お客様も入り、パートナーの男性たちも女性のブーケとおそろいのブートニアをつけて、いよいよ本番の入場です。
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9時を少し回った頃、開始合図のファンファーレに続きデビュタント入場の音楽が演奏され、いよいよオープニングセレモニーの始まりです。今年のデビュタントたち80組が、高い天井にシャンデリアの美しい市庁舎メインホールに、しずしずと入場してきました。我らが3人も、パートナーの男性たちに手を取られ、神妙な面持ちです。
整然とデビュタントたちが入場し、厳かに挨拶する……この一連のシーンは、何度見ても美しいものです。このようなスタイルのセレモニーなど、オールドファッションとも言えるかもしれませんが、伝統文化を今も、かたくなに守り続けているところに、私はかつてハプスブルグ帝国のあったオーストリア人の誇りを感じずにはいられません。
デビュタントの一曲目はポルカのお披露目です。女性たちが途中、踊りに合わせてイエローカードやレッドカードを取り出し男性たちに突きつける場面は、会場の参加者の笑いを誘います。
ところでデビュタントの人たち、ところどころ踊りを間違えているのです。けれどもあまり気にせず、皆さん楽しそうに踊るのですね。伝統の舞踏会のオープニングで、デビュタントとして踊ることができる楽しさ、幸せや喜び、そんなものが伝わってくるようでした。
ポルカの後のセレモニーでは、ウィーン市長のスピーチに続いて来賓何人かの話がありました。やはり今年オーストリアとスイスで開催されるサッカー欧州選手権の話題が多いようです。それらのつまらない……いえ、ありがたいスピーチの間、デビュタントたちは並んだまま、次の曲の開始まで待つのですが、その時の心境をデビュタントの一人、Sさんはご自身のブログで後日、写真とともにこんな風に書いています。
「1曲目のポルカを踊り終えて、ウィーン市長の話を聞いている時。
2曲目に恐怖のワルツが待っていて頭は真っ白状態…」
……だったのだそうです。