Vol.11 パリのデビュタントパーティで踊ったワルツ

舞踏会のプログラム、表紙もスタイリッシュです。
ヨーロッパにおけるデビュタント・ボール、すなわちハイ・ソサエティーの一員として女性を紹介する場での、いわば伝統とも言えるのがやはり、ワルツのお披露目。

このパリのデビュタント・ボールでも、デビュタントひとりひとりが紹介されたあと、深夜のワルツがハイライトとなります。リハーサルのエピソードでも触れましたように、十代後半の彼女たちはまだまだ、ワルツを習いたて。けれども招待客皆さんの前で粛々と進められたオープニングのセレモニーとは違い、お食事もデザートも終わったこの頃になると、会場全体の雰囲気もかなりうちとけていますから、上手でなくたって大丈夫。

“社交の場”でのダンスは、コミュニケーションのようなものなのですから。

そして、“少しばかり社交の場の先輩”である周りの人びとは、暖かい拍手で見守るのです。
ちなみに、ウィーンの舞踏会でのデビュタントたちは、オープニングセレモニーにて「左回りのウィンナーワルツを完璧に踊れること」という、難しい課題が与えられます。私は自分がウィーン王宮舞踏会のデビュタントに決まった時、普段は社交ダンスを日本でまったく習っていなかった私は慌てて、「左回りのウィンナーワルツ」ばかりをひたすら都内のスクールで練習していったものでした。

しかもウィーン現地ではその他にも、デビュー用ダンスの練習が待っているのです……。

さて、デビュタントのワルツをもってデビュタント・ボールはオフィシャルには、お開き、というよりこれからが招待客皆さんたちも楽しむ時間となります。

そして私も隣の紳士に「踊りませんか」と誘われ、手を取られてフロアーへ出ました。
パリで踊る、ワルツ。

舞踏会後半のダンスタイム。ダンスが上手でなくたって、楽しめればいいのです。
たった一曲ではありましたが、しかもデビュタントではない私はドレスも有名オートクチュールではありませんでしたが、このすばらしい舞踏会に参加させていただき、雰囲気を肌で感じ、その場で踊ることができた幸せを実感した、自分の中でもハイライトの時間となりました。

その後は皆さん場所をロビーに移し、ざっくばらんに飲んだり、おしゃべりを楽しんだり、早々とディスコと化してしまったダンススペースで踊ったり……。

私もいろいろな人を紹介され、写真を撮ったり名刺を交換したり……。今後もう二度と会うこともないかもしれないけれど、今夜出会えたその一期一会もパーティーの大事な部分なのだなとうれしくも思いつつ、まだまだ盛り上がる会場を引き上げた頃にはもう、深夜2時を回っていたのでした。

ところで……思いがけずツーショット写真を撮って頂いた、デビュタントのパパ、フィル・コリンズとは後日談がありました。次のエピソードでもう一度、登場していただきましょう。