平行して受けられるよう依頼をしていたが、「漢方のC先生に今診てもらうのは難しい」とも言われた。

抗がん剤の影響で、白血球が下がっているので、外にも出られないし、リハビリにも行けない。少しでも早くリハビリをしなくちゃと焦っていたが、K先生が個室内なら車イスに乗って動いていいという。なんだ、なんだ。早く言ってよ。

9月8日(日)

注射。朝食は食べられたが、口内炎がひどくなり昼食より辛そう。梅も塩も痛くてかわいそう。抗がん効果があるといわれているキノコの煎じ汁を、お茶代わりに飲めているのはいいことだ。

昼食後、リハビリのつもりで、少しのあいだ車イスに座って過ごしていた。

9月9日(月)

注射。久々に私は病院はお休み。病院へは妹のちづちゃんが夜行って、様子を見てきてくれた。車イスに5時間ぐらい座っていたそうだ。

口内炎はひどいようだ。

9月10日(火)

注射。ふわふわパンを食べ、野菜ジュースを飲む。ビタミンゼリーの差し入れ。口内炎はますますひどくなったようだ。

昼食時、白血球関係の薬を注入。看護婦さんとふたりでカオルくんの体を拭く。お尻と尾てい骨のところが赤くなっていたので、ドーナツ型の座布団を借りる。ビタミンゼリーを飲んだ。

9月11日(水)

注射。私は病院は休み。ちづちゃんがお昼から夕方にかけて見舞ってくれた。
口内炎は昨日より、少しよくなったそうだ。昼食は5割くらい。ビタミンゼリー4つ飲む。

9月12日(木)

有明で開催中の「国際福祉機器フェア」を見てから病院へ行く。退院後の生活のことも、頭にあったからだ。

白血球が正常値に近くなったので、昼食前、個室から元の4人部屋に移動。よかった!! 危機脱出。口内炎少しずつよくなっている。朝食9割。昼食4割。スープとごはん1/3。カオルくんはベッドの上で体操。手足の運動に積極性がないので、ハッパをかける。本人は「前回より回復が早い」なんてのんきなコトを言ってる。「前回と今回は違うよ。小脳とっちゃったんだよ。わかる? 運動機能を司る小脳を少しとったんだよ。車イスになっていいの!? リハビリをしても小脳は反応が鈍いんだって。すぐ歩けるのは難しいんだよ!!」と私。

「そんなの知らなかった……」とカオルくん。「私は知っていたよ。ショックだろうから言わなかったけど、あまりにのんきだから今、話したの」と私。「まあ、のんきだけどな。でも、ショックだ」とカオルくん。「歩いてくれないと退院できないからね! しっかりね!」以前の4人部屋に戻ったということもあり、今日は本人のためを思って厳しくした。

K先生が来て「C先生の外来は、来週の木曜日にとれました。次回の抗がん剤治療が始まる前なら、リフレッシュするため外泊なされても構いませんよ」と、言ってくれた。

9月13日(金)

昼に病院に着くと、ごはんを食べてる! さんまだった。味噌汁、そしてごはん完食。どんぶりに一粒のごはんも残さず、は超久々でした。本人も満足そう。とても嬉しい。

13時、Mちゃんが抗がん効果のあるきのこをたくさん持って、きてくれた。私にはドリンク剤3本も!! がんに効くものをいろいろと調べてくれてるみたいで嬉しい。カオルくんも昔、遊んだ仲間なので、いつもの調子の会話で楽しそうだった。

座ってばかりでお尻が痛いと、ベッドの手すりにつかまり立って運動。昨日まで消極的だったのに、自分でも「極端なんだ」と言っていた。でも、お尻は前より赤くはなかった。Mちゃんが、抜けてベッドの上に散った髪の毛をガムテープで掃除してくれた。ありがとう!! ありがとう!!

リハビリのT先生が来て、食堂まで歩いた(もちろん歩行器つき)。

9月14日(土)

息子ふたりを連れて病院へ。8月18日以来、1か月ぶりの再会。子供たちはくつろいで、カオルくんのベッドにもぐっていた。ようきはカオルくんが残したごはんを食べていた。まあきはベッドについてるお父さんの髪の毛に驚いて「ようき、ようきー!」と指さしていた。午前中、頭の水をとったと言って新しい包帯になっていた。

午後、8月22日以来のシャワーを浴びた。頭から浴びることができず残念だったけど、気持ちよさそうだった。床ずれのお尻の赤いのも治っていた。

9月17日(火)

午前中、ひとりでリハビリ室へ。 皮膚科は夕方4時30分の往診となり、私は付き添えず。塗り薬を9月18日から朝夕2回塗ることとなる。

今日は頭からシャワーを浴びることができた。抜け毛がひどい。

9月19日(木)

祝!10周年。結婚記念日☆♪ 病院で祝うとは……。うな重弁当といちごショート、シュークリームを買って病院へ。お昼に間に合ったー。朝、折り紙でつくったハートで、ベッドサイドを飾ると、日ごろは厳しい看護婦さんも「あっらー、いいじゃなーい!」と嬉しそうに言ってくれた。そして、デジカメとカメラで私たちの写真を撮ってもらった。

