Vol.08 由緒正しきプリンセス マリー=ソレヌ・ダルクール

マリー=ソレーヌ・ダルクール嬢、この憂いのある表情に惹きつけられてしまいます。
“ブルー・ブラッド(高貴な血筋)”……生い立ちを聞かずとも、すでにそれを納得させられる気品を漂わせていた、フランスからのデビュタント、マリー=ソレヌ・ダルクールをご紹介しましょう。フランス貴族の中でも正当な血筋を受け継ぐ家系です。

19世紀最後のフランス王、ルイ・フィリッペI世からの直系であり、ブルボン家の祖となる13世紀のサン・ルイ(ルイ9世)そして10世紀のカペー朝の祖、カペー王の末裔であり、スペイン王やポルトガル女王にもつながるギーズ公爵の子孫であり、ギリシャやデンマーク王室とも親戚関係がり、また、かつてイングランド王となった家系の子孫でもある……書いているだけでもめまいがしそうです。

ヨーロッパがその長い歴史の中で、王室だけでもいかに国々が複雑に絡み合ってきたかを如実に物語っている、それが現代に凝縮された姿がこのお姫さま……そんな思いを抱かせられました。ちなみに、マリー=ソレヌ・ダルクール母方には、祖母に当たる方は、有名なフランスの脚本家です。

素顔の彼女は、自分の本当の情熱が向くべき方向がまだはっきりわからない、女優になりたいけれど、まずは学業に専念……と語るパリの高校に通う普通の女の子でした。彼女はパリを愛してやまず「有名なパティシエ、ピエール・エルメの作る味と、これまで味わったことのないような香りとの調和に夢中なの」と、とてもフランクに話してくれました。

そんな彼女の社交界デビューを飾ったドレスは、ステファン・ソニエール。羽根が豪華に施されたスカート部分、ビスチェ部分にもスパンコールやレース、そして後ろに長く引くトレーンにも美しい刺繍の、全体的にゴージャス感もありながらクラシックな感じのドレスは、白い羽根と薄いモスグリーンが、マリー=ソレヌの清楚な優雅さをより際立たせていました。

デビュタントとして会場を歩くダルクール嬢。かつて先祖も舞踏会でデビューしたのでしょう。
美しいデビュタントたちの中にあってもひときわ輝いている彼女が特に印象的だったのは、カメラを向けられた時。普通の女の子であればできる限りの笑顔を作るところ、彼女は違っていました。笑顔ではなく、どこか憂いを感じさせる表情を見せるのです。そんな表情がむしろ、凛とした気品や、気高さといったものまで感じさせたのでした。

彼女は自分の血筋に受け継ぐフランスの、そしてヨーロッパの歴史を、重いと感じているのでしょうか……? これは次回の機会があったらぜひ、聞いてみたいと思います。