Vol.36 歴史息づくお城のプリンセス その7〜プリンセスとのお話4

木立の中にたたずむ、プリンセスがお住まいのお城です。
歴史や戦争、政治などの話題の後は、少し楽しいお話しに移りましょう……「踊るだけの場ではない」舞踏会の楽しみを、私も日本でお話をしておりますが、ハプスブルグ家末裔プリンセスの立場で、“ウィーン舞踏会”について語っていただきました。

「古い伝統を持つウィーンの舞踏会には、特別な魅力があるものです。ウィーンの人びとはダンスが好きで、人生を楽しみ、また、カーニバル時期をとても楽しむのが興味深いですね。カーニバル時期、オーストリアにはそれぞれの地域でフェスティバルがありますが、ウィーンの舞踏会はその伝統の一部ともいえます。それらはノーブル(高貴)で、エレガントです。一方で、自分自身を公の場で“見られ”たり、誇示するという大きな要素も持っています」

「オペラ座舞踏会は、多くの人たちが経済力あるいは政治的なコネを示す場なので、私はあまり好きではありません。自分を誇示したくないからです」

「歴史的な舞踏会、例えばウィーンフィル舞踏会、狩猟家の舞踏会などが、よりエレガントですね。オペラ座舞踏会にも貴族たちはいるのでしょうが、“マネー貴族”、“新貴族”も多いのも事実です」

「オーストリアの貴族たちについて言えば、控え目で、自分を誇示せず、自分たちの場を保ち、活動しています。彼らのほとんどは自分たちを誇示しないものです(中にはそういう人もいますが)。なぜならそれは無粋で、エレガントではないと思われてしまうからです」

「ウィーンの舞踏会で貴族の人々を見ることは少ないと思います。大人はたいてい、一般には公開されない300人ほどのプライベートな舞踏会に招待されています。例えばリヒテンシュタインのプリンスの宮殿など、主催者のお城や、時には公共の場所を借り切って開かれることもあります」

「ウィーンの大きな舞踏会はすべて、“お金を払って参加する”舞踏会です。チケットやテーブルに払い、グループで一緒に……それも楽しいですね」

「ウィーンの舞踏会は国際的に有名で、世界のどの街を探してもそのようなものは見つかりません。他の都市で似たような舞踏会は開かれていますが、質の高さや歴史的側面、ウィーンという街が与えてくれる居心地の良さ、それらが混じり合ったメランコリックな雰囲気は、オーストリアの魂ともいえるようなものです」

「私自身は……あまり舞踏会には行きません。たまに招待されれば喜んで行きますが、朝4時まではいないですね。でも子供たちはダンスも上手で、色々な国から友達を招いてディナーをしてから皆で一緒に舞踏会へ行き、明け方まで楽しんでいます」

本物のプリンセスのことですから、馬車やリムジンなどで舞踏会場に向かわれるのかと思いきや、「ウィーンの中心は安全なので、会場の近くにホテルを取り、歩いて行きます。ドレスでも、まったく大丈夫なのですよ」と、気さくに語ってくださったプリンセスなのでした。

カーニバル時期:謝肉祭。ウィーンではこの時期に、舞踏会が集中している。