今年に入ってから「9月19日で結婚10周年だー。どんなお祝いしようかなー」と考えていた。始めは病院でお祝いなんて、と思っていたが、みんなから口々に「おめでとう」と言われて、この10年間でいちばん嬉しい結婚記念日となったかもしれない。

午後3時すぎ、総合内科の漢方の専門医、C先生の部屋へ。ドアをたたいて入るやいなや、「お待たせしちゃって、ごめんなさいねー」と、とてもいい感じ。カルテを見ながら話し始める。「漢方に大きな期待をしないでくださいね。まだまだ漢方も研究段階なんです。化学療法をやめて、漢方だけにするというようなことはやめて、あくまで並行して進めるようにしましょう。まずは十全大補湯から。煎じ薬はできずパックになってしまいますが……」そして、カオルくんに向かって、「お父さんねー、長い闘いになりますから。頑張りましょうね。鍼灸もお考えなら、今すぐでなくても相談にのりますよ」と、とてもていねいでわかりやすくお話ししてくれる先生でした。温かい気分になった。

午後4時30分、シャワー。カオルくんとテレビで相撲を見てから帰宅。

9月20日(金)

私もカオルくんの妹のちづちゃんも、きょうは病院を休んだ。見舞客は誰も来なかったとのこと。胸部レントゲンとリハビリで、きょうは1日忙しくしていたそうだ。

9月21日(土)

待ちわびている漢方薬は、まだ病室に届いていなかった。薬を飲むときは必ず水だよ、カオルくんにと念を押した。

9月22日(日)

LADYWEB.ORGのスタッフの人たちや、ちづちゃんと、カオルくんの病室に集合、皆で一緒に、東京・青山のスパイラルホールに出かけた。LADYWEB.ORG編集長の西山奈々子さんの写真展(アウンサンスーチーさんの写真)を見に行くためだ。

9月23日(月)

カオルくんの両親と病室に行った。「少し太ったんじゃないか?」と義母が言った。たしかに、カオルくんは、抗がん剤の副作用で嘔吐したり白血球が下がっていたりしたころは顔がやつれて、きりりと見えたが、今はまた顔がポッチャリ。むくみもあるのだろうか? カオルくんは今がいちばん体調がよさそうだ。

歯ブラシの手伝い、ビタミンゼリーのふたを開けたり、何もかもやってあげてしまって、甘えぐせがついている。自分でできることは自分でやって、と言ってやらせると、「きびしいなぁ」って。当たり前田のクラッカー♪ 動けるようになってもらわないと。

「ちづちゃんとも話してたけど、カオルくんは頑固で、頭にくることがあるよね」と私が言っても、彼は納得しない。健康に関する情報をテレビや医者から得ると、素直に従うのに、私が言っても聞かない。「薬はお茶で飲んじゃダメ」と言っても聞かず(漢方の先生は必ず水で、と言う)、「しじみの味噌汁は汁だけじゃなく、実も食べるように」と、言っても聞かず、「便秘にヨーグルトがいいから」と、冷蔵庫に必ず入れてあるのに食べず、とにかく頭にくる!

ちづちゃんが持ってきてくれた生のプルーンだって、鉄分が豊富だし、生は今の時期だけだからと差し入れてくれたのに、「生はまだ怖いなぁ」って。えっ!?  白血球も上がって、普通食になって昼食についてきたブドウをペロリと食べていたのにー! 本当に頭にくる。元気になった証拠とはいえ頭にくる!

9月26日(木)

今朝から漢方の『十全大補湯』が出る。しかし、病棟のいつもの薬と一緒に、食後に来たという。たしかT先生は空腹時、「食間に飲んで」と言っていたはずた。看護婦さんに相談すると「時間をずらしましょう」と言ってくれた。よかった。

午後、シャワー。いつものようにイスに座ったままのシャワーだが、お尻を洗いたいと言い、湯船のへりにつかまれば平気というカオルくんの言葉を信じ、これまで数回そうして洗っていたが、今日は足が滑って転んでしまった。「アーッ!」と言う悲鳴。すぐ緊急ブザーを押すと、数人の人が駆けつけてくれた。不幸中の幸いで肩と背中を打ったものの、頭は打たなかった。よかった。よかった。

カオルくんは、背中を擦りむいていた。私はかなり動揺してしまった。やはり立って洗う時は、看護婦さんと一緒に、と言われた。自己嫌悪〜。しょんぼり。骨折はなさそうでよかった。

ベッドに戻ってからK先生が診てくれた。しばらく様子をみましょう、と言われる。その後、婦長さんも来てくださった。「骨折したら危ないからねー」と言われる。すみません。しょんぼりしてると「そんな心配しなくて平気よー」と言って、慰めてくれた。

9月29日(日)

午後2時より、抗がん剤スタートのための、輸液が始まる。輸液が始まるまでは、病院食はほとんど食べていた。

9月30日(月)

朝食、昼食とも完食。夕食は少し残した。抗がん剤治療、2クールめのスタート。