パラグアイ戦。

少し時間を置いたので振り返ってみよう。PK戦のことは触れないよ。触れないけど、PK戦は確かに「運」だけれども、「運」云々の前に技術的・メンタル的にも磨かないと。それが備わっていての「運」だろう。

旧来メディアが「猛攻に耐えた」なんて書き立てるからパラグアイに押されまくったイメージがあるかもしれないが、ボール試合率はパラグアイ:日本=58%:42%、シュート数はパラグアイ:日本=18本:16本、shots on GOAL(枠内シュート)は6本ずつということで、パラグアイ優勢には違いないがほぼ互角ということがわかる。それから日本チームの戦術としては、パラグアイが堅守速攻が得意であることから、むしろパラグアイにボールを持たせるということだったそうだ。これは試合後に聞いた話。なるほど。そういうこともメディアはちゃんと視聴者にわかるように伝えて欲しいね。

前半のルーズボールに反応してダイレクトで放った松井のシュートは惜しかった。もう少しスワローがかかれば。
そして40分、右サイドのスルーパスに抜け出した松井に中央から本田、左に大久保が並走し、松井からのブラウンダーの速い横パスを本田がダイレクトシュート…ポストをかすめ僅かに外れる…これが一番惜しかった。あのように横からの速いボールに走り込んで来て合わせるには、ゴールマウスを外さないためにパスの来る方向の足で蹴るのがよいはずなのだが、本田は得意の左足(パスが来る方向と反対の足)で狙った。こういう場合、振りが遅れ気味になるのでどうしてもアウトに当たりゴールマウスを大きくそれてしまうのだが、本田はちゃんとそれを意識し、右に身体を傾けながら打ったのだが。

パラグアイは、今はイングランドのマンチェスター・シティにいるサンタクルスは危険だけど何とか押さえるだろうと思っていたが、ドイツのドルトムントにいるバリオスの密着されても巧みにすり抜けるスキルは非常に感心させられたし脅威だった。さらに途中交替でバルデスやカルドソまで入ってきて同じようなすり抜けをするんだからハンパない。
後半途中には松井に替えて岡崎を、さらにアンカーの阿部を下げて中村憲剛を入れた。これはナイスな交替。阿部が悪かったわけではない。攻撃的に出るためだ。
だがしかし、むしろ阿部がいなくなったために遠藤や長谷部が下がり気味になってしまわなかったか。それによって本田も下がり気味にならざるをえなくならなかったか。だからといって交替が失敗ではないのだが。

延長に入ってから大久保に替えて玉田を投入。これも意図はわかる。スペースができているはずなので、ドリブルで切り裂いて欲しかったのだろう。そう、2004年のアジアカップのバーレーン戦での延長の決勝ゴールのように。だが玉田はもはやそういうプレーではないのだ。延長終盤、パラグアイゴール左の角度のない所でボールを拾った玉田…折り返してしまった。相手ゴールキーパーに向かって行ってゴールを狙って欲しかった。残念。玉田でなく森本を見たかった。
外から見ていると消極的に見えた向きが多いようだが、延長戦でもゴールをめざしていたようだし、、、しかし私などは自分で反省するのだが、どこかで失点しないように…という思いが交錯していた。ベンチも選手も勇気を持ってゴールを奪おうとしていたのだから見ている我々も、失点を恐れずにゴールを奪いに行け!! という勇気というか気概を持てなくてはならなかった。そこが自分もまだ甘い。

パラグアイはもうあそこになれば、ゴールを奪えれば儲けもの、PK戦狙い、といったところだろう。そういう余裕というか(もちろん相当疲れ切っていたけど)PK戦への自信というか、さすがに何度も何度も Round of 16 を経験している逞しさだろうか、そういうものを感じさせられた。PK戦だってそうだ。日本の川島の動き出すのが早いと見て取ると、3人めあたりから川島の動きを見てから蹴るようになった。とにかく途中修正・変化対応能力が高い。
そう、パラグアイもここまで来るのに何度も悔しい思いをしてきているのだ。1998年大会では Round of 16 で延長で0-1負け、2002年大会でも Round of 16 で0-1負け、2006年大会はグループリーグ敗退。そうした歴史があってこそ、ベスト8へ進めるということだろう。そういう意味では日本なんてまだまだなのさ。自国開催は参考にならないということ。そして世界標準尺度的には、自国開催でどう躍進しようとそれは正当には評価されないということ。それは頭ではわかっていたけれど、つくづくよくわかった。

今大会、グループリーグを勝ち抜いたことが一体どれくらい大きなインパクト、意味があったことか。各国の扱いやコメントや評論を見ていると、それがよくわかる。日本のワールドカップにおけるヒストリーは、ようやく本編に入ることができたのではないか。そんな大きな大きな意義のあるグループリーグ突破、ベスト16入り。それは韓国も同じ。
たかが3試合でベスト16なんて、、、などと悪口言っている人もいそうだが、フットボールは1戦1戦が全力を注ぐ戦いなんでね。格闘技の心身傾注と同じ。その試合ごとに全力を注がなくては足元をすくわれる。勝利も手にできない。格闘技もいくら力の差があっても思わぬケガやダメージを被る。
ベスト16で何そんなに喜んでんだか、、、という向きもあるだろうが、ちょうど琉球新報で野球のWBCを引きながら、ローカルなWBCで勝って自ら「世界一」と叫ぶよりワールドカップで勝って、、、というコラムが掲載されてネット上で話題になったが、まぁそういうことというか、比較にはならないよね。ワールドカップの戦績が他の競技のトーナメントで何位に相当するかなんて考えもしないけど。しかしこんだけ多くの国々が真剣にコメントし論評してくれる。そこでは日本という国そのものを見る目が投影されている。凄いことではないですか。だから、だからこそ、このサッカー、フットボールで道は険しくても少しずつ世界の中で上っていきたい。それがサッカーの枠を越えて、日本人の国際競争力をつけることになると思ってる。
誰かが(特にサッカーファンというわけではないはずだが)私に言ったことがあるけれども(あえて「国益」という言葉を使うなら)ワールドカップで日本らしい戦いを見せること、サッカーに力を入れることは国益になる、と。もちろん国益のために競技を選ぶわけではないけど。言いたいことはとてもわかる。
競争性が低い競技種目であっても、国際大会で優勝なりすることはたいへんなことだ。だが、日本人もしくは日本チームが優勝なり、いいところを見せられる競技種目をもてはやす風潮が私たちの国には強かったと思うのだ。競争性の低い競技種目は意味がないとも全~然思わないけれども、そこは分けて考えたり語られたりするようにならないと。オリンピックでもメダルが取れるから補助金がたくさんもらえる、メダルの可能性が低いから扱いが良くない、なんてのは実に歪(いびつ)。これはサッカーのことではなく、競争性が高く国際性の高い競技には、たとえ戦績がトップ○○でなくてもその価値と意義を尊重し敬意を払い、大事にサポートするべき。
脱線するけども、日本人はWBCがどういう大会かはもうちょっと知った方がよいだろうね。Spring Camp などと扱われていること。誰が主催していて、どこを儲けの対象としているかということ。

話を戻します。意外にも今大会のデータで見ると、日本チームは枠内シュート率がなんとトップなんだそうだ。そして1試合あたりの被ファウル数もトップなんだそうだ。逆にパス成功率は最下位。シュートについてはシュート数自体は8番めに少なかったらしい。ここからもいろんなことが明確になりはしないか。良いところも磨かねばならないところも、意識し強化せねばならないところも。
パラグアイのマルティーノ監督が試合後のメディア対応でこう言っていたそうだ。技術的には低い試合となった、さらに勝ち進むには技術レベルを高めなければならない、と。それはそのまま日本チームにも当てはまる。
それからこの試合を通して思ったのは、Jリーグにいるあの選手やこの選手もメンバーにいれば…ということ。多くの人はサイドでスピードのある石川を思い浮かべただろう…石川は昨年のシュート感覚があれば。私はミドルシュートの精度と威力の高い野沢を思い浮かべた。今年は野沢は春から好調だ。土壇場で戦術変更をしたので、それに沿ったメンバー選出ではなかったと言う人もいる。そうとも言えるかもしれない。だからチームづくりは失敗だ。土壇場で舵をきったギャンブルが一定の成果を生んでくれたということ。そして舵をきったなら、その時点でメンバーを何人かでも入れ替えてもよかった。まだ間に合った。しかし日本サッカー協会は入れ替えたりしない、できない。なぜなら商業ベースとの兼ね合いがあるので。だからそんなんでいいのか…ここは大きな問題をはらんだまま。


これはオマケの冗談だが、この試合当日、野球大好きな御方(女性)が露骨に夜の日本戦のことをシカトし気分悪い態度とっていて、何も好きでないものを応援してねとは言わないし思いもしないが、そんなに露骨な態度はいいお歳されていかがなものですか…という、まあちょっと不愉快な出来事があった。そういう御方もおられて全然結構なのだが、だからこそ勝ち進んで見せたかったな。だってそういう御方、日本が敗退した後なんかやたら機嫌よく振舞ってきたりするんだもん。ままある人間風景だよね。冗談です。

最後に地上波TV視聴率だが、この試合はTBSで中継し、こういう数字だったそうだ。
57.3% 22:40-25:10 日本×パラグアイ
61.2% 25:10-25:25 JNNニュース
53.9% 25:25-25:55 全種類

記録としては57.3%、瞬間最高視聴率は前半ロスタイム中の23時46分の64.9%とのこと。これは集計上の事情で、番組終了時刻の25:10というのは延長戦前半13分頃とのこと、まだまだ試合中継は終わってない。だからあと番組の「枠」を使って中継を延長したということで、それで前記のような数字になっている。当然、試合終了時までの時間帯で計算すればもっと高い数字になる。でも「57.3」で扱われるんでしょ。
ついでに一応サッカー中継の最高視聴率は、2002年の日本VSロシア(20:30キックオフ)の66.1%。あの時は試合後もウダウダと振り返りをやっていたので、その数字にまで落ちたらしい。よくある手のように試合後はスパッと違う番組にしておけば、70%超えだったろうということだ。
「スーパーサッカー」を意図的に強引に潰したTBSでこういうことで、心地よくない人もいるだろう。その話はまた今度。

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