ふたりの物語
イマジン(10月30日)私がビートルズの曲を一番最初にいいな、と感じたのは、中学生の時だっただろうか。ハッキリ覚えていないが、最初に印象に残った曲は、『抱きしめたい』でもなく『ラブ・ミー・ドゥー』でもなく、『The Long and Winding Load 』だった。恥ずかしいことに、曲を聴いても当初はサイモンとガーファンクルのものだとばっかり思っていて、後でビートルズだと知った時、「こんなバラードも歌うんだ……」と、かなり感動したものだ。 その後、大ファンというまででもないが、「やっぱりビートルズはいいよねえ」と感じることがある。以前、年に3〜4回ほどモダンバレエの舞台に立っていた頃、楽屋での友人の化粧バッグがビードルズ柄のブリキ製のものだった。私はそれをひどく気に入り「いいね、いいね」を繰り返した。「そんなに気に入ったならあげるわよ」なんてことにはもちろん至らず残念だったが、その友人のお姉さんは、ビートルズを英国まで追いかけ、そのままイギリスに住み着いてしまったほどのファンだったそうだ。 そのお姉さんが妹のためにとイギリスの有名な靴屋で買って送ってくれた黒い靴のサイズが合わず、それを私が譲り受けた。その靴はとても履きやすく、履いた日はとても嬉しい気分になり、一日中ビートルズの曲が頭を巡っていたものだ。 夫の病室ベッド脇のテレビで、埼玉の平和を願うある団体が1円玉募金をし、集まった100 万枚の1円玉で、ジョン・レノンの似顔絵のコイン画を作成した……との話題を伝えていた。バックにイマジンが流れていた。「イマジンっていい曲なんだよ」と、夫。「知ってるよ。“想像してごらん。戦争のない世界を……”とういう内容でしょ? そう言えばカオルくん、ジョン・レノンに似てるよね」「うん、よく言われる」「そうでしょ。ずっとそう思っていたよ」 結婚生活10年も経過して初めて、ずっと前から思っていたこと、感じていたことをお互いに語り合った。話しているうち夫は、どんどん涙声になってしまった。今は、薬の副作用のむくみでジョンの面影はないが、むくみが取れ、頬がすっきりし、またジョン・レノン似の顔立ちに戻る日を楽しみにしている。 帰宅後、久し振りにビートルズの曲、『The Long and Winding Load 』を聴いた。改めて歌詞を読んで驚いた。まるで今の私の気持ちそのものだった。 『Lead me to your Door(きみの扉へとどうか導いておくれ)』
Diaryを読む » |