現代ヨーロッパ、私が参加したモナコやパリの舞踏会では、社交ダンスはあまり踊られていませんでした。伝統もドレスコード(服装規律)も守られつつ、老いも若きもが朝まで社交ダンスを楽しむ、といえるのがウィーン舞踏会です。舞踏会は踊るだけの場ではないといっても、踊れればより楽しい……。ここで“ダンス”に関する基礎知識を少々、お話し致しましょう。
皆さん目にする機会もあると思いますが、いわゆる「社交ダンス」とは、ワルツやタンゴ、今の熟年世代が若かった時代に特に流行したという、ジルバ(正式名はブギ)、チャチャチャなど10種類近い踊りの総称です。その中には、ヨハン・シュトラウスの音楽で有名なウィンナーワルツも含まれています。
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ウィーンフィルのニューイヤーコンサートで世界中に有名な、ウィーン楽友協会。ここで開かれたある舞踏会の、デビュタントたちのカドリール。
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さて、そんな「社交ダンス」やウィンナーワルツを踊るウィーンの舞踏会でも特に、中世からの名残を受け継いだ踊り……それが、カドリール(Quadrille フランス語読みではカドリーユ)と呼ばれる古典舞踊です。これは社交ダンスとはまったく異なるもので、ロングドレスにタキシードの男女が向かい合い、手に手を取り回ったり、すれ違ったりお辞儀をしたりして踊っている様子は、それこそ映画の一シーンのような光景です。
かつて上流階級の子女が社交界にデビューした伝統が残るオープニングセレモニーでは、“デビュタント”と呼ばれる若い男女が踊りを披露しますが、今も上流階級が多く参加することで知られるあるウィーンの舞踏会では、デビュタントたちが、オープニングでカドリールを踊っています。
今日、わずかの例外を除きほぼすべてのウィーン舞踏会で、カドリールは皆で踊られています。深夜零時になると、舞踏会のメインホールには続々と人々が集まり、カドリールの始まり始まり……。この先、どのようにカドリールタイムとなるかは、別のエピソードにてご紹介したいと思いますが、日本人で舞踏会に参加された方も、日本に帰ってきてからもぜひカドリールを踊りたい、教えてほしいと言われるほど、1度経験したら大変楽しい踊りなのです。