Vol.43 ある“知られざる”舞踏会 その3 一般公開されない舞踏会とは?

友人ミヒャエルと参加した舞踏会にて。
ウィーンで開かれる、数多くの舞踏会。それらは基本的には一般に公開されて、チケットが売り出され、誰もが参加できるものです。一方で“一般には公開されない”舞踏会もあります。そんなひとつに私はある年の冬、友人の伯爵と共に参加させてもらえることになりました。

「限られた人たちに招待状が送られてきて、そして参加している人々には貴族が多数いる舞踏会なのですよ」と、友人は教えてくれました。それはいったい、どのような舞踏会なのでしょうか。

それを知るための資料が、私の日本の自宅にあったのです。数年前に、『ウィーンの謝肉祭』という本をウィーンで購入しました。分厚くて、写真も多く掲載されており、ぱらぱらと写真を見ているだけでもなかなか楽しめる本です。ウィーン舞踏会を紹介する本でもあったことを思い出し、しばらくぶりに紐解いてみると……この舞踏会の記述を発見しました。もちろん、本はドイツ語、残念ながら独力で全部は読めません……。以前ドイツ語を教えていただいていた先生に連絡をとり、久しぶりにドイツ語の辞書も開いて、その舞踏会についてのページを訳してみました。以下、その本からの説明を、少々、引用させていただきましょう。

「この“聖シュテファン舞踏会”は、小規模だけれど、ウィーンの舞踏会の中でもより洗練された舞踏会の一つとして数えられている」

そんな記述で、舞踏会に関するページは始まっています。主催は、設立から100年近い歴史を持つ「聖シュテファン協会」。ハプスブルグ家によるオーストリア=ハンガリー帝国時代に帝政下にあった国々からの、ウィーンに住む人たちへの支援を主な目的とする団体です。舞踏会はその協会メンバーによる、プライベートなものです。1920年代には、協会はナチスにより解散させられるということもあり、この舞踏会もしばし中断せざるを得ませんでした。ちなみに、解散期間中も協会は支援の慈善活動を続け、物資を必要とする人々に送っていたそうです。

その後、1990年から再び、この舞踏会は開催されています。現在では、小規模とはいえ一般に公開されていないにも関わらず、舞踏会の数週間前にはチケットが売り切れてしまうほど、“知られざる人気”なのだそうです。

参考文献 :Der Wiener Fasching