ある年のウィーンの夏の舞踏会に参加したときの私。小さな宮殿での舞踏会ということもあり、夏らしく、ドレスも現地で購入した比較的軽いカジュアルなものにしました。
|
けれども、“招待状がなければ参加できない”例外の舞踏会も、あるのです。そんな舞踏会に参加した時のことを、ご紹介いたしましょう。
数年前、私はウィーンで、現地の友人の紹介により、ある“伯爵”とたまたま知り合いました。今日では“公には”彼らは表に出てこないことではあるし、また、人によっては自分の家が貴族の家系であったということをあまり人に語りたがらない人もいると、現地の別の友人からは聞いていました。
貴族文化に興味のあった私は、現代の貴族のライフスタイルについて聞きたいことがたくさんありました。ですが、知り合って間もないうちに、そういった踏み込んだ質問をするわけにはいきません。その“伯爵”も貴族であるという身分を、あまり人には、話したがらないかもしれないからです。ですが、共通の友人と共に “伯爵”と何度もお食事をしたりするうちに、だんだんと気心が知れるようになり、お互いの信頼関係も育ってきました。私が舞踏会や、それを育んできた背景としての宮廷文化、貴族という世界に興味を持ち、リサーチしていることなどをお話しすると、彼は友人と一緒に私を自宅に招いてくれました。そして、先祖から受け継いだ“ハプスブルグ家ゆかりの品”を見せてくれたり、その後も会うたびに、“伯爵家”のライフスタイルを話してくれるようになりました。
彼の話には、学ぶべきことがたくさんあり、大変興味深い内容ばかりでしたが、私が最も興味を持ったのは、招待状がなければ入れないという、“特別な舞踏会”のお話でした。つまり、中世からの歴史と伝統を受け継いできた、本物の……本来の舞踏会の姿はそうあるべきという、ウィーンの舞踏会のことでした。