Vol.09 タチアナ・マウントバッテン侯爵令嬢(イギリス)

舞踏会本番を前に、控え室で待機するタチアナ・マウントバッテン侯爵令嬢。
パリのデビュタント・ボールでのデビュタント紹介、その最後を飾るのはイギリスより、王室マウントバッテン・ウィンザー家にもつながるレディ・タチアナ・マウントバッテン侯爵令嬢です。

その輝かしい系譜をさかのぼれば彼女の大大おじ様は、ヴィクトリア女王の曾孫であり、エジンバラ公フィリップ殿下のおじ様にもあたるというルイ・マウントバッテン伯爵です。当時イギリスの植民地であったビルマにおける最初の伯爵であり、イギリス艦隊の総督、最後のインド総督であり、そして独立インドの初代総督という役目を担っていましたがその後、アイルランド共和軍(IRA)により暗殺されるという最期を遂げています。

そしてレディ・タチアナは、エジンバラ公フィリップ殿下やチャールズ・イギリス王太子はじめ、ギリシャ王妃、イギリス王子・王女、ブルガリア公、その他多くの伯爵・侯爵を輩出してきたドイツの名門バッテンベルグ家の出身であるルイス・アレキサンダー・マウントバッテン伯を初代とするミルフォード=ヘイヴン侯爵をお父様に持つ家系です。

現在、レディ・タチアナはロンドン在住。地理学、心理学そして法律の勉学の真っ最中。17歳の彼女は何が自分の“使命”とも言うべき職業なのかは発見できていないものの、「人と一緒に働くことに就きたい」という希望を持っているそうです。

そして彼女の“恋心”を射止めているのは……小さい頃から乗馬で親しんできた、馬なのです。今やその馬術は、あらゆる基本における卓越として集結し、美しく魅惑的で、優美な馬上の姿となっています。

レディ・タチアナのソサエティーデビューは、クリスチャン・ディオールHCのドレスが飾りました。ピンクのサテンのドレス、デコルテ部分は、「花の枝」という名の、刺繍と金のスパンコール、そして緑のパールが施された美しいワンショルダー。落ち着いた顔立ちに甘すぎないピンクのドレスは、デコルテの流れるような美しい刺繍が、ノーブルな印象を与えていました。

ドレスの片方はすそにかけてドレープになっています。一緒にいるのはフランスのマリー=ソレヌ・ダルクール嬢
アドラーのジュエリーは、ホワイトゴールドとダイヤモンド、ルビーそしてピンクサファイヤがお花の形に組み合わされたブローチとブレスレット、そしてヘアアクセサリーもお揃いとなりました。

もともとはイギリスの宮廷において、女王陛下の御前で令嬢たちがお披露目されたのがデビュタントの始まりであるとされているものの、「もう、イギリスにはなくなってしまったこと、過去の伝統ね」という彼女が、今はこうしてフランスに招かれ、デビュタントとなっているというのは、現代ながらの興味深い事実とも言えます。

「でも、この舞踏会に参加するとことは特別な経験で、色々な国からの女の子とたちと知り合えるし、とても楽しい」と語ってくれた、レディ・タチアナの英語は、さすがに、クイーンズ・イングリッシュの発音だった……と、妙なところに納得してしまった私なのでした。