昼間とは違った顔を見せてくれるパリの夜。ロングドレスの上に少々の緊張をまとい、私は午後7時に、舞踏会の会場であるホテル・ド・クリヨンのロビーへ到着しました。
4時間前にはセーターとジーンズだったデビュタントたちは、“現代のプリンセス”たちへと見事に変身していました(男の子たちは、さしずめ“王子さま”?)。その美しさは、HCドレス、ジュエリー、メイクアップそしてなんといっても若さ! という脇役の輝きに加えもちろん人並み以上の容姿に、さまざまな条件をクリアして選ばれ、本日この場で“ソサエティーにデビューする”という立場への自信にも裏打ちされていたのかもしれません。
そんな彼らに見とれているうちに、ワルツのリハーサルが始まります。白×黒の格子柄が印象的な大理石のホールに、女の子たち、男の子たちが列になって向かい合い、一組ずつフロアーの中央に進み出てウィンナーワルツを披露……リハーサルでありながら、お城の舞踏会で王子さまとお姫さまが踊っているようなシーンにも見えました。
ほとんどのデビュタントたちが前日に即席に習ったばかりなので、ダンス自体はぎこちないものではありましたが、社交の場においてダンスは“素養”のひとつ、あいさつやコミュニケーションのようなものですからね。
ダンスリハーサルが終了すると、デビュタントたちは二階の控室で舞踏会開始まで待機。私もそこへお邪魔させていただきましたが、色とりどりのHCドレス、美しいデビュタントたち(何度も書いてしまいますが本当にそうなので)……豪華なホテルクリヨンの部屋の中は、ボッティチェリの「春」ならぬ、まさに花が咲き乱れたような光景となりました。
午後8時を少し回ったころフロアーへ降りると、先ほどダンスリハーサルが行われたそこはすでに招待客でごった返していました。ウィーンの舞踏会には毎年参加していますが、今回パリでエスコートしてくれる人のいない私はその中で急に不安になりながらも受付で名前を言いました。そして、受付の前を通って行こうとしたその時、一瞬止められ、「え?」と思う間に受付横の男性が中世の騎士よろしく、大きな声で私の名を読み上げました。“マダム・マキコ・クローネ!”。するとその横にずらりと並んだ方たち……ジュエラーのアドラーご夫妻やホテル・クリヨンのオーナーご夫妻、そしてホテルのジェネラルマネージャーに迎えられ、握手をしながら私はうやうやしく中へと進んで行きました……(あぁ、びっくりした)。
フロアーでは、イブニングドレスにタキシードという正装の人びとが続々と集まってきて、談笑しながらアペリティフをいただいいています。もちろん私も、かけつけ一杯(?)を頂きました。昼間のうちに知り合ったデンマーク人を探すと、黒いチューブトップのドレスはロングではありませんでしたが、色白で金髪の彼女によく似合っていて、数時間前に比べると別人のようでした。ちなみに私はというと……金地に刺繍が美しいフランス製の生地を自分のデザインで作ってもらったドレスでの参加でした。
緊張続きのせいか、さっきの不安もどこへやら“かけつけ一杯のアペリティフ”ですでに顔が熱くなってしまっていた私ですが、それはパリの夜にこれから始まる舞踏会という「非日常」への期待だったかもしれません。
ふと気がつくと……ホテルクリヨンの一階に位置しているこのフロアーは表通りにも面していましたが、そのガラスの向こう側、外を通る「日常な人びと」が、壁一枚をへだてたフロアーで展開しているこの「非日常な光景」はいったい、なに……? という面持ちで、窓ガラスにはりついて中の様子を眺めていました。日常と非日常が実は隣り合わせにあった……そんな不思議な感覚も、続いてレストランへと案内されるや、すぐに非日常の世界へと引き戻されたのでありました。
4時間前にはセーターとジーンズだったデビュタントたちは、“現代のプリンセス”たちへと見事に変身していました(男の子たちは、さしずめ“王子さま”?)。その美しさは、HCドレス、ジュエリー、メイクアップそしてなんといっても若さ! という脇役の輝きに加えもちろん人並み以上の容姿に、さまざまな条件をクリアして選ばれ、本日この場で“ソサエティーにデビューする”という立場への自信にも裏打ちされていたのかもしれません。
そんな彼らに見とれているうちに、ワルツのリハーサルが始まります。白×黒の格子柄が印象的な大理石のホールに、女の子たち、男の子たちが列になって向かい合い、一組ずつフロアーの中央に進み出てウィンナーワルツを披露……リハーサルでありながら、お城の舞踏会で王子さまとお姫さまが踊っているようなシーンにも見えました。
舞踏会の開始を待つ各国のデビュタントたち。左から2番目東洋系の女性は、中国のデビュタントです。
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ダンスリハーサルが終了すると、デビュタントたちは二階の控室で舞踏会開始まで待機。私もそこへお邪魔させていただきましたが、色とりどりのHCドレス、美しいデビュタントたち(何度も書いてしまいますが本当にそうなので)……豪華なホテルクリヨンの部屋の中は、ボッティチェリの「春」ならぬ、まさに花が咲き乱れたような光景となりました。
午後8時を少し回ったころフロアーへ降りると、先ほどダンスリハーサルが行われたそこはすでに招待客でごった返していました。ウィーンの舞踏会には毎年参加していますが、今回パリでエスコートしてくれる人のいない私はその中で急に不安になりながらも受付で名前を言いました。そして、受付の前を通って行こうとしたその時、一瞬止められ、「え?」と思う間に受付横の男性が中世の騎士よろしく、大きな声で私の名を読み上げました。“マダム・マキコ・クローネ!”。するとその横にずらりと並んだ方たち……ジュエラーのアドラーご夫妻やホテル・クリヨンのオーナーご夫妻、そしてホテルのジェネラルマネージャーに迎えられ、握手をしながら私はうやうやしく中へと進んで行きました……(あぁ、びっくりした)。
フロアーでは、イブニングドレスにタキシードという正装の人びとが続々と集まってきて、談笑しながらアペリティフをいただいいています。もちろん私も、かけつけ一杯(?)を頂きました。昼間のうちに知り合ったデンマーク人を探すと、黒いチューブトップのドレスはロングではありませんでしたが、色白で金髪の彼女によく似合っていて、数時間前に比べると別人のようでした。ちなみに私はというと……金地に刺繍が美しいフランス製の生地を自分のデザインで作ってもらったドレスでの参加でした。
ホテルクリヨンから見た夜のコンコルド広場の眺め。
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ふと気がつくと……ホテルクリヨンの一階に位置しているこのフロアーは表通りにも面していましたが、そのガラスの向こう側、外を通る「日常な人びと」が、壁一枚をへだてたフロアーで展開しているこの「非日常な光景」はいったい、なに……? という面持ちで、窓ガラスにはりついて中の様子を眺めていました。日常と非日常が実は隣り合わせにあった……そんな不思議な感覚も、続いてレストランへと案内されるや、すぐに非日常の世界へと引き戻されたのでありました。