Vol.12 初めての王宮舞踏会 〜オープニングセレモニーからダンスタイムへ〜

デビュタントたちの入場、伝統のセレモニーです。
夜の9時を少し過ぎたころ、ファンファーレの音と共にオープニングセレモニーが始まりました。メインホールを取り囲むように並んだ私たち一般参加者と、テーブル席の人々が見守る中、デビュタントの白いドレスの若い女性たちが男性たちと共に、しずしずと入場してきました。まずはポルカの曲に合わせて踊ります。続いてウィーン市長、商工会議所の会頭、カフェハウス商工会、政治家やいわゆる地元の名士、という人々が名誉招待客として次々とフロアに入場してきました。それらのことを、パートナーが私に説明してくれました。本日のセレモニーの出し物、国立オペラ座バレエ団のバレエもすてきでした。

主催者や来賓者のあいさつが終わると、デビュタントたちによる“左回りのウィンナーワルツ”の披露……。そして会場からの拍手と共にオープニングは終わりました。初めて見た“本物”のデビュタントたち、ウィーン舞踏会の伝統のオープニングセレモニーの間中(時間にすれば40分位だったと思いますが)、私は「目がクギづけ」でした。

その後は一般参加者のダンスタイムなのですが、ものすごい混みようで、習ってきた社交ダンスの組み方もステップもその通りになどできず、何がなんだかという世界……。でも人びとはそんなことまったく気にせず、実に楽しそうに踊り始めます。いわゆる社交ダンス、日本では教えられていないポルカなども演奏されます。パートナーはダンスが上手なのに、舞踏会に参加する数日前に初めて社交ダンスを3回習っただけの私です、特にウィンナーワルツはとても速く回転していくため、目が回らないように随時、回転をチェンジするステップを入れるのですがそこが難しく、途中で何度も足がもつれてしまいます。けれども彼は困った顔もせず、「大丈夫、大丈夫」と余裕たっぷりなのでした。

オープニングが終わると、デビュタントたちに混じって、さまざまな色のドレスの女性たちも踊りだします。
深夜になると、フロアにもだいぶスペースができてきました。広いホールで生演奏のヨハン・シュトラウスのワルツ曲に合わせてウィンナーワルツを踊る時は心弾むようでしたし、スローワルツをパートナーのリードに任せて、その場の雰囲気を感じながらゆっくり踊るのはとても心地良いものでした。気持ちまで、優雅になっていくような気がするのです。ダンスが上手でなくたって、その場を楽しめることが大切……ということを、参加している周りの人びとを見ていると実感しました。

ウィーン舞踏会にドレスを着て参加、という夢のような場で、自分が踊るのも楽しい発見でしたが、それ以上に私が心魅かれたのは、宮殿の美しい部屋のシャンデリアの下で女性たちが、色とりどりのドレスのすそをパーっとひるがえして、黒い男性に支えられてくるくる回っている光景でした。それはこれまでに見たこともなく、ずっと見ていると引き込まれるようで、自分が本当にそこにいるのが信じられない感覚にもなったのでした